■セガサターンソフトレビュー(エトセトラ1)
 
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琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■デジタルピンボール ラストグラディエーターズ
・ジャンル:ピンボール ・メーカー:KAZe
・発売日:1995年6月23日
・クリア状況:スタッフロール/カウンターストップ(全台)
 ⇒攻略ページ
 
  ピンボールを現実的に再現したデジタルピンボールの1作目で、収録台は4種類。未成熟なセガサターン市場へ彗星の如く現れたにも拘らず、販売本数は7万に達しました。
 
 続編とプレイ順が前後した為、初見では前作故の不親切さが目に付きました。ポーズ画面で情報が見られなくて途方に暮れたり、ラウンドの発生と同時に獲得したランダムバリューが表示されなくて困ったり、ネームエントリーが各台に1つのみで残念だったりしましたが、どれも許容範囲内で一安心。ただ、急傾斜のランプ、小さなターゲット、遥か遠いファイナルラウンド、使い捨てのキックバックとフリーズ、ティルトまで揺らしても落ちてこないボール等、あまりな難易度に面食らったのは確かです。
 しかし、これらはピンボールの性質としては正答でしょう。無骨な仕掛けを華麗なボール捌きでどこまで克服可能なのか、再挑戦の度に上達してゆくのを実感出来ますから。幾度と立ち向かってもファイナルラウンドとスーパージャックポットを見られなかった「DRAGON SHOWDOWN」だって、4台の内の1台くらいは強敵がいて然るべきですし、本気で攻略に取り掛かると意外にバランスが整っていました。
 
 各台の個性付けやラウンド時の演出、インストラクションマニュアルの読み易さとムービーの格好良さで優れていますし、続編よりも仕上がり良好…とは言い切れず、こちらはあちらよりスコアが一桁少ないのにカウンターストップしない不具合があります。表示だけでなく内部処理も0点扱いで、ハイスコアが唯一の目的となる作風においては致命的な欠陥です。
 前述の感想と矛盾しますが、少しやり込むとローリスク&ハイリターンの攻略法が見付かったことも、指摘しておかなければならないでしょう。楽勝で数十億点を稼げるラウンドがあれば、ロストと紙一重の緊張感を持続させて数億点を得るのがやっとのマルチボールもあるのは、続編より程度がマシだとしても明らかに調整不足。あと、ランプアワードの計測と告知が狂っていたり、インストラクションマニュアルに誤記があったり、彗星故と思しきミスもちらほら。
 
 マイナーチェンジ版の『Ver.9.7』では改善されているのかもしれませんが、コンビニ専売の販売経路だったせいか悲しいかな入手困難です。
 
 
 
■球転界
・ジャンル:ピンボール ・メーカー:テクノソフト
・発売日:1995年8月25日
・クリア状況:エンディング/カウンターストップ
 
  プレイステーションからの移植で、リアル指向のデジタルピンボールシリーズとは異なる、旧来のTVゲームらしいピンボール。縦3画面で構成された台の中で条件を満たし、5つのボスステージに挑戦していきます。
 
 魔王の復活を企む集団が現れ、夜でも騒がしいやら町を汚されるやらと人々から苦情を申し立てられて王様が、伝説の勇者たちを呼び寄せた。256年前の魔王との戦いで年齢を止められたらしいが、彼より長生きの者がいないので本当なのか不明な悲運の剣士。剣士と共に魔王と戦ったマジックスターの子孫で、受け継がれた絶大な魔力を料理魔法に傾ける女の子。今回の魔王復活を予言した竜人…が老衰で3日前に死亡した為に急遽ピンチヒッターに立てられた、彼の卵から3時間前に生まれたばかりの赤ちゃん。王の身勝手な命令によって、2人と1匹は魔王の復活を阻止すべく旅立つ。このような緩いセンスと、それが反映されたキャラクターデザインは、個人的に好きです。
 プレイ中にちょこまかと仕草を見せてくれる主人公たちと共に、フィールドにギミックとして登場する脇役と敵役も見所でしょう。怒りっぽい女神は瞳からビームを乱射して敵を一掃させ、ナイスバディで数多くの勇者を腑抜けにしたハーピーはセクシーな声で喘ぎつつ羽を放って邪魔をし、よじ登る事に生き甲斐を感じるウサ子は落下させるとストッパーに早変わり等、へんてこな設定をボールヒットのリアクションに変換した工夫が見事。デジタルピンボールならぬ、ファンタジックピンボールを自称する資格ありですね。
 
 キャラクターに高評価をあげられる反面、他は問題が山積。第一に指摘すべきは偶然性に支配された作りで、具体的には「狙えない大半のターゲット」と「ボスステージの扉を開くスロットが目押し不可」が挙げられます。どんなに狙い澄ましても直接は命中しない位置にターゲットがあっては、風による修正や敵弾でのバウンドで偶然当たるように期待するしかなく、ボスステージに行くにはスロットを3つ中2つ揃えるのが条件なのに、目押し不可では偶然揃うまでひたすら待つのみ。これでは上達の余地がありませんから、初めてだろうが慣れていようが適当にボールを弾くだけに終始してしまうのです。
 また、スロットとボスステージには別の負担があり、前者は「揃いが悪いと耐久力の高い敵が出現」「スロットのある画面はボールが最も落下し易い」なる、後者は「開始と終了の読み込みが長い」「クリアしてもフラグが立つ以外のメリットが無い」「クリア済のボスをスルー出来ない」「一度のミスで終わり」「非常に厳しいタイム制限」「どこを狙えばいいのか不明確」なる足枷に苦しめられます。せめて、クリアしたボスはスロットから除外し、制限時間を無くして欲しいです。ラスボスではなぜか「一度のミスで終わり+非常に厳しいタイム制限」が取り払われ、難易度が極めて低いのもちぐはぐ。ちぐはぐと言えば、画面内の四天王ルーレットによってボスステージが決定されると書いた説明書は、どう考えても嘘でしょう。
 
 ピンボールの目的「スコアを稼ぐ」と、ゲームシステムの目的「エンディングを見る」が関連しないのも疑問で、得点によってエクステンドやボスステージへの挑戦権を獲得する等、解決策はいくらでもあったでしょうに。途中セーブが無条件に可能なのと、カウンターストップのデータをロードすれば新記録としてランキングを埋めてしまう仕様で得点の存在意義が消滅しており、正々堂々とハイスコアに挑戦する気にもなれません。尚、正規の手段による最大の得点源はスロットの$マークを揃えることで、やっぱり偶然任せです。
 開始数秒でロストしても救済措置が無く、エクステンドは滅多に起こらずで、ロスト寸前のセーブ&ロードが必須のバランス。難易度の高さからボールの速度はスローに設定したいのに、ボスステージのタイム制限はファーストにしなければ話にならないジレンマ。ほぼスタッフロールのみで、折角のキャラクターの設定が生かされないエンディング。最初に評価したこと以外、落第点ばかりになってしまいました。
 
 端ながら眺めていると楽しそうなのに、触ってみると楽しくない困った作品です。
 
 
 
■F-1 Live Informationライブインフォメーション
・ジャンル:レース ・メーカー:セガ
・発売日:1995年11月2日
・クリア状況:エンディング(NORMAL)
 
  メガドライブ『スーパーモナコGP』からメガCD『フォーミュラワン ワールドチャンピオンシップ 1993 ヘブンリーシンフォニー』を経て、セガサターンに登場のセガ系F1ゲーム。当時のスポーツゲームで流行りだった実況を導入し、フジテレビのF1中継でお馴染みの三宅正治・今宮純・川井一仁が常に喋り続けます。
 
 リアルタイムの要素が少ない野球や注目点が局地的なサッカーと異なり、サーキットの各所で同時進行のレースゲームを実況とは無茶に思えますが、予想的中。上位には同じドライバーが並び、リタイヤの発生パターンは数種類のみで、逆走やピットロード封鎖で筋書きを乱しても無駄な、展開通りの実況ではなく実況通りの展開と言う掟破りな仕様です。三者の途切れない会話に最初は驚いても、すぐに実況とは名ばかりの雑談が大半だと露呈し、こんなのはCD-DAの垂れ流しと一緒。プレイ内容に追随して喋るのがスポーツゲームにおける実況の醍醐味であり、順位・タイム差・アクシデントさえ伝えてくれれば満足でした。
 
 実況への反感に拍車を掛けたのが、ゲームソフトとしての品質への影響。選択可能ドライバーは5人・サーキットは3つだけで、故にセガ・マークIII『スーパーレーシング』ですら存在した連戦でチャンピオンを争うモードがありません。NPBやJリーグが題材のスポーツゲームで当時、数チームしか使用出来ない上に連戦モードが無ければ、商品失格でしょうに。『ヘブンリーシンフォニー』の「1993年モード」のような実際のレースを元に目標へ挑むモードを用意すれば、ボリューム不足の改善のみならず実況との兼ね合いも良いはずですけど。
 『ヘブンリーシンフォニー』は淡泊なゲーム性で評価を落とした反面、膨大な実写ムービーと多数登場する実在の関係者で目を、豪勢なヴォーカル曲&BGMとクリス・ペプラーによるコース紹介で耳を刺激し、レースゲームファンにはともかくF1ファンへの求心力は十二分でしたが、そのような付加価値は本作に皆無。それどころか前後のタイム差表示とレインコンディションが除かれ、更に同ジャンルの他作と比較しても予選・ミラーコース・リプレイ・ゴーストカー無しの、まさに無い無い尽くし。スターティンググリッドは必ず最後尾だわ、車体ダメージとリタイヤの非採用で暴走が咎められないわで、及第点なのはサーキットの再現度だけです。
 
 最後に誉めておくと。今宮氏が国内レースの解説に異動し、新解説陣が放送中に諍いを起こすような不適任者で、1995年のF1中継は視聴者にとって雰囲気が最悪だった為、本作のキャスティングには心癒されました。あと、夢に終わった片山右京選手の優勝を仮想体験可能なのも、発売25周年超の今となっては貴重かもしれません。
 
 
 
■ビクトリーゴール'96
・ジャンル:スポーツ ・メーカー:セガ
・発売日:1996年3月29日
・クリア状況:エンディング(HARDEST)
 
  Jリーグを題材にしたポリゴン使用のサッカーゲームで、実況・視点変更・リプレイを備えます。前作は未プレイ。
 
 通常のドリブル・パス・シュートに、ダッシュ・スルーパス・チップキック・ヒールリフト・ボールまたぎフェイントと、多彩な技が簡単に行えます。1ボタンで周囲の選手に指示が送れるコーチングも含め、操作面に苦情は浮かびません。これらが勝利に結び付く局面は滅多に訪れませんが、凝った試みの使用が趣味と化すのはお約束の内でしょう。
 傾向は完全に個人技中心。パスやセンタリングはほとんど通らず、シュートボタンによるロングパスとドリブルで敵陣に切り込みますが、大問題なのがキーパーの鉄壁さ。直接狙っても連携絡みでも得点は困難で、ドリブルでキーパーを誘い出して振り切るか、ペナルティエリアでファールを誘発するかの二択に収束します。これは自分側も同様で、初試合すらスコアレスドロー。どこまで鉄壁なのか放置してみたら、前半・後半・延長前半・延長後半と20本放たれたシュートを守り抜いてしまいました。その割に、ゆっくり転がる目前のボールを真後ろに弾いて失点するし。
 
 キーパーの挙動を除けば全体的に纏まっていますが、それが致命傷になってしまいました。
 
 
 
■ルパン三世 THE MASTER FILEザ・マスター・ファイル
・ジャンル:マルチメディア ・メーカー:MIZUKI
・発売日:1996年3月29日
・クリア状況:―
 
  表題アニメのTVシリーズ228話・スペシャル6話・劇場版4話より、粗筋から制作スタッフまで網羅したデータベースを主軸に、他4つのコンテンツと50音別の検索機能を収録。
 
 マルチメディア系ソフトの善し悪しはデータ量とインターフェースに集約しますが、CD1枚によく詰め込んだ前者への賛辞は、統一感と利便性が欠落した後者に取り消されるでしょう。テキストと静止画はもちろん、本作でしか見られないイカしたアニメーションで開幕し、TVシリーズのオープニングとエンディングが8種類、メインキャラクターの名場面集が5種類+α、本編のダイジェストが数え切れない程と、ムービーも発売当時の水準を踏まえれば素晴らしい充実度。購入者の想像をまず上回るデータ量だけに、極めて不出来なインターフェースが憎いったらありません。
 
 データベースはゲストとアイテムを解説するインフォ、粗筋及び見所紹介のストーリー、端役の声優まで記載されたスタッフで一話分が構成されます。それは文字の洪水と例えられる巨大さで、ディスク内の全収録物を見終えるまでの所要時間を99%以上占めるでしょう。ただし、徒に大きなフォントで10×7文字しか同時表示しないテキストを筆頭に、閲覧環境は過酷。別のコンテンツでは適切なフォントで12×14文字を表示しており、理解に苦しむ使い分けです。担当者の違いからか文章力と記載内容に明らかな差があり、読むのが苦痛な箇所も見受けられました。
 インフォ・ストーリー・スタッフは各1ファイルに全てのテキストが連ねられた異様に縦長な構造で、その中を一行単位に移動するポインターが任意スクロールと項目の話数指定を掛け持ちしますが、スクロールバーが無いわ項目間の移動にキャンセル必須だわで、問題だらけ。テキストはポインターが最上下部の時に一行ずつしか送れない為、例えば第1話を読み終えるとポインターは必ず第2話先頭に位置し、自ずと操作上の齟齬が日常茶飯事に。ごくごく自然に、テキストのスクロールは方向キーの上下で1行・左右で1画面、項目切り替えはボタンでダイレクトに対応として、何がいけないのでしょう。このコントロールパッドを邪険にしつつ殊更にキャンセルと決定を求める方針は、コンテンツ毎にばらばらな上に総じて稚拙なインターフェースで、唯一の共通点だったりします。
 
 乗り物や兵器等の設定資料集は、画面サイズに十分な余裕があるのに3つのウィンドウをわざと重ねる愚行を犯し、4話分の原作コミックに至っては文字が潰れて判別不能かつ対策も無し。ゲストキャラクターの情報を集めたコンテンツにおいては、中身が空っぽのファイルでも選択が出来たり、一覧まで戻らないと次に進めなかったり、ページ切り替え用の矢印がその有無に依らず常に表示されていたり、非常識のオンパレード。そもそも、ここのテキストはデータベースからの流用でありながら、説明書で二度手間への注意を呼び掛けていないのが良識不足です。
 
 しおり・履歴・レジェームのようなデジタル媒体らしい機能を付けず、決定がAボタンのみかつコンフィグも不可で、進むと戻るのパネルの左右がコンテンツ毎に異なる…と、これだけ挙げても細かな欠陥が残存。隅々まで通して閲覧するとストレスの蓄積が請け合いなので、必要な部分だけを拾うのが正しい利用方法でしょう。
 
 
 
■美少女バラエティゲーム ラピュラスパニック
・ジャンル:ミニゲーム集 ・メーカー:BMGビクター/翔泳社
・発売日:1996年4月26日
・クリア状況:エンディング(VERY HARD)
 
  10種類のミニゲームをクリアして女の子のCGと豪華女性声優陣を楽しむ、ターゲットが明確な作品です。
 
 初っ端にプレイヤーをドン引きさせるのがCGの出来で、デッサンから着色まで女子小学生が描いたかのように拙く、商業作品として許されない品質です。ゲーム性で勝負ならばグラフィックは二の次でも構いませんが、本作の売りは上記の通り。女の子15人にCG3枚ずつと数が充実しているのに鑑賞用モードが付いていないのは、クオリティの悲しさを開発側が自覚しての判断でしょうか。フェイスウィンドウとフォントも相当な素人っぽさで、画面を見詰めていたら切なくなります。
 最悪な初印象の反作用で、本編の完成度を低く感じなかったのは不幸中の幸い。ミニゲームはブラックジャック等のカード系・15パズル等の思考系・もぐらたたき等のアクション系と豊富に揃っており、間違い探しと神経衰弱は結構楽しめました。また、それらの各々で異なる操作方法が、全てにおいて理に叶っており好感が持てます。ヘルプにしても状況によって事細かに文章が変わる親切さで、ご丁寧に「今は女の子の番だから、もうちょっとだけ待っててね」と言われて苦笑い。通常は3種類から自分が得意なミニゲームを選べるのに、最後は今まで一度も選ばなかったものからの連続対決を求められる、ボス戦での捻りも良いです。
 
 不満の温床は極端に少ないボリューム。ストーリーモードは数時間でエンディングなのだから、ゲームオンリーモードでは戦績やタイムを記録すべきでしょう。ルーレット・ワンチャンスポーカー・ブラックジャックと技術より運の比重が大きいものが最初から立て続けに並び、その短いプレイ時間の大半が序盤に費やされるのもうんざり。あと、セーブ&ロードが無制限なのにコンテニューが初期設定で回数制だったり、ストーリーモードを進めると選択項目が増えていくゲームオンリーモードとボイステストがエンディング後の新規セーブで元に戻ったりと、おかしな仕様があるのもよろしくありません。
 
 本編の改善要望は以上で、今も昔も酷評しかお目に掛かれない作品ながら、標準レベルのグラフィックか版権キャラクターが伴っていれば佳作になれたかも。強烈に駄目な部分から制作者の一生懸命さが見え隠れする作風に、耳を塞ぎたい程に下手な声優の演技に不思議と愛着が涌いてきた『ウィザーズハーモニー』の面影が重なります。
 
 
 
■SEGA AGES/宿題がタントアール
・ジャンル:クイズ/ミニゲーム集 ・メーカー:セガ
・発売日:1996年5月24日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL & HARDEST)
 
  90年代前半のアーケード作品『クイズ 宿題をわすれました!』と『タントアール』のカップリング移植で、地味なネームバリューなのに堂々とSEGA AGESシリーズの第一弾を飾っています。
 
 その場復活のフリーコンテニューを実装し、スタートボタンを押すだけで誰でもエンディングを迎えられます。本来であればバランス調整を放棄した駄目な作りですが、経験者に当時を懐かしませることが目的の商品だと考えれば間違いではないでしょう。しかし、プレイがおざなりになってしまうのが避けられないので、無制限よりも大量の方が無難なのは確実。購入即エンディング以来、二度と起動しない人が多そうです。
 
 『クイズ 宿題をわすれました!』は文字を読み続けるジャンルでありながら、画面がチラチラする高解像度を採用してしまいました。アーケード版の発売時期から察するに問題が追加されているのは評価したいものの、出題傾向が特定の分野──主に野球偏重なのが気になります。誤答に対して正解を表示しないセガ製クイズゲームの悪い癖と、スキップ不可の画面が多いのは要改善。プレイ時間が30分程に収まり、簡素ながらしんみりとさせてくれるテキスト・シナリオ・エンディングは好きですね。
 『タントアール』はミニゲームの難易度差が、少しでも是正されていれば評価が上がりました。3回挑戦出来る上に全て失敗してもハート1つと引き換えでクリア扱いになる「必殺!ハートウォッチャブル」から、自力でクリア出来るまで延々とハートが減り続ける「わくわくロボット工場」まで滅茶苦茶な幅があり、どうしてもミニゲームの選択が固まってしまいます。得点を除外したのも納得いきませんけど、オリジナルの問題をここで言うのは筋違いでしょうか。あと、メガドライブ版で追加されたミニゲームを収録せず、前世代機への移植版の方が良き完成形となったのは誉められません。
 
 付加価値が皆無でインストカードすら見られないのと、非対応のバックアップにペケ印を。
 
 
 
■デカスリート
・ジャンル:スポーツ ・メーカー:セガ
・発売日:1996年7月12日
・クリア状況:エンディング
 
  オリンピックイヤーに必ず商品化される多種目収録のスポーツゲームで、アーケードからの移植。デカスロン──陸上十種競技を題材にしています。
 
 セガサターンと互換のST-V基板だから移植に配慮は不必要と開発者が思い込んだのか、セガサターンパッドでは操作困難な競技が。レバーよりも不利くらいの程度ではなく、必死に挑んでもノルマ達成が精一杯で、入力デバイスの差を本当に考えなかったのでしょう。自己記録の更新が目的なのに、記録が伸びる裏技的な特殊操作を多数隠したのも大きな違和感。努力で培った技術よりも隠しコマンドの知識が求められるのは、正攻法で挑むのを莫迦らしくさせるドーピングのようなもので、陸上競技を模したゲームに相応しいはずがありません。
 
 キャラクター毎のエンディングや長く遊べる仕掛けも無く、志の低さばかりが見えます。一度でもアーケード版をプレイしていれば、少しは変わったのでしょうか。
 
 
 
■タイトーチェイスH.Q.+S.C.I
・ジャンル:レース ・メーカー:タイトー
・発売日:1996年8月9日
・クリア状況:全エンディング(EASY)
 
  「ナンシーより緊急連絡」の台詞が有名な80年代後半のアーケード作品で、犯罪者の乗った逃走車両を体当たりで破壊します。
 
 このシリーズは家庭用を含めて本作の『チェイスH.Q.』が初体験で、豪快なゲームシステムに戸惑いました。普通のレースゲームに要求される繊細な操作とは無縁で、ステアリングもアクセルも適当にひたすら標的へ追突するだけで構わないなんて、凄まじい大味さ。作風に準じてグラフィックは発売年を考慮しても粗く、移植度が低いのか元がこうなのか。両作共通の難点は、カーブを示す道路脇の矢印が頼りにならないし、全5ステージでエンディングまでの所要時間も約15分の短さだし、指示に逆らった方が楽な分岐も変です。
 折角のスピード感と爽快感が帳消しになる程に単調な『チェイスH.Q.』に対して、『S.C.I』には撃ち放題のショットと趣を変えた最終ステージを加えていますが、良い方向に働いたかは疑問。ショットはキーアサインに難がありオプションでの自由な変更も不可な為、特定のボタンを入力状態にする機能が使えないと操り辛いのです。射撃性能は押しっ放しで最も優れることから、一般的な別売りコントローラーに備わる連射を兼ねたホールドでは不利を被りますし、輪ゴム等で固定するしか解決策は無いでしょう。また、30秒1発勝負の最終ステージで残りクレジットに関わらずコンテニューが不可になるのは、プレイヤーに重荷を背負わせ過ぎ。映像のスムーズさと音声の量でも前作に劣っており、続編らしからぬ出来でした。
 
 読み込みは気にならず、収録作をシームレスで遊べる等、木目細かな部分もあるのは救いです。ただ、バックアップに非対応でスコアアタックには向きません。
 
 
 
■SEGA AGES/アウトラン
・ジャンル:レース ・メーカー:セガ
・発売日:1996年8月20日
・クリア状況:全エンディング(JAPAN&OVERSEAS+初期設定)
 
  歴代セガハードに移植され続けた体感ゲームの人気作。赤いスポーツカーに乗って全15コースを走る、ラスタースクロール系のレースゲームです。
 
 アーケードでのプレイ経験は数回で、絵も音もメガドライブ版より豪華との第一印象になりました。家庭用ならではの劇的な追加が無く、短時間で一通り遊べてしまうものの、海外版・BGMアレンジ・スムーズモード等の細かいオプションが詰め込まれては、不平を言えません。デフォルトの設定において、タイムに余裕があって安全運転を心掛けてもクリアが可能な反面、道路を完全に塞いだり平然と衝突してくる敵車のいやらしさに腹立たしい時もありますが、自然美に溢れた多様な背景と抜群のスピード感と最高の音楽が合わさることで、私のように移植度を判断出来ないプレイヤーにも彩り豊かなドライブを約束してくれるのは、TVゲームとしての優れた資質の証拠でしょう。
 事故時の演出とエンディングは、この機会に増やしても良かったのでは。ステージ単位のタイムアタックモードや、メガドライブ版の裏技も欲しかったですね。あと、ディスク内か説明書に「ギアガチャ」と「ロケットスタート」の解説を載せるくらいの親切心は、古き名作の移植の担当者に持って欲しいものです。
 
 数少ない非難されるべき点は、廉価版のハードでは正常に起動しないにも拘らず、雑誌や店頭での公式発表を一切せずに交換を行ったこと。これで受けた被害を忘れた頃にインターネット上で真実を知った人は、自分含めて相当数いるでしょう。
 
 
 
■ぎゅわんぶらあ自己中心派 TOKYO MAHJONG LANDトーキョーマージャンランド
・ジャンル:テーブル ・メーカー:ゲームアーツ
・発売日:1996年10月18日
・クリア状況:全エンディング/一部エンディング(デート麻雀)
 
  1992年にメガCDで発売された『ぎゅわんぶらあ自己中心派2 激闘!トーキョーマージャンランド編』の移植で、麻雀ソフト開発10周年記念作品。1996年発売ですが『ノーマーク爆牌党』のキャラクターは登場しません。
 
 2本用意された「ストーリー麻雀」と、膨大な会話パターンがある「デート麻雀アニバーサリー」をメインに、指定のキャラクターのツキでも打てる「フリー麻雀」及び、息抜き用のミニゲームとは思えない程に作り込まれた「カジノパレス」を完備。対局中のキャラクターは多彩なリアクションを返してくれるし、アニメーションは質と量の両面で当時としては抜群の完成度を誇ります。前作の短所だった思考時間も短縮され、デート麻雀の完全制覇を目指そうものなら年単位の期間を要求される、まさに一生もののゲームソフト。ここまで、メガCD版のレビューでした。
 
 そんな素晴らしい作品の移植版は、悲しいくらいに御粗末。キャラクターとアトラクションが追加・変更され、ただでさえ高速だった思考時間が光速へと進化しましたが、メガCD版の数少ない問題点が放置されたままでは話になりません。データ量に増加が見られないのに読み込み時間は据え置かれ、裏技扱いの音楽追加やカジノパレス直通を標準にする配慮も無し。デート麻雀のクリア履歴を保存するとか、キャラクターのリアクションが自由に見られるオプションを付けるとか、時代に応じて直すべきだった箇所も原型を踏襲しています。
 更には、好きなだけ保存出来たセーブが3つまでに制限されるわ、リーチ後のオート処理とリアクションの省略機能が消えるわ、対局中の音声をボタンで飛ばせなくなるわ、デート麻雀のエンディングがBGMと同調しなくなるわ、勝ち過ぎの金蔵を指導者にしてもツキが反映されないわその他諸々、改悪点多数なのが本当に不可解。あからさまに悪化しているのは見た目で、グラフィックは全体的に暗めの配色になり、フォントや麻雀牌まで安っぽく変更されています。フリー対戦でテナリンズのメンバー紹介に掛け声を入れたり、ソニー君に「脳天直撃、セガサターン」と喋らせたりする暇はあったみたいなのに、どうしたゲームアーツ。
 
 色々と苦言を呈しましたが、メガCD版を未所有であれば名作の潜在能力はあるでしょう。CHON2と一四萬野清志郎のデュエットが聞けるのも、ちょっとした売りかもしれません。
 
 
 
LULUルル
・ジャンル:マルチメディア ・メーカー:セガ
・発売日:1996年11月1日
・クリア状況:―
 
  一冊の児童書をデジタルに還元したかのような、本の中の宮殿に住むお姫様のルルと、そこに飛び込んできたロボットのネモのお話。デジタル化の恩恵は、挿絵が滑らかに動いたり、静謐な調べが奏でられたり、登場人物に声が当てられたり、大貫妙子の朗読が付属したり、その名も「クリックブック」です。
 
 帯の「本年度 超話題作!」「海外マルチメディア賞★続々授賞中★」の謳い文句はともかく、横開きの紙の箱になった外装から雰囲気を作り上げています。買った本は奥付に目を通し、あとがきの有無を確認後に読み始めるので、この書籍を模したゲームソフトでも試してみると、何の障害も無く成功してしまう割り切り振りも素敵。これはどこを取っても、画面を介して触れる本ですね。
 多種多様な挿絵の魅力に、話の筋がそっちのけになったのは私だけではないでしょう。表で退屈そうにルルが座っているページでは、猫が鳴こうが鐘の音が聞こえようが男性の石像が騎馬に変身しようが彼女は動じないものの、傍らの蓄音機でレコードを演奏すれば曲毎に違った踊りを見せてくれます。また、ルルが横たわったネモの様子を見に来るページでは、事前に青空をクリックして星空に変えているとルルが明かりにキャンドルを持ってくるように、通り一遍でない反応で非常に凝っているんです。ただし、序盤に力を入れ過ぎてアイデアが尽きてしまったのか、中盤以降は鳴き声が聞こえたり鳥が飛んだりするだけになってしまうのが残念。あと、本文にもクリック可能な箇所が隠れているのは、説明書に記載されているにせよ不親切かもしれません。
 
 途中から物語が三次元的に展開し、ページを順番に読み進めないように要求されるのは余計でした。最初は言われるがままに従ったものの結局は戻らねばならず、普通に読めば良かったと後悔したので。裏表紙が存在しないのは、表紙に始まり裏表紙に終わるのが読書だと思う為、肩透かしを食らった気分。欲を言えば、クリック達成率やしおり機能も欲しいです。
 
 作風は異なりますが映像と音響の印象から、メガCD『夢見館の物語』が好きな人は合うでしょう。
 
 
 
■DIGITAL PINBALL NECRONOMICONネクロノミコン
・ジャンル:ピンボール ・メーカー:KAZe
・発売日:1996年11月15日
・クリア状況:エンディング
 ⇒攻略ページ
 
  デジタルピンボールの2作目は題材に『クトゥルー神話』を用い、収録台が減った代わりにステージクリア方式の別モードが加わりました。
 
 前作を未体験なせいか、美麗な画像と激しい音楽に圧倒されるも、実機でもゲームソフトでも初めて触れるピンボールには興味を惹かれず、さっさとストーリーモードを終わらせて放置してしまいました。数年後に改めて取り組めば、ボールを適当に弾き返すだけに陥らず長期的な戦略で挑むべきだと気付き、遅ればせながらやり込み状態に。しかし、台とラウンドとマルチボールの特性を見極め、的確にフリッパーを操って獲得となる高得点の快感を楽しめたのは、ほんの短い間だけだったのです。
 どこが悪いのかと言えば、ローリスク&ハイリターンを認めていることに他なりません。詳細は攻略ページに記した通りで、全ての台にゲームオーバーと無縁で膨大な点数を得られる仕掛けがあり、該当しない仕掛けの存在意義が消滅しています。つまり、スコアアタックに必要なのは技術ではなく、暇と根気のみ。自他共に認める職人気質のメーカーが、こんな指摘をピンボールのいろはを知らない人間にされては駄目です。例えば120分程度の時間制限を設け、強制終了時点で残ったボールにボーナスを与えれば「安全」と「高得点」の二大必要要素に「短時間」が加わって少しは是正されるのに、生粋のピンボールプレイヤーに受け入れ難いのでしょうか。
 
 前作より劣る部分が少なくなく、ストーリーモードに物語性が皆無で、致命的なバグや耳障りな雑音が頻発して困りものと、本性を知るに連れて不満が膨らんでいくのは非常に残念。昔から当作を手放しに評価される方が多数なのは、欠陥が表面化する前に遊ばなくなったとしか思えません。
 
 
 
■ぴょんぴょんキャルルのまあじゃん日和
・ジャンル:テーブル ・メーカー:ジャレコ/ナツメ
・発売日:1996年12月20日
・クリア状況:全エンディング
 
  幼児風のキャラクターが神様に願いを叶えてもらう為、正々堂々の2人打ち麻雀で対戦します。
 
 タイトル・主題歌・キャラクター・漫才デモに、頭の配線をショートさせる程の独特な勢いがあります。その見た目から大きなお友達向けと考えていましたが、真にお子様向けなのでしょうか。しかし、そんなゲームソフトをユーザーの年齢層が高いセガサターンで敢えて発売するのもおかしく、対象が掴みにくいです。
 麻雀のアルゴリズムでは、イカサマ技が無い代わりにツモの操作はあからさまでCPUが染めてばかりなのと、ハコにするまで勝負が決しないせいでシーソーゲームが延々と続くのが気になりました。グラフィックは癖っけが強いものの描き方が丁寧で、キャラクター毎にエンディングと声優さんのコメントがあり、CD-DAで聞けるヴォーカル&カラオケ曲が3つも入っているのは好印象。あと、そこそこの量の原画を最初から全部見られますが、これは出し惜しみしてプレイの動機付けに利用すべきだったかもしれません。
 
 打牌のリズムが早く、リーチ後は高速オート処理になり、余計な待ち時間も無しで、テンポは良好。2人打ち麻雀のゲーム性の限界から大した面白さも寿命も持ち合わせていませんが、プレイヤーを選びそうな見た目とは裏腹に心配りが行き届いており、そんなに悪い作品だとは思いません。
 
 
 
■SEGA AGES/廊下にイチダントアール
・ジャンル:クイズ/ミニゲーム集 ・メーカー:セガ
・発売日:1996年12月27日
・クリア状況:全エンディング
 
  『宿題がタントアール』に収録された両作の続編のカップリング移植で、『クイズ 廊下に立ってなさい!』と『イチダントアール』の2本入り。
 
 クレジットが無制限から適度な回数になった以外の改善点は僅かで、付加価値はありませんしバックアップにも非対応なままです。ただ、肝心の収録作品が両方ともセガお得意の失敗した続編なのが痛くて、そちらの手抜きは気になりませんでした。
 
 『クイズ 廊下に立ってなさい!』は誤答で正解が表示されないのとスキップ不可画面の多さが相変わらずで、クイズゲームとしての基本が向上していません。正解分のコマ数を進んでいくのは同じなのに、なぜか画面中をトロトロと歩くようになり、無駄な待ち時間が増大したのは特に理解不能です。最大の難点は、鳴き声や点々ばかりとテキストのセンスが低く、前作で味わい深かった台詞やエンディングが消え失せてしまったこと。表示のチラチラは解消されたものの、綺麗な代わりに見辛いの方が良かった、なんて身勝手な意見も付け加えておきます。
 『イチダントアール』は無闇に難しくなり、前作のお気楽な雰囲気が変わり果ててしまいました。一新しつつ総量が増えたミニゲームとて、操作不能の演出がイライラを誘ったり、初見でルールを理解しにくかったり、音声が不鮮明になったりで、完成度は下がっています。パッドではノルマ達成が困難な「一番削り」はメガドライブ版だと操作方法が改良されていたのに、今作ではアーケードと同じままなのも問題。練習用のフリーモードの追加が唯一のプラスでしょう。
 
 前作の方が洗練されており、発売と逆順のプレイをお勧めします。最大同時プレイが2人から4人になった分、パーティープレイには合うかもしれません。
 
 
 
■だいなあいらん予告編
・ジャンル:ファンディスク ・メーカー:ゲームアーツ
・発売日:1996年12月27日
・クリア状況:─
 
  フルアニメーションが特色なアドベンチャー『だいなあいらん』の先行販売されたファンディスクで、予告編用のアニメーション・ドット絵による設定資料・伴奏機能付の主題歌を収録。
 
 説明書を読み、CD-DAを聞き、中身を見終えるまでの所要時間がたったの30分と、パイロット版でも体験版でもない正真正銘の予告編です。これを本編の約4割の定価で売られては、会社への信頼が揺らいでしまいそう。ただ、ファンディスクは害悪なだけのゲーム性や分岐でボリュームを水増したものが非常に多い分、小細工無しな「本編をお楽しみに♪」の姿勢は却って清々しいかも。また、私は本編と予告編の購入及びプレイが前後している不届き者であり、正規のユーザーにはグッズの全員プレゼントが行われたのを考慮しなければなりません。
 
 つまり、グッズのおまけと捉えるべき商品でしょう。
 
 
 
 
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