■セガサターンソフトレビュー(アクション1)
 
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琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■輝水晶伝説アスタル
・ジャンル:横スクロールアクション ・メーカー:セガ
・発売日:1995年4月28日
・クリア状況:エンディング
 
  メガドライブで好評を得たディズニーの『アイラブ〜』シリーズを彷彿とさせる、キャラクター重視のスプライト系アクション。ポリゴンや3Dレンダリングではなく、従来よりも豪勢な拡縮と多重スクロールで次世代機にアプローチしており、同時期同ジャンルの『クロックワークナイト』と似て非なる位置にいます。
 
 ライフを分け合ったり、拘束から解いてくれたり、浮遊する足場を固定したり、様々な発想で主人公を補佐してくれるヘルパーの同行が特徴で、簡易的な2P操作も用意したものの、ゲームシステムは悪い意味でオーソドックスさが拭えません。神経を逆撫でするルールや理不尽なトラップと無縁なのは歓迎ですが、誰でも1日で完遂可能な易しさなのに、プレイ意欲を継続させる要素を外したのが最たる誤り。スコアと難易度変更が無く、ステージはプレイヤーの技術と創意が報われる余地の無い平坦な作りで、同じ道を二度通らなかった人が大半では。
 低年齢層を対象とした割に、相反する点が目立つのはいけません。ゲージとアイコンで埋め尽くされた画面と、パッドの全ボタンに役割を持たせたキーアサインは、シェイプアップの必要性大。多彩な攻撃手段とて、ギミックの動作用の趣が強く、普段は使いにくいばかりか邪魔ですらあります。ジャンプ攻撃に空中静止を伴うのが不可解だわ、説明書が不親切で協力攻撃の発動に一苦労だわと、操作面にはケアレスミスも。あと、サウンドモードで聞ける項目がクリアで増えるのに、バックアップに非対応は叱責ものでしょう。
 
 ただ、これらの淀みを覆い隠す強い煌きが、美術面を主体に溢れ出てくるのも本当。フル画面でありながら画質と動画枚数に妥協が見られないオープニングアニメは、発売時期を含めれば出色の完成度です。淡く豊かな色彩で暖かみに満ちたグラフィックは、場面毎に異なる幻想的な美しさで時として進行を躊躇させますし、背景やNPCの芸もあまりに細かくて気付くのが難しいくらい。きっと、1面ボス戦の演出に感心したのは私だけではありますまい。
 創造神から罰を受ける程に乱暴な男の子が、掠われた大好きな女の子を助けに向かう設定は、独特なデザインと不変的な愛らしさを両立させた人懐こいキャラクターと相俟って、感情移入度満点。澄み切った音色で奏でられる曲と効果音は、自己主張は控えめなのに荘厳な雰囲気を感じさせてくれます。そして、この手のジャンルで物語を描くのは珍しくありませんが、本作ではもう一歩踏み込んでテーマまで語ろうと努力した真摯な姿勢を、何より誉めてあげたい。敢えて高望みすれば、その心掛けをビジュアルシーン以外にも反映して欲しかったですね。本編のトラップを前半は力尽くで捩じ伏せるが、後半は非暴力での解決を求められるとか。
 
 TVゲームとしては未熟なのを受け入れつつ、絵本や児童書の感覚で接すれば違った感想が芽生えるでしょう。私にとっては、スタッフロールの一人一人の名前に感謝の気持ちを抱かされた、稀有な存在です。
 
 
 
■新・忍伝
・ジャンル:横スクロールアクション ・メーカー:セガ
・発売日:1995年6月30日
・クリア状況:エンディング(EASY〜HARD・ノーコンテニュー)
 
  忍者の体術でアクロバティックに突き進む、『SHINOBI』シリーズの一作。セガハードでは当作をもって打ち止めになったものの、その名は現行機種でも見掛けられます。
 
 発売時期及びジャンルが近しい『クロックワークナイト』『輝水晶伝説アスタル』との差別化か、グラフィックにTVゲームとの相性が悪いことで有名な、実写が採用されてしまいました。結果は開けてびっくり、和風の自然美に溢れた清々しい景色に、滑らかな動作が生々しいキャラクターを映し出しており、画面に意外な高級感が。それでいて生真面目なのにどこかお間抜けな、旧来の雰囲気も健在です。
 当作の源流である、メガドライブ『ザ・スーパー忍』『ザ・スーパー忍II』との明確な差異は、飛び道具の重要性。隙が大きく、威力が小さく、ノーデスでエンディングなら使用可能数は約150個と、一部の局面でしか役立てられません。更に、敵の体から当たり判定を消し、敵の手裏剣を弾き返して逆用可能にしたのが意図的で、今までとは正反対に勇んで至近距離へ飛び込んでゆく姿勢が大切になりました。これは恐ろしき戦闘能力の忍者を操る喜びを、新たなゲーム性で創出したと言えないでしょうか。
 
 記憶力を求める即死トラップが早々に登場し、雑魚や木箱から出現するのが罠の爆弾ばかりで、ボスは無敵中の一方的な攻撃時間が長く、初見での難易度は厳しめ。しかし、穴落ちは三角飛びで復帰出来たり、隠しアイテムが多かったり、防御が高性能だったりと、救済措置は満ちています。また、シリーズ中随一のレスポンスが前進→防御→攻撃→回避→反撃と素早い連携を容易した為、力押しが通用しない訳ではありません。怒涛のトラッブ群で手加減知らずな『II』と違い、本性は優しいんですね。
 攻守に多彩な技を追加したのに、そのほとんどが不要なばかりか、時に暴発して足を引っ張ります。一撃必殺用のダッシュ攻撃を無個性にさせつつ、忍術の仕様まで改悪した影響から、ボス戦の攻略方法が狭くなりました。ステージは大半の舞台が既作の焼き直しだし、ボリュームも減少。故に、単体で見れば佳作級の完成度を維持した反面、待望の続編だと思ってプレイするのは危険でしょう。
 
 尚、JACの俳優が演じる20分超のムービーが物語を盛り上げてくれますけど、これはソフトレビューとは切り離すのが武士の情けかと。
 
 
 
■ゴールデンアックス・ザ・デュエル
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:セガ
・発売日:1995年9月29日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL or HARDEST)
 
  セガサターンの互換基板ST-Vにおける第一作を即席移植。アーケードとメガドライブで計5作発表されたベルトスクロールアクション『ゴールデンアックス』シリーズを、オーソドックスな2D対戦格闘に仕立てました。原作未経験で違いは掴めませんが、連続技を入り易くしたとのこと。
 
 間合いに応じて拡縮する画面で、弱・中・強の斬りと蹴りを使い分け、地面に落ちたアイテムを回収し、特定条件で大幅な攻撃力加算──以上の概要から、SNKの名作『サムライスピリッツ』が下敷きなのは瞭然。ただし、品質向上に繋げた模倣ではなく猿真似で、完成度は遠く及びません。ストリートファイトを真剣勝負に置き換えた『サムライスピリッツ』は、一撃の威力を高めつつ必殺技と投げの価値を低め、全てのキャラクターが強力な武器を構える意味をきちんと持たせました。翻って本作は、大振りの剣に裂かれても軽傷で済んだり、鍔競り合いや素手の攻防が無かったり、飛び道具が高性能だったり、稀に刃先が触れ合って弾かれる以外は武器がお飾りなのです。それでいて、ジャンプ攻撃から地上攻撃に繋げにくい性質を受け継いだのが、何ともはや。
 タイムオーバーが頻発するわ、超必殺技と空中コンボの使用機会が僅かだわ、根性値の非採用と過度な削りダメージが「チーズ」を促すわで、オプションの設定変更で幾つかの不満は補えるにしても、ゲームシステムをシンプルに徹した効果は認められません。また、操作感は素直なのに多用必須の同時押しをLRボタンに割り当て不能、必殺技のコマンドは自然なのに超必殺技のそれは乱雑、背景の描き込みは上々なのに奥行きが無い一枚絵だらけと、貴重な長所が尽く短所に潰されています。重罪なのが、コンテニューや対人戦で一戦毎に読み込み直すのと、勝利デモ等の省略機能を有しないこと。攻撃モーション・中割り・音声の豊富さを踏まえれば、試合前の待ち時間を許容範囲に纏めたにも拘らず、全体のテンポは劣悪になってしまいました。更に、ラスボスを使えない、バックアップに対応しない、スコアの桁数が2つも余計、簡易セレクトの同キャラ対戦にバグと、細かな横着も満載です。
 
 論点を変えて、セガファンの立場から言わせてもらうと、開発陣は『ゴールデンアックス』への造詣が欠如してやいませんか。アメリカのヒロイックファンタジーのような肉体美を誇示するドット絵とイラストは、下手っぴな少年漫画風のタッチに変貌し、キャラクターも旧作と無縁な者が大半を占め、関連性があってもビジュアルやプロフィールに一部を盛り込んだだけ。ティリス、ドーラ、リトル・トリックス、スケルトン、レマナーヤ、ヘル=リザード、チキンレッグと、敵味方共に個性の塊でありながら何を血迷ったのでしょう。そもそも、当シリーズは対戦格闘ゲームのブームに先んじて趣旨が近しい「デュエルモード」を家庭用で導入したのに、企画から他社作品の亜流に走っちゃいけません。
 
 ところで、本作はセガマルチコントローラーを端子に差していると起動出来ませんが、メガドライブ『ゴールデンアックスII』も後発のコントローラーが原因の不具合を抱えており、奇妙な共通点があるものです。
 
 
 
■クロックワークナイト 〜ペパルーチョの福袋〜
・ジャンル:横スクロールアクション ・メーカー:セガ
・発売日:1995年12月15日
・クリア状況:全エンディング(EASY & NORMAL & HARD)/トランプパーフェクト
 ⇒攻略ページ
 
  西洋のおもちゃを3DCGで擬人化した『ペパルーチョの大冒険』の上下巻及び、ミニゲーム等のおまけを収録。1エリアは2ステージ+ボス、1巻に4エリアの構成です。
 
 おふざけが過ぎた灰汁の強い容姿と、センスの悪い性格付けのキャラクターに気をそがれますが、その実は次世代機だからこそ可能になった要素が満載。心潤すムービー、くっきりはっきりの色使い、ポリゴンによる目新しい仕掛け、様々な反応を返す小道具、独創的なボスの造形と攻撃方法、澄んだ音色のBGMと効果音等、賑やかで華やかなおもちゃの世界は見所に困りません。物珍しさ故にギミックとの意志疎通が最初は難しいものの、難易度毎に異なる面間の助言から開発者の意図を読み取れば心証が次第に変わってゆくでしょう。しかし、旧来のジャンプアクションの悪所を引きずっており、分割販売への反感を抜いても名作には程遠いです。
 
 とにかく、死因の大半が穴落ちによる一発死なのに、広大なステージに復活ポイントが無いことに閉口です。滑っては弾かれる操作性のせいで落ちたくない穴に落ちて落ちたい穴に落ちにくかったり、ポリゴンの曖昧な当たり判定が不可解な隙間からの落下を誘発したりで、画面上の楽しげな雰囲気はどこへやら。無限増殖が容易で自ら望まないと決してゲームオーバーにならないのは、そんな片寄ったバランスの調整を放棄した証拠でしょう。上下左右と前奥を行き来したりワープしたり隠し部屋に入ったり、複雑なマップデザインにもたじたじ。全体図を把握出来ればゴールまでの時間短縮に繋がるものの、寄り道の度に穴落ちとタイムオーバーが増える一方では、探索する勇気も萎えてしまいます。
 2番目に許せないのが、下巻においてステージ内に4枚ずつ隠されたトランプの収集を、意地悪な手口で妨害してくること。システムデータに非対応で1プレイ内に全32枚を揃えねばならないのに、クリア後のステージに戻れないわ、非正規ルートに進むと勝手にクリア扱いだわ、獲得のチャンスが一瞬な上に自殺による再挑戦すら不可の所まであるわで、甚だしいマナー違反が続出です。配置場所に凝っている為、一定以上の速度でトランプを通過しないと駄目なルールだけでも厳しいのに。尚、並々ならぬ努力でやっとこさトランプをパーフェクトにしてエンディングを迎えれば、1番目に許せないことが起こります。
 
 上巻と下巻の比較で、コンテニューやキーコンフィグを代表に数々の細部を改良したのがわかりますが、どうせなら良い方に統一を。待ち時間を食うだけでメリットが認められないルーレット、無意味に裏技扱いのステージセレクトとミニゲーム、エンディングの度に変化するのに過去分の閲覧が出来ないタイトル画面と、まだまだ直すべき点は残っています。元々の開発期間が長く、発売後の感想を反映させる機会にも恵まれ、輝きを秘めた原石を思わせる潜在能力を持ちながら、ブラッシュアップを怠って最終形を迎えたのはいけませんね。
 
 以上のように不満は尽きず、エンディングを代表に上下巻に劣る部分を多々秘めるものの、今作のみを購入した立場からは合格点でした。
 
 
 
■ヴァンパイアハンター
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:カプコン
・発売日:1996年2月23日
・クリア状況:全エンディング(★×8)
 
  既存の対戦格闘ゲームから脱却を目指すも、新システムが難解でプレイヤー層が広がらなかった『ヴァンパイア』を洗練させつつ、キャラクターを追加した準続編を忠実移植。原作は大量のグラフィックパターンを用意し、極めて滑らかな動きを実現していました。
 
 セガサターンの強力な2D機能と開発陣の心意気を映像で見せ付ける、会心の出来栄え。実際には相当数のパターンが削られ、読み込み時間も常識的な長さで収まっているのに、一目ではアーケード版との違いを感じられない程でした。これはアスペクトの攻略本によれば、モーションからの単純な中抜きを良しとせず、パターンの入れ換えと流用を駆使した賜とのこと。抜群の再現度は表面上に留まらず、ゲーメストで言う所の驚異現象まで収録され、相当の兵でなければ画面サイズ以外に違和感は認められないでしょう。ボタンの設定に融通が利き、縦押し順押し必須のドノヴァンやアナカリスでもスティック要らずですし、余計な選択の省略や面間のショートカットを備えた環境面にも二重丸を。
 移植作業に尽力した分、家庭用独特の要素が弱いのは致し方無しかと。トレーニングやサバイバルのような別モードも、CPU戦の最高難易度をストレートで勝ち抜いた時のご褒美もありません。ただ、『ヴァンパイア』のオープニング・背景・BGMが入っており、同キャラ対戦時限定ながらアーケード版と同様のモーションに出来るのは、それなりにお得感を刺激してくれます。尋常ならざる手段で密かに残されたデバッグモードも、最後のお楽しみに有効でした。
 
 原作に対しては、遊び手の実力を問わない人当たり良きゲームバランスに惚れました。攻めのチェーンコンボはボタン連打でも発動し、守りのガードキャンセルは状況によって低難度かつ無リスクで使用可能と、初心者でも確実に新システムの恩恵を授かれる間口の広さが、上達する程に新たな攻めと守りの形を作れる奥深さと両立しているのは、奇跡的な調整具合でしょう。前作の必殺技に目立った奇抜なコマンドが簡略化され、覚えるのが大変だったり入力に失敗しがちだったり、当ジャンルに付き物の悩みが解消したのも歓迎。あと、対戦時の乱入側が勝利した際にCPU戦が1人目から始まるのは、もっと評価されるべきだと思います。相手に恵まれないロケーションでも、このお蔭でCPU戦の進み具合を気にせずに乱入出来ましたから。巡り巡ってインカムにも有利に働くはずなのに、自社ですら標準にしなかったのが不思議でなりません。また、ドローゲームでゲームオーバーにならないのも嬉しいですね。
 以下、原作及び移植作における改善要望をごちゃまぜで。プレイヤーセレクトや勝利デモの画力が、前作よりも拙い。使い勝手が悪くなるわ、同時押しの設定ボタンでも出ないわ、弱+中ボタンでしか反応しないわと、ES技に難が目立つ。実質は単発なのに超多段ヒット扱いの技が多いせいで、自力で連続技の手数を増やす意欲が削がれる。CPUの登場順に融通が利かず、高難度でも敵のガードは柔らかい為、前半固定のキャラクターは強い姿が見られない。他社開発なのかスタッフロールが無く、エンディングが質素。コンテニューの有無・使用キャラクター・ラウンド数等、区別が一切されないハイスコア。投げキャラなのに投げが強くないビクトルの突出した不遇さと、扱いにくい上に潜在能力も低いドノヴァンの報われなさ。思い付く限り挙げても、この程度で済むのは立派です。
 
 後の『ヴァンパイアセイヴァー』は方向性が好きになれず、当時は拡張ラムに対応させた本作のバージョンアップ版を望むくらいでした。
 
 
 
■ドラえもん のび太と復活の星
・ジャンル:横スクロールアクション ・メーカー:エポック社
・発売日:1996年3月15日
・クリア状況:全ステージ(ふつうorむずかしい)
 
  大半の物体をポリゴンで描写し、最大3本の移動用ラインで作られた立体構造のステージを、『ドラえもん』でお馴染みの5人が駆け巡ります。フルボイスが嬉しいイベントシーンには、ひみつ道具の選択肢による多数の分岐を用意しました。
 
 TVアニメと同じ主題歌にワクワクしたのも束の間、コンフィグが可能とは言え攻撃とジャンプが逆さまなキーアサインと、タイム無制限とは言えまさかのポーズ機能非対応で、起動直後から不安に。常に処理落ちしていて操作感が重いとか、キャラクターの性能差を唯一表した特殊攻撃に使い道が皆無とか、ラスト3面にボスが不在とか、ボリュームが薄いとか、スコアやアイテムが無くて再攻略意欲が湧かないとか、難易度が勝手に元に戻るとか、その初印象は裏切られません。お楽しみのイベントシーンに縋っても、ムービーはおろか一枚絵すら見られず、添削が不十分な台詞を読ませられる大御所声優が気の毒になってしまいました。
 オーソドックスなアクションにとって命であるマップデザインは、人ならざる者が自動作成したかのように息をしていません。ポリゴンの特性をトラップに少しは利用した反面、配色や視点に過失だらけで視認性が極悪です。ジャンプが届きそうな坂やら、しゃがめば通れそうな通路やらと、行き止まりの誤認を誘ってくるのも駄目。迷路みたいな構造の序盤から、単純に右へ進めば良い中盤を経て、固定画面に近しい終盤へ収束する辺り、TVゲームの作法を知らない開発現場の苦しい実情が見て取れます。更に、2022年にマルチエンディングの搭載が有識者によって初確認されましたが、その非常識な仕様は反面教師として一見の価値あり。
 
 ただ、理不尽な部分を含めても難易度は低めを維持し、セーブポイントが分岐の直前にあってコンプリートの手間が小さい──この2つの美点をもって、駄作とまでは思いませんでした。これは「面白くない上に難しくて長い」よりは「面白くないが易しくて短い」の方が、減点方式で評価する私向けだからで、純粋な誉め言葉ではありませんけど。
 
 
 
■天地を喰らうII 赤壁の戦い
・ジャンル:ベルトスクロールアクション ・メーカー:カプコン
・発売日:1996年9月6日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL+ノーコンテニュー or HARD+裏モード)
 
  本宮ひろ志が『三国志』を題材に描いたコミックを、カプコンの人気作『ファイナルファイト』に融合した、1992年のアーケード作品。似たり寄ったりのベルトスクロールアクションが各社から乱発される中、根強い人気を保っていました。
 
 戦国ものの舞台設定に合わせ、キャラクターを小さくした代わりに同時出現数を増やし、無数の敵を一騎当千で蹴散らしてゆく作風が特徴。殴って投げて、騎馬で突撃して、必殺技で大ダメージと、ゲームセンターでわいわいと複数プレイで遊ぶには持って来いで、当時のロングランヒットも頷けます。しかし、家庭でじっくりと1人プレイで攻略に挑めば、意外な本性が明らかに。カプコンにとってお家芸のジャンルにも拘らず、非常に粗が多いのです。
 最も痛いのは、プレイヤーの味方であるべき必殺技・馬・武器が、実際には罠なこと。これらの大半は空気どころか有害で、少しの操作ミスで致命傷を負わされてしまうシビアなバランスと相俟って、憎らしいったらありゃしない。故に、騎虎の勢いで大暴れしたい野蛮人は粛清され、ちまちまとスクロールさせつつローリスクな技に専念する知恵者とならねばいけませんが、漠然と大量の敵が出現しまくるだけの単調な展開が60分間も継続しては、何重の体力ゲージの敵が何体も出てくるシーンが何回続くのと、もううんざり。一対一で決め手となるパンチはめや、どんな強敵でも落とせば即死の穴や、画面上を一掃するスペシャル攻撃等、大群を効率的に処理出来る手段が欲しいですね。
 
 家庭用としてはバックアップに非対応なのが解せませんが、エクステンドとコンテニューが過剰なのは美点でしょう。面倒な裏技扱いなのはともかく、ほんの僅かなアレンジが嬉しい裏モードも魅力。実質的にはパンチはめが可能になるくらいなのに、こっちが本作の真の姿だと感じられる程の変化が起こりました。
 
  
 
■サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:SNK
・発売日:1996年11月8日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL or EXPERT)
 
  アーケードに武器格闘なるジャンルを開拓した『サムライスピリッツ』の第三作で、セガサターンへのシリーズ初移植タイトル。SNKの移植作と言えば、拡張ラムカートリッジ専用なのがお約束です。
 
 プレイに必要な技術の高度化で初心者の参入を拒みつつあった対戦格闘界において、シンプルなゲーム性が熱烈に支持を得た『サムライスピリッツ』と、少々の問題なんて何のそので人気を博した『真サムライスピリッツ』を経て、なぜだか明後日の方向に飛び去ってしまった本作。キャラクターが少なくなり、グラフィックが暗めで、キーアサインの一新に指が惑い、新システムの空中ガード&見切り&回り込みが便利過ぎ──以上の否定的な感想は、当時の共通認識でしょう。私もゲームセンターでの付き合いが非常に短く、移植度は知るよしもありません。
 キャラクターは必殺技の性質を分けた1人2タイプ制でカバー、グラフィックは真剣勝負に相応な重たい雰囲気に、キーアサインは懸案の同時押しを減らす為で、新システムは強力な攻撃の裏返し。それらの実情にセガサターンで初めて気付き、移植に当たって何かを改善したとは聞かないので、元より根は悪くないのでしょう。シリーズの特色である一撃必殺の爽快感と緊張感も健在だし、もしかして食わず嫌いだったのかも…と思いきや、その先入観の逆転は長続きしませんでした。
 
 あまりに機械的な動きしかしないCPU戦が、先陣を切って不快感を催します。相手の行動Aには有効な対策Bを必ず返すみたいなガチガチのアルゴリズムが組まれては、特定の攻略パターンを用いずに勝ち進むのは困難で、折角の多様な技とシステムをちっとも活用出来ません。次に襲い掛かるのが、必殺技の複雑怪奇なコマンド群。性能と合致しない、系統毎に纏めない、重複だらけで暴発必至、同時押しを無意味に乱用と、他に類を見ない程にぐちゃぐちゃです。導入期の無名メーカーのごとき粗を、成熟期の有名メーカーは恥じるべきでしょう。
 物語の説明を放棄したかのように勝利デモ・個別エンディング・登場人物紹介が無いに等しく、前二作の素晴らしきキャラクター性の喪失を淋しく思います。なにせ、エンディングや説明書を全部見ても、リムルルがナコルルの妹だとわからないくらいですから。また、背景に埋没したり、手前の障害物に覆われたりと、キャラクターを見辛い状況がしばしばで、超必殺技の長い演出も相俟ってタイムオーバーが頻発するのに増やせない制限時間や、色々な同時押しが必須なのに柔軟性に乏しいキーコンフィグも、プレイアビリティに影を落としました。中でも、説明書の必殺技表でボタンを小斬り・中斬り・大斬り・蹴りではなく、初期設定に準じてA・B・C・Zと記載したのが小さな大失敗で、キーアサインの変更を諦めたのは私だけではありますまい。
 
 誉れ高き『サムライスピリッツ』シリーズの新作としては、一つもファンの期待に応えられていません。しかし、絵と音の水準は折り紙付きだし、読み込みや処理落ちに悩まされもせず、生誕までの経緯を無視すれば上等でしょうか。
 
 
 
FIGHTERS MEGAMiXファイターズメガミックス
・ジャンル:3D対戦格闘 ・メーカー:セガ
・発売日:1996年12月21日
・クリア状況:全キャラクター×全コース(簡単or超難しい)
 
  『バーチャファイター2』『ファイティングバイパーズ』のオールスターキャストに、懐かしの名前から完全オリジナルまで隠れキャラを取り揃え、ゲームセンターに登場間も無い『バーチャファイター3』風のアレンジも行い、年末商戦へ不意に投じられた戦略商品。この後、セガサターン市場を牽引してきたセガ系3D対戦格闘ゲームは人気を落とし、結果として一連のAM2研作品の集大成となりました。
 
 『3』はコマンドの体系化や投げ抜けの発展こそ良かったものの、無闇な新技追加及び利用価値を喪失した大半の固有技が招く没個性と、野暮ったいポリゴンモデルを理由に相容れなかった分、『2』と『3』の合いの子状態な『メガミックス』とは存外に仲良くなれました。ゲームシステムが「バーチャ」「バイパーズ」の切り替え方式なのも、空中コンボの扱いが大幅に異なるので必然でしょう。これは質実な前者と派手な後者のイメージ通りに演出まで変化する為、普段の設定に飽きた頃の気分転換に有効なのが嬉しい副作用。以上のように自分の理想に近い完成形が、入力デバイスを問わない操作性を始めに良く整備された環境面に支えられ、プレイタイムは優に250時間を超えています。
 ただし、ゲームセンターで見知らぬ人に乱入して楽しむジャンルとの先入観から、家庭用の『バーチャファイター』『リミックス』『2』『キッズ』『バイパーズ』を一切購入しなかった自分の事情と、これらを複数買った人が珍しくない時代背景は、批評に当たり無視出来ません。当時はセガサターンの将来を担う超大作として、過去2年間に乱造された作品群から進化を求められる状況でした。そして、本作の特色として華々しく宣伝されたのこそ10人に及ぶ隠れキャラですが、既存キャラの焼き直しやら実戦に耐えられない低性能やら、過半数を占める水増しに呆れたのは私だけではありますまい。大きな期待は禁物だと、開き直る勇気が広報に必要だったのでは。
 
 ダメージの減少補正とダウン攻撃の威力加算から空中コンボに凝っても報われにくく、勝敗に拘れば浮かし技A→浮かし技B→大ダウン攻撃のように、技構成が単純になるのが解せません。ダメージ補正は無し、ダウン攻撃は威力低下の二段構えで、テクニカルな繋ぎにメリットを与えるべきでしょう。また、バーチャキャラの『3』を元にした固有技と、バイパーズキャラの過剰なコンビネーションは、使い道が無かったり甚だしく複雑なコマンドだったり、洗練させる気がちっとも窺えなくて難。他の修正希望に、倒れた相手を投げようとして失敗モーションを頻発するCPUと、両者の間合いが狭まりにくい当たり判定を挙げておきます。
 次はゲームソフトとしての短所。技表を出し惜しみするトレーニングモード、割り振られた対戦相手に偏りがある上に自作やランダムに非対応の1P用各コース、キャラクターとコースのクリア状況を記録しているのに提示しないバックアップと、随所に心遣いが足りません。あと、シュンとデュラルの飲酒量がラウンド毎に初期化するのと、レンタヒーローの電池寿命が勝ち抜き数の設定で増減しないのが、小さな見落としのようで結構痛いです。更に、コンプリートまでに最短でも288回×100秒間流れるエンディングは、小さな見落としのようで物凄く痛いです。尚、そのコンプリートのご褒美はこっそりちょっぴりで、気付くのは困難でしょう。
 
 経営側要求の無謀な開発期間を考慮すれば驚異の仕事振りだとしても、そんな都合をユーザーに慮らせてしまうこと自体がハードメーカーとして有るまじき。身内に潰された不遇のタイトルと言わざるを得ません。
 
 
 
 
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