■セガサターンソフトレビュー(エトセトラ2)
 
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琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■サクラ大戦 花組通信
・ジャンル:ファンディスク ・メーカー:セガ
・発売日:1997年2月14日
・クリア状況:全選択肢(相性占い)
 
  『サクラ大戦』の初めてのファンディスクで、キャラクターの1人喋り・相性占い+デート・グッズ紹介・横山智佐の歌唱ムービー・CG監督及び声優へのインタビュー等を収録。ムービーカードに対応します。
 
 全6面の新聞を読み進める体になっており、最後に「また明日の新しい『花組通信』をお楽しみに」とメッセージを出すように、起動毎に記事が入れ替わります。しかし、これに対応するのは第3面とグッズ紹介だけな上、各数十秒の一方的なお喋りでおしまいだし、入れ替わりはランダム及び総数が不明なせいで、例え何百回起動しても全てを読み終えられたか確証を得られない弊害が。ムービーは計30分に足らず、メインコンテンツの相性占い+デートですら1回当たり5分と、薄いボリュームを誤魔化す為の時間稼ぎとしか思えません。他にも、どこをクリックしたら何が起こるのか不明瞭とか、存在に気付きにくい要素が多々だとか、新聞形式はプレイヤーにとってデメリットだけでしょう。
 以下、メインコンテンツに集中攻撃。相性占いは花組隊員とのLIPS12連発で成されますが、「一緒に食事しましょう→Y/N」のように選択肢が無味乾燥で、ちっとも占いになっていません。また、デートの相手を上位二者から最終決定する問が「本編の初回限定版は買った?」なのは、なぜ今そんなことを訊くのか、なぜその答で判断されるのか、なぜそこだけメタフィクションなのかと、首を傾げ続けてしまいました。そもそも、紙面中央にどかんと配置された絵図からして一目でわかる大きなミスがあり、案の定と言えます。
 
 後の『蒸気ラジヲショウ』『帝撃グラフ』だと非常に面倒な、幾度も同じものを強制的に延々と見せられる類の嫌がらせが少ないのは美点。ストレスが膨らまずに制覇可能な分、ファンディスク三作中で最も良心的だとも思いました。
 
 
 
■QUIZなないろDREAMS 虹色町の奇跡
・ジャンル:クイズ ・メーカー:カプコン
・発売日:1997年6月27日
・クリア状況:全手紙
 
  アーケードからの移植で、クイズに恋愛をくっつけた突飛な試みに、当時は「カプコンご乱心?」と心配した人もいたのでは。ゲームセンターでは未経験です。
 
 クイズゲームとしては長所と短所が目立たない、普通の完成度です。出題範囲は広く浅く、想定されるプレイヤー層に向いた類が心掛けられている反面、僅かなノルマを大量のコマでこなしてゴールを目指す展開に、テンポの悪さを感じない訳ではありません。また、おてつきの一つ一つに付く特典において、「三択」や「ジャンルセレクト」どころか「答がわかる」なんて無茶なものが入っているのは苦笑いでした。頻繁にセーブが可能で、クレジットを使い果たしても救済措置があり、ラスボス戦ではフリーコンテニューに変わって、目押しの簡単なルーレットをオフにしてしまえると、過保護な姿勢は痛し痒し。このように困った部分は見え隠れしますが、他の要素があまりに優れており欠点として映らないのが凄いのです。
 面白ければ何でもありな奇想天外で突拍子も無いシナリオに、非日常と日常の合間に漂う虹色町を的確に表現した独特のグラフィックに、小さな仕草まで滑らかにちょこまか動くチビキャラに、清らかな雰囲気を醸し続けるBGMに、暗転知らずで凝りに凝った多様な場面転換に、画面と音声の美しさを保ちつつ一切感じさせない読み込み時間に、操作性や効果音のような細部に至るまで。どこも全く手を抜かずに仕上げられており、ユーザーの視点に立った恐ろしい作り込みだと思います。テキストがすっきり纏まっているお蔭か、音声は飛ばしたいけど一度も耳に入れないのは気が引ける自分が、本作に限っては喋り言葉のように自然に聞き入れられたのは特に驚きました。
 
 少し気になるのは、主人公のグラフィックとテキストがおざなりなのと、たまにルーレットの目と異なるコマ数を進むのと、正解の誤った問題が幾つかあるのと、スコアランキングとセーブデータの関係が特殊なこと。1人プレイの途中で2人プレイに移行してエンディングを迎えた際、告白の成功判定が逆さまになったのはバグでしょうか。あと、説明書のイラストとゲーム中のCGでキャラクターの容姿が似ても似つかないのは、個人的にはずっと可愛くなっていると思いますが、人それぞれかもしれません。
 
 何気無く挿入される賑やかな演出と多彩な合いの手、それにクリア後の充実したおまけも含めて、プレイヤーを楽しく嬉しくさせる能力に優れた、類稀な魅力の作品です。
 
 
 
■ルパン三世 クロニクル
・ジャンル:マルチメディア ・メーカー:スパイク
・発売日:1997年8月8日
・クリア状況:ボーナス映像×2
 
  『ルパン三世 THE MASTER FILE』の続編は2枚組に。今回は対象をパイロットフィルム・第1シーズン・第2シーズン・ルパンVS複製人間・カリオストロの城・原作に絞り、ムービーが主体となりました。
 
 主要登場人物5人の変遷を、シリーズや監督の違いによって各12本のムービーで追える、「キャラクターヒストリー」が目玉。絵やら声やら性格やら、同じ素材なのに作り手の違いでこうも変わるのかと思わされつつ、どれも『ルパン三世』の枠を飛び出しはしない巧みな演出が確認出来ます。作品への愛が溢れた解説文も一つ一つに付いており、これが起動後のカーソルの初期位置なのは当然ですね。CD1枚を丸々使い、様々なオープニング・エンディング・名場面のムービーを詰め込んだ「サウンドコレクション」も、名称と実態が全然違って戸惑いを隠せないのを抜きにすれば、見応え十分でしょう。
 テキストが主体で読破に根気が必要なコンテンツに、人物・お宝・美女をリストアップした「ルパンライブラリー」があります。しかし、約850もの項目には画像1枚と説明20字しか用意されておらず、読み物としても資料としても通用しません。原作の全130話の粗筋と扉絵を収録した「コミックデータショー」は、アニメと異なる大人向けな雰囲気を少しは教えてくれる前者はともかく、画像が潰れて相変わらずな後者にがっかり。その名に違わず超難問揃いなのが「マニアッククイズ」で、ボーナス映像の閲覧には10問連続正解×2が必須な反面、本作をチェックしてゆく過程で覚えていたり、選択肢の順番が固定だったり、総問題数が多過ぎなかったり、不正解でも画像付で解説が出たりと、遥か遠いゴールに自然と近付いてゆけて好印象でした。ただ、肝心のボーナス映像は期待外れです。
 
 データ量は凄まじいがインターフェースが劣悪と言う不均衡な前作よりは纏まりが良い反面、コンプリートまでの所要時間が激減してボリューム不足と捉えられるかも。また、当時は家庭で見られること自体が貴重だったムービーへの偏重が仇となり、インターネットの影響で現在は本作に価値を感じにくいですね。
 
 
 
■サクラ大戦 蒸気ラジヲショウ
・ジャンル:ファンディスク ・メーカー:セガ
・発売日:1997年11月13日
・クリア状況:全項目×全キャラ
 
  『サクラ大戦歌謡ショウ』や声優のインタビューを収録した歌謡盤と、外伝的エピソードやミニゲーム等を詰め合わせた遊戯盤の2枚組。
 
 歌謡盤はムービーカード対応となっており、そんな高価なオプションを持たない者の不安を誘いますが、生身の本体でも綺麗で滑らかな動画が見られて一安心。個人的には本編で耳にしたBGMに、1コーラスの歌詞が乗せられたのを聞けて嬉しく思います。舞台は「素晴らしい」や「凄い」と言うより「微笑ましい」との表現になってしまうものの、生で観てみたくはなりました。全ての映像を通すと1時間程、退屈を誘う程に長過ぎず物足りなく感じる程に短過ぎず、丁度ですね。
 
 遊戯盤は花組隊員がDJに扮する「蒸気ラジヲショウ」と、相性診断からデートに転じる「フィーリングカップル」がメイン。どれもヒロイン6人分用意されており、チェックには想像以上の時間が掛かります。この時、本編譲りの画面転換の遅さや、絶対に飛ばせないスタッフロールや、1フェイズ毎にタイトル画面で無意味な選択をさせられるのが辛いです。特に後者の冗長なのに早送りすら出来ない前置きは、その後のデートにおける会話の全選択肢を試したい気持ちを削ぐ元凶でしょう。
 前者では事前の会話とラジヲの内容が矛盾するのに加えて、リスナーを誰に設定しているのか曖昧なのが気になりました。これは葉書の質問と回答が『サクラ大戦』の中の住民向けなのと、テレビの前のプレイヤー向けなのが混在している意味で、本編において第四の壁が破られることが無かった故に違和感強し。ちなみに、この両モードの信頼度が連動するのを知らないと泥沼にはまるのに、説明書でしか解説されないのは酷いかも。
 
 『サクラ大戦』では素晴らしい完成度を誇ったミニゲーム。今作では隠しを含めて9種類と豊富ながら、手段と目的が被っていたり(カンナ・米田)、操作出来ない待ち時間が長かったり(紅蘭・アイリス・三人娘)、ハイスコアの限界にすぐ到達したり(すみれ)、わざと負けなければ得点が伸びなかったり(マリア)、クリアが可能なのか疑わしかったり(あやめ)と、多々の欠点で楽しみにくくなっています。中でも、紅蘭の「ベルトコンベアー上の部品から光武を組み立てる」は、部品のバランスが滅茶苦茶でミニゲームとして成立していません。リスタートが無理になり、高成績でCGが表示されることも無く、本編のそれとは似て非なるものだと考えましょう。ここで訂正、あやめのミニゲームは15パズルの攻略法を覚えれば楽勝になった為、前言撤回させて下さい。
 ミニゲームから独立したモードの百人一首は、さくらが声で詠み上げてくれる上の句を聞き、LIPSから正しい下の句を選んで正解数を競います。成績によって評価を得られ、全首詠み上げる百歌人で全問正解を遂げた日にはご褒美があるのかもしれませんが、知識が無い自分には太刀打ちならず。初心者向けの解説とランダムに歌を詠み上げる機能は役に立ちませんし、暗記の手助けをしてくれる工夫が欲しかったと嘆かずにはいられません。せめて出題順が固定だったら頑張れたのに、書籍に頼るかあんちょこを作るかと思いつつ、後に勉強して購入から十年を経て全パーフェクトを達成したところ、評価の判子以外は無反応と言う冷たい現実が返ってきました。一応、百歌人には『サクラ大戦』らしい配慮が。
 
 このレビューを書くに当たり、遊戯盤の「サクラ大戦懐古的物語」に初めて気付き、本当に色々と詰め合わせていることを改めて感心。そして、キャラクターたちが可哀相な程にグラフィックが雑で、発売日を急いたのかなと邪推もしました。
 
 
 
■SEGA AGES/パワードリフト
・ジャンル:レース ・メーカー:セガ
・発売日:1998年2月26日
・クリア状況:全ステージ1位(A〜F・EASY or NORMAL)
       総合1位(EASY〜VERY HARD)
 
  1988年生まれの体感ゲームが紆余曲折を経て、自社ハードに初移植。バギーレースを題材とした疑似3Dの走行感は、決まってジェットコースターに例えられます。
 
 ポリゴン不使用で3Dのレースゲームはカーブとアップダウンの自然な描写を両立出来ず、立体交差や対向車線は言わずもがな──業務用の『パワードリフト』に触れていれば、そんな先入観を自分は持たずに済んだのでしょう。幾分は劣化しているらしいのに、超大量のスプライトと拡縮機能が乱舞する比類無き三次元的空間は、急激なカーブとアップダウンのみならず前後360度の回転や高所からの落下も表現される凄さで、お見逸れしました。それと同時に、グラフィックとゲームデザインに親和性が欠如しており、古くから芳しくない巷での評判にも納得。一言で表せば実験作ですね。
 
 CPUとの同時競争でありながら、プレイヤーばかりに不利を押し付けるのが何よりもいけません。1周18秒の短さに12台も詰め込み、あまつさえ周回遅れまで発生して混雑必至のコース上は、見通しと道幅の難も相俟って全体が事故多発地帯にも拘らず、自車だけがクラッシュとコースアウトでタイムロスを受けるわ、座標を管理しているはずの敵車は道無き道を走り去るわで、あまりに不公平。橋から僅かにはみ出ただけで落ち、アクシデントが復帰場所によっては連続発生し、周回数が少なくて一度の失敗が致命傷と、自助努力で克服出来ない妨害も多数です。スタートにおける敵車との衝突回避は特に難しく、進路が無いからと加速を緩めては大幅な順位ダウンが確定なんて、一体どうしろと。
 意外に縁遠いゲームオーバーでバランスを是正と思いきや、エクストラステージの存在を考慮すればちっとも。これはコンテニューを使わずにステージ1〜5を1位でゴールが出現条件──つまり、一切のミスを許さないのです。運任せに近いプレイの中、ステージ5開始直後にアクシデントが起きてステージ1からやり直しの循環に、私は堪忍袋の緒が切れました。
 
 忠実移植を旨とする当シリーズとしては珍しく追加要素が豊富で、要注目なのは3種類のセガサターン版オリジナルステージを目指して全25ステージを走破するグランプリモード。ポイント制に絡めた最終目標の緩さでミスへの恐怖から解放されたり、スターティンググリッドの改善でスタートが易しくなったり、コンテニューへの罰則はあってもゲームオーバーの更なる寛大化でフォローしたり、ルールの適切な変更で前述のネガティブさを払拭してくれました。ただ、配慮が過度でかなり簡単になってしまい、難易度を上げても大して反映されないのは玉にキズです。
 他にも、エクストラステージとオリジナルステージを集めてコースFを新設し、本来は決まったステージでしか乗れない『ハングオン』のバイクと『アフターバーナー』の戦闘機で各コースに挑める裏技が付いて、お得感は上々。音楽を途切れさせずに一瞬の暗転でステージが移り変わる等、読み込みも快調です。セガサターン標準パッドでの操縦性には手を焼きましたが、補完に必要なセガマルチコントローラーの普及度は高いので、許容範囲の弱みでしょう。
 
 説明書に偽りがあり、コースC〜Eのエクストラステージを未プレイでもコースFが始まって、首を傾げたこと。各種セレクトの時間制限が、アーケードの仕様としても厳しいこと。エクストラステージの無いコースFでは得点が稼げないのに、スコアランキングをコース毎に分けていないこと。以上のケアレスミスは残るものの、原作の性質を正しく捉えてアレンジした開発者の判断力を誉めるべきでしょう。
 
 
 
Techno Motorテクノモーター
・ジャンル:音楽シーケンサー ・メーカー:電子メディアサービス
・発売日:1998年3月26日
・クリア状況:―
 
  作曲ツール「ミュージックシーケンサー」の他に、パッドを楽器に見立てて演奏する「リアルタイムプレイ」も。収録音源はほとんどがオリジナルで、版権楽曲はChara『タイムマシーン』等の4曲のみです。
 
 まずは「リアルタイムプレイ」に言及すれば、ゲーム性が一切ありません。好きな音色を設定して、好きな音楽を流して、好きにボタンを押して、好きに楽しんで完結するしかなく、華麗に演奏をこなすには相当の根気が必須でしょう。遊ぶ道具を準備し、遊ぶ方法を提示しないとこうなりますね。
 次に「ミュージックシーケンサー」について。昔から作曲に憧れており、元吹奏楽部員で楽譜を読めないことはないし、ややこしそうだけど大丈夫なはず…そんな軽い気持ちで購入したら、想像を絶するハードルの高さに手も足も出ませんでした。各トラックの音色を決めるユニット・4小節のリズムを設定するパターン・曲を構成するソングを仕上げて完成に至るには、大量のファイルが必要になります。五線と音符が存在しないし、インターフェースは音色を一つ確かめるのも面倒で、頻繁な読み込みに駄目を押された結果、ある譜面のサビを再生した時点で挫折。作曲なんて言わずもがなです。
 
 好意的に解釈すれば本格派なのかもしれませんが、それに順応出来る人はセガサターンで作曲なんて発想を持たないのでは。説明書に「楽譜が読めなくたっていい」と書いてあるのを、絶対に信じてはいけません。その性質上、3拍子や3連符が表現不可能だと付け加えておきます。
 
 
 
■村越正海の爆釣日本列島
・ジャンル:スポーツ ・メーカー:ビクター インタラクティブ ソフトウエア/A wave
・発売日:1998年6月18日
・クリア状況:エンディング/全ルアー/全名人勝利
 
  プロアングラーの村越正海からレクチャーを受けつつ、ダイワ精工株式会社の釣具を片手に、北は噴火湾から南は屋久島まで日本の11ヶ所をルアーフィッシングで渡り歩き、最後は対馬で村越氏と対決します。タイトルにはありませんが『シーバス・フィッシング』の姉妹作です。
 
 魚釣りに無関心で、TVゲームでもプレイしたのはメガドライブ『キングサーモン』に限られる自分は、説明書から漂う本物志向の作りに臆したものの、タックルの準備は完全自動で、様々な場面で十二分にアドバイスが聞ける、初心者も安心の環境でした。ステージの行き来と天候は自由選択だし、ショップの店長や釣り人との会話で小休憩させたかと思えば、ルアーや情報を賭けた一対一の勝負が始まる等、単調さを緩和する合いの手が幾重に施されたサービス精神は秀逸で、不意にヒラスズキの魚拓とパスワードが表示された際の満足感は記憶に残る程。更に、カメラ慣れした感のある村越氏の実写ムービーがステージ毎に入り、釣り上げた魚の一部はシェフによるレシピが見られ、登場製品の簡単なカタログまで付いて、ディスク内の充実度は高いです。
 ただ、キャスティング時にルアーやポイントを絶対視しない易しさは、食い付かない原因を乱数に押し付けてしまいがちで、功罪相半ば。そして、この乱数への依存心はファイト時に最高潮を迎えます。何しろ、アドバイス通りにロッドを操作してもテンションゲージに明確な影響が出ず、魚の弱りに繋がるはずの時間経過もルアーが外れるデメリットしか実感出来ず、運頼みの方がマシに思えてゲージが緑なら巻いて赤なら止めるだけの単純作業に。そんな実情から遠方の大物を狙うステージは、ゲージが半分余っていても一巻きだけでラインブレイク寸前になり、慎重に少しずつ引き寄せた努力虚しく一瞬で20mも離れて結局は逃げられるの繰り返しに。釣れたり釣れなかったりを分ける理由がエンディングを通り過ぎてもわからないなんて、プレイヤーの技術介入の扱いが疑わしいです。
 
 セミオートのカメラが不便で、魚が現れる前のディスクアクセスが緊張感を削ぎ、画面情報や障害物が見た目に邪魔で、数多いアドバイスが長い読み込みを積み重ねないと読めない辺り、シリーズものの割に完成度は高くありません。他に度々困らされたのが、再見不能なムービー及びテキストが目立つのと、2つの会話の発生条件を同時に満たすと片方が永遠に表示されない不具合。あと、レシピは1匹に複数用意するより調理可能な魚を増やし、コレクション機能や食後に体力が向上するような付加価値を持たせれば尚良かったでしょう。
 
 魚釣りの楽しさでは『キングサーモン』に劣りますが、専門用語から詳しい生態までの知識が得られるので、ルアーフィッシングの初心者用教材にどうぞ。
 
 
 
■本格花札
・ジャンル:テーブル ・メーカー:アルトロン
・発売日:1998年10月29日
・クリア状況:エンディング
 
  「こいこい」「花合わせ」「おいちょかぶ」で遊べる、花札専門作品。
 
 TVゲームで麻雀を覚えたせいで点数計算が出来ないままになってしまうように、『サクラ大戦』の「こいこい大戦」で花札を覚えたはいいけれど札の種類も点数も知らないままになっている人は、セガサターンユーザーに多いのではないでしょうか。もちろんどちらも自分のことで、花札の知識の補完が叶えば幸いの心持ちで起動しました。
 メニューのルール説明はテキストで申し訳程度に解説されるだけで、実際に遊びながら助言を得られた『サクラ大戦』から大きく見劣りします。しかし、「花合わせ」では出来役のリーチがわかりますし、「おいちょかぶ」では札に月の数字が表示される等、その不備はゲーム内の親切さで補っており、わからないなりにプレイを重ねれば自然と覚えられました。誰にも迷惑を掛けずに自分のペースで勉強出来るのは、TVゲーム特有の利点ですね。
 
 ストーリーモードはCPUにインチキの気配が無く、補助機能とルールの変更で難易度を調整させる点に好感を持ちました。幕間の会話シーンがフルボイスかつ、花札中のお喋りが豊富なのも良いです。ただ、説明書で紹介されたキャラクター数で早々に終了かと思いきや、全員登場後もまだまだ先があるように期待させた途端に裏切る中途半端な長さで、簡素なエンディングが物足りなさを増幅するでしょう。
 不可解なのが「こいこい」「花合わせ」の親決めや得点計算の度に読み込み画面に切り替わることで、実戦は小気味良く進むのに全体の進行速度は軽快だと言えません。絶対に予め読み込んでおけるデータ量であり、開発者の技術力不足が窺えます。フリー対戦で選べないキャラクターがいるのと、取り札のレイアウトが「こいこい大戦」より洗練されていないのも減点材料。無味乾燥なキャラクターと背景は手抜きっぽい反面、取っ付き易さと見易さに繋がっているので人によりけりでしょう。
 
 絶対的評価では合格点ながら、おまけのミニゲームの一つでしかない『サクラ大戦』に負けている部分があり、相対的評価では花札単体で発売した商品として誉めてはいけないのかもしれません。
 
 
 
■サクラ大戦 帝撃グラフ
・ジャンル:ファンディスク ・メーカー:セガ/レッドカンパニー
・発売日:1998年12月23日
・クリア状況:グランドフィナーレ/クリア(クイズ・花札)
 
  『花組通信』『蒸気ラジヲショウ』に続く3枚目のファンディスクで、本編のゲーム性とデータベースの資料性を兼ね備えた、分厚い内容です。
 
 1枚目メインの「眠れる森の美女」は『2』の第九話を豪華にしたような仕組みで、本編と同様の進行を経て特別公演の配役と舞台上の完成度が決まり、チビキャラたちの身振り手振りと音声による実演を鑑賞後、オーロラ姫役を射止めたヒロインとのエンディングで終幕。実演の出来はそこそこ止まりながら最後のご褒美CGが美麗で、取り分けさくら・紅蘭・レニの艶姿には息を呑んだ程です。グランドフィナーレを迎えれば全パターンの実演に直行可能になる特典もあり、CGが保存されない不満も解消されました。
 ただし、様々な不備により繰り返し通すのは本当に辛く、途中で挫けた人も多そう。LIPSとテキストが薄っぺらくて帝劇の面々との会話に魅力が感じられず、脇役の割り当てが各2〜3人で固定されているので同じ演技を何度も見ることになり、目的に対する手段の段階に喜びが足りません。また、大量の移動場所に対してイベントの密度がスカスカなのも意地悪く、出来るだけ自力で取り組みたい質の私の初プレイは、人恋しさで在室率が100%に近い薔薇組の部屋にばかり訪ねる羽目になってしまいました。本編の一話分に匹敵する長丁場にも拘らずセーブポイントは一度のみだわ、この関係で試行し易いセクションのイベント数が最少だわ、7分も続く共通のスタッフロールは飛ばせないわで、ファンディスクを自称する割にファンに厳しい態度ですね。
 
 面白い面白くない以前の問題で、ミニゲームは落第点。前作から総数半減は構わないとして、ポーズとハイスコア記録までが非対応になり、1回毎に部屋の出入りを強制する理解不能な仕様で駄目押しの、『1』での長所を受け継がなかった『蒸気ラジヲショウ』からまさかの更なる退化です。そんな手抜きさですから、クリアの度に難易度が上がるミニゲームを完遂してご褒美無しだった時にも、やっぱりとしか思いませんでした。
 前作の「百人一首」的モードは2つ。「こいこい大戦2」は織姫・レニ・帝劇三人娘らを加えて対戦相手が充実し、既存のキャラクターのリアクションも新規に用意しており、順当なパワーアップを遂げています。しかし、『サクラ大戦』の絵柄となった札が判別を難しくしているのと、クリアまで2時間は必要なのにセーブ不可&コンテニュー有限なのが玉にキズ。「帝撃軍人将棋」は単純に一戦交える遊び方しか無いのと、お莫迦どころか何も考えていない思考ルーチンの合わせ技で、評価に値せず。降参のウィンドウを出した後の処理が変で、勝敗一覧表の表示に失敗する時もあり、これは未完成品でしょう。尚、「眠れる〜」のあるLIPSで時間切れを選ぶと大きなバグが発生し、「帝撃クイズ二百問」は画面切り替えがもたつき、音声の全般が途切れがち等、技術的に拙い面がちらほらだったりします。
 
 2枚目にしても、声優のインタビュー集に組み込まれたLIPSで、9人分のご挨拶とお別れを3回+α見るように強要されるように、遊び手の事情を汲む観点を作り手が持ち合わせていない印象が強いです。味の善し悪しに幅がある重箱のごとき作品像は、摘み食いする分には美味しく頂けても、食べ尽くすのは容易ではありません。
 
 
 
 
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