■セガサターンソフトレビュー(アクション2)
 
●アイコン
琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■トゥームレイダース
・ジャンル:3Dアクション ・メーカー:ビクター インタラクティブ ソフトウエア/コアデザイン
・発売日:1997年1月24日
・クリア状況:2周目クリア/全シークレット
 
  海外パソコンゲームの日本語化移植で、女性冒険家の遺跡探索をポリゴンで大胆に見せ付けます。
 
 フィールドを狭くする・仕切りで視界を遮断する・遠方の物体を省く・途中でデータを読み込むような妥協を用いず、大自然や建造物がそびえ立つ巨大な箱庭を三次元に構築しており、セガサターンでは快挙でしょう。遺跡へのトリップを誘うべく、全15ステージのグラフィックは全て異なったテーマで執拗に描き込まれ、処理落ちもありません。これによって与えられるのは強烈な臨場感で、絶壁から今までの経路を見下ろしたり、空中の小さな足場を渡ったりする際、本当に背筋の寒さを生じました。真に高所恐怖症の人は要注意ですね。
 攻略の要となるジャンプは、所定の手順で操作すれば最良の踏み切りをしてくれる親切設計。パッドの全ボタンに加えてスライド押しの使い分けが必須となる複雑な操作方法も、チュートリアルの修了=エンディングに到達可能と捉えて大丈夫なくらい、序盤と終盤で要求されるテクニックは変わりません。更に、戦闘は安全圏から自動照準で掃討出来る局面が大半で、つまりはアクション性が意外に低いです。また、謎解き要素は通路やスイッチの発見が主で、パズル性も以下同文でした。それなのに難易度を判定すれば、凶悪となるのが恐ろしや。
 
 一つの操作ミスで即死、目測の誤りで即死、予見不能なトラップで即死、敵の不意打ちで即死と、試行錯誤が大前提にも拘らず、全長60分と長丁場の1ステージ内に数個しか無い復活ポイントが根源です。即死→長い読み込み→5分前から再開→即死の循環に陥った時の怒りは筆舌に尽くし難く、何度もトレースを求められて冷静さを失い、前は生き残れた場所で今度は死んでしまう愚行も頻発し、精神衛生に悪影響を及ぼす辛さでした。復活ポイントは一回限りの消耗品で強制上書き保存と言う珍しい制限もあり、行き来の激しいステージでは気軽な使用すら許されません。
 プレイアビリティの難は全体に蔓延。まず、マップデザインはデジタル的な8方位が基調なのに、自機の向きをアナログ的に処理するのが解せません。意図した方角への正対が容易ではなく、北へ向いたつもりが北微東になっていて即死の危険が付き纏いますから。アイテム拾得やスイッチ起動の有効範囲が非常に小さい、対象物の端にいるとそれに対して行動が取れない、リアルなモーションの反動で何をするにしても鈍い、カメラのアングルが安定しない──このように内なる敵がわんさかで、酷い時にはアイテムを拾うだけでストレスを感じた程であり、本作は我慢強くいられなければ楽しめないでしょう。
 
 幾度か体験した数時間級のハマリにおいて様々な解決策を模索したのに、どれも単なる通路等の見落としだったのは苦笑い。ポリゴンのコリジョンが管理不足なのか、すり抜けやワープのような非正規の解法に限って見付かったのが、この喜劇に拍車を掛けます。
 
 
 
■重装機兵レイノス2
・ジャンル:2Dアクションシューティング ・メーカー:メサイヤ
・発売日:1997年2月21日
・クリア状況:エンディング/全機体
 
  1990年にメガドライブで誕生し、他機種への出稼ぎを経てセガハードに舞い戻った、前作をやり込んだ自分にとって待望の一作。多彩な武装で敵を撃破していくサイドビューのロボットアクションに、クリア条件と通信による演出を盛り込ませたのがシリーズの伝統です。
 
 ポリゴンで3D化みたく安易な発想に走らず、ゲームシステムを踏襲しつつ時代相応の進化を見せようとした企画には賛同します。照準及び難易度が自動調整される辺り、前作がとかくマニアックと評された反省が込められており、制作姿勢も間違っていません。しかし、好評を支えた演出面を引き継がずに『重装機兵レイノス』を名乗るのは、購入者への裏切りに等しいです。
 ドラマチックで感情移入度満点なシナリオを平坦かつ無感動にし、ステージが実質的に3つ減って総プレイ時間も短縮なんて、発売スケジュールにタイトルを連ねてから世に出るまでの数年間は何だったのでしょう。取り分け許せないのが、目を見張らせるアニメ処理で構成されていた極上のオープニングとエンディングが、甚だしく退化したこと。前者は2バージョンあっても内容は空虚で、後者は十数行のテキストで終了と、CD-ROMが4MROMカートリッジに完敗とは情けない。
 
 個人的な期待を抜きにしても、評価は横這いです。複数の自機及び雰囲気優先のデバイスまで並ぶ充実の武装に、どこを触れば良いのが迷う程に項目が多い機体セッティングは、前作に無いカスタマイズの魅力を匂わせるものの、実態は活用の場が訪れない見掛け倒し。なにせ、武器は火炎放射とレーザーだけで事足り、10分掛けて設定してもステージは2分で終わりますから。初見では感心した武器の射程に応じて拡縮する画面の視野とて、攻防の足枷でしかないのが歴然で本末転倒。あと、2周目に入ると装備が支給されなくなるのは、本当に仕様でしょうか。1周目で粘ろうにもステージセレクトは不可で、迂闊に次のステージに進むと取り返しが付かないのに。
 前作においてゆっくりだった敵の弾速を超高速に変えたのは、目前の弾幕から接触すべき弾と回避すべき弾を判別するダメージコントロールが攻略の要になっていたのを踏まえれば、失敗としか思えません。絶対に避けられない攻撃が増えたにも拘らず難度は大幅に下がっており、従来のゲーム性は一気に損なわれてしまいました。尚、今作は巷に蔓延る「1面もクリア出来ない」との感想から前作譲りの高難易度だと思われがちですが、正確には最初だけ極端に難しくて以降は最後まで相当温く、駄目な調整の見本だと言えましょう。
 
 武器の弾数制限の緩和と、パッドの全ボタンを有効にしつつ自在に設定可能な操作環境は歓迎なので、続編よりも前作のリメイクに挑んでもらいたかったですね。
 
 
 
ADVANCED V.G.アドヴァンスト ヴァリアブル・ジオ
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:TGL(テイジイエル)
・発売日:1997年3月14日
・クリア状況:全エンディング(■×1&■×8/ストーリー=■×8)
      ※レイミは1種類のみ?
 
  美少女9人が最強のウェイトレスの座を争う、キャラクターの魅力を前面に打ち出した対戦格闘アクションで、スーパーファミコンやプレイステーションでも発売済のシリーズながらパソコンのアダルトソフトが源流故、ほんの少しだけ脱衣付。主人公のみストーリーモードあり。
 
 企画を踏まえれば、春麗やナコルルのようなプレイヤーを見初めさせるドット絵が必須なのに、素人のペープサートにしか見えない画面で眩暈を覚えました。彩色が地味とか、立体感が無いとか、ポーズが不格好とか、モーションがカクカクとか、言葉が追い付きません。そんな開発陣の美術センスは背景・フォント・エフェクト・レイアウトでも爆発し、粗製乱造期を経た当ジャンルでも本作以下のグラフィックは発掘困難でしょう。これに輪を掛けて酷いのがCPUのアルゴリズムで、大キックの連打だけでクリア可能な程におつむが空っぽな上、難易度を変更しても攻撃力と防御力を含めて変化無し。新参メーカーのデビュー作ならまだしも、様々な家庭用ハードに移植してきた既作を生みの親が2D対戦格闘の得意なセガサターンに持ってきて、この有り様ですか。
 超必殺技のコマンドに正当性が乏しく、方向キーの入力受付が残り過ぎ、ボタンの同時押しをコンフィグ出来ない為、レスポンスを除いた操作感覚は不合格。鮮明な音声の反動か、効果音はへなちょこどころか頻繁に鳴らない。まずまずの読み込み速度は、スキップ及びカットを不能なシーンの大量挿入で帳消し。コンテニューは無限だが、そのキャラクター選択画面でBボタンを押したら1人目からやり直しに。ストーリーモードのオートセーブは親切なようで、なぜか一戦前に戻される。ジグソーパズル付で大きな初回限定版のパッケージが豪勢なものの、説明書は必殺技すらまともに記載していない。美点を見付けたら欠点に隠されの連発で、なかなか見直すことが出来ませんね。
 
 非常に気になるのが、ノーマルモードの個別エンディングの分岐条件。他機種版なら通常は「将来」で高難易度だと「賞金の使い道」らしいのに、難易度8で前者かと思えば難易度1で後者な時もあり、コンプリートした今でも規則性が掴めません。スコアやストレート勝ちを絡めても同様でしたし、前述のCPUを併せて難易度変更にバグが疑われます。
 
 最後に良かった探しを。ゲームシステムは『ストリートファイターII』のフォーマットから逸脱していないので、あまりに低次元なのを許容すれば遊べない訳ではありません。あと、ストーリーモードのビジュアルシーンは質・量・内容の三拍子が揃い、一見の価値ありでしょう。
 
 
 
■メタルスラッグ
・ジャンル:2Dアクションシューティング ・メーカー:SNK
・発売日:1997年4月4日
・クリア状況:エンディング(HARD・ノーコンテニュー)2人用エンディング
       990pts(コンバットスクール)
 
  軍用銃を撃ったり、手榴弾を投げたり、戦車に乗ったり、捕虜を救出したりしながら、血なまぐさい戦場を右へ右へとスクロール。ネオジオからの移植で拡張ラムカートリッジ専用です。
 
 ゲームデザインはインストカード1枚で済みそうな程に古典的で、ボリュームも1周30分の全6ステージと短い反面、撃ちまくりながら突進→慎重に弾を回避して中ボスを撃破→戦車で強行突破→ゆっくりとアイテムを回収→手榴弾連打で大ボスを瞬殺と、全体の減り張りが心証を支えます。銃弾と兵士がうじゃうじゃな画面は難しそうに見えて、実際にはパターン性とアドリブ性の匙加減が功を奏し、上達の度合いが即結果へ繋がるのに作業っぽくはなりにくい適切なバランス。一発死かつエクステンド無しの非情なルールも、乗れば無敵に近い戦車が頻繁に置いてあり、案外平気でした。また、実力でタイムをかなり縮められるようにステージが構築され、リプレイ性の高さも魅力ですね。
 そして何より、グラフィックを誉めなきゃ始まりません。3頭身のキャラクターがきびきびと滑稽に動きつつ、その多様な死に様は非常に残酷だとか、スプライトとバックグラウンドが緻密に描き込まれ、更に自弾の撃ち込みで次々に部品や建物が吹き飛んで爽快だとかで、本能的な破壊欲を健全に満たしてくれます。どんなに見た目が優れていても、そこにプレイヤーの介入を許さないのであればお飾りに過ぎず、眺めて楽しく触れても楽しい映像は貴重でしょう。
 
 タイムアタックに特化した家庭用オリジナルの「コンバットスクール」は、ステージの内容に変化は無いものの、女性教官と言う遊び心の付加が嬉しさ満点。当初は一生徒扱いで冷淡な彼女が、戦績=評価点=階級の上昇に応じて従順な可愛らしさを発揮してゆき、本編とは別種の頑張り甲斐がありました。会話の切り替えが3段階しかなくて態度の移り変わりが急なのは否めませんけど、記録更新が目的のプレイは孤独に陥りがちなので、モチベーションの刺激策は存在自体がありがたいです。
 ただし、当モード内の「サバイバル」は好きになれません。残機0+戦車無し+全ステージクリアが目標なんて、一発死とアドリブ性が同居する下では、知識・判断力・集中力・運が同時に揃わねば無理難題ですから。挑戦中には苦しさだけしか味わえず、どうにかこうにかゴールへ辿り着けた時の心情は、達成感ではなく解放感でした。
 
 小さな指摘を纏めて。斜めに固定不可能な照準と、任意で下りられない足場は、類似作では標準装備だけに早々と気になりました。兵器の乗降車や近接攻撃に誤作動を誘う癖があり、自責でない死亡事故を引き起こします。他に、役立たずを超えて邪魔なキャノン砲、攻略及びハイスコアに影響大なアイテムのランダム出現、ソフトとハードの両方に非対応な連射、杜撰な説明書を何とかして欲しいなと。
 
 アーケード版を知らない私でも良作だと思えますが、「コンバットスクール」で最上位の階級になれない=会話と裏技の一部が死蔵されてしまう痛いバグがあり、手放しにお勧めは出来ません。
 
 
 
■わくわく7
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:サン電子
・発売日:1997年6月20日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL or LIMITTER CUT)
 
  「明るく、楽しく、元気に格闘!」をコンセプトにしたネオジオのアーケードゲームが、拡張ラムカートリッジ専用でセガサターンへ。タイトルの由来はカタカナ表記時の誤植誘発もあるとか。尚、原作未経験者です。
 
 ゲームシステムは定番の4ボタン制に、ES技・EX技・ガード不能技・メガクラッシュ&ガードキャンセル・パワーアップ・中段・吹っ飛ばし・追い打ち・起き上がり攻撃・受け身と、既存の素材のごった煮です。しかし、コマンドへの配慮で要らぬ負担を排しており、人当たりは悪くありません。移植でネックになりがちな操作性も合格で、元来の軽快なレスポンスに同時押しへの完璧なフォローが加わった家庭用は、ゲームセンターより動かし易いかも。内容に目を移せば、キャンセル可能な技が稀少で連続技が入りにくく、マニアックな解析に走らなければ奥深さを感じられないものの、CPU戦の低難易度を絡めて前述のコンセプトと整合性が取れており、誰でも等しく遊べる作りを敢えて狙ったのでしょうね。
 本作で特徴的なのがキャラクター。獣耳の快活な女子中学生やら、奥ゆかしいメイドのガイノイドやら、女児を背負った巨大ペペログゥもどきやら、およそ格闘ゲームに似合わない和やかな面子が集合します。人物設定を突飛にしただけではなく、皆のグラフィックへの注力振りが勲章授与もので、縁取りせずに柔らかな配色で象ったドット絵と、髪の先から服の裾まで凝りに凝ったモーションは、止まって良し動いて良しの極上品。中でも、アリーナの垂直ジャンプ・ティセの立ち姿・まるるんの勝利ポーズ1本目は、小さな感動を覚えました。ただ、イラストやアイキャッチは結構濃いタッチで、作品として統一感が無いのは玉にキズです。
 
 ラウンド毎や試合前後の会話ですら暗転を伴って発生する読み込みと、慢性的な酷い処理落ちが二大欠点。前者はオプションの設定変更で、後者は緩和機能のアクティブターボで補えるとは言え、強引な完全移植でオーバースペックを招いてはいけません。また、アクティブターボの他にゲームスピードを3種類から選べるターボモードが、その重要性に相反して裏技扱いなのはちぐはぐ。入力の仕組みに難があったり、雑誌掲載の解説を読まないと効果の違いが理解しにくかったり、納期前に急遽付けて調整が行き届かなかったのでしょうか。あとは、非常に激しいフラッシュが数十秒も続くデモと、超圧倒的性能差でプレイヤーを蹂躙するラスボスと、奇抜過ぎて意図を掴めない得点ルールに疑問符を。
 
 プレイヤーとギャラリーが一緒にわくわく出来る程の素敵なグラフィックは、ハードウェアの限界を超えて無理に再現した印象を受け、肯定派の自分も賛否分かれる評判は頷けます。
 
 
 
■ウィリーウォンバット
・ジャンル:クォータービューアクション ・メーカー:ハドソン/WESTONE
・発売日:1997年6月27日
・クリア状況:Perfect 100%
 ⇒攻略ページ
 
  松下進が手掛けた擬人化動物のキャラクターと、自在に回転可能なポリゴンのフィールドが特徴のジャンプアクションで、永遠の命が保証された管理社会からの逃避行を全編英語で演じるシリアスな物語も見所。
 
 穴落ちをジャンプで回避し、敵をブーメランでやっつけ、行く先に迷っては頭を捻り、隠れたアイテムを探していく内に、謎に包まれたストーリーが明かされ、最後に達成率100%を目指して再度の探索に向かう──これが本作の全貌で、時代にそぐわない質実な設計が取っ付きにくい雰囲気を醸す反面、ゲームシステムに問題を孕まないので誰でも気持ち良く遊べるでしょう。一面毎のセーブに対応し、クリア済ステージへの往来が自由で、ジャンプを失敗しても即死せず、パズル性は簡単ですから。エンディングまで長丁場なのにプレイ内容と難易度の変化に乏しいのも、洋画を気取ったようなアイキャッチと会話デモがスパイスに効いており、不満に繋がりませんね。
 スプライトのキャラクターをポリゴンのフィールドに乗せる方式は半年後発売の『グランディア』と同様で、そのグラフィックは『ウィリーウォンバット』の大敗に終わりますが、アクションに大切な処理速度を優先しての結果でしょう。また、マップデザインにきちんとフィールドを回す意味を持たせており、この点ではゲーム性に貢献させていない後輩より上位です。つまり、そこかしこで立ち止まっては画面をくるくるが終始必要で、人によっては面倒だと捉えるかもしれませんけど。
 
 探索の動機付けのはずだったセーブシステムが形骸化し、達成率に関連するご褒美も見当たらない為、最短距離のステージクリアに注力してしまいがち。ダッシュが実用性に欠けるのと、ブーメランの攻撃判定が軌跡の帰りに消えるのが、操作面で煩わしい。そんな小さい短所は残れど、大作主義に惑わされず手堅く合格点を狙いながらも没個性に陥っていない、セルフコントロールに成功した佳作です。
 
 
 
■マーヴル・スーパーヒーローズ
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:カプコン
・発売日:1997年8月8日
・クリア状況:全エンディング(★×4or★×8)
 
  『X-MEN CHILDREN OF THE ATOM』の続編で、アメコミヒーローが『ストリートファイターII』形式で戦う2年前のアーケード作品を、拡張ラムカートリッジに対応で移植。空中に吹き飛ばした敵への連続技「エリアルレイブ」と、6種類のパワーアップ「ジェムアビリティー」が特徴です。
 
 アメコミや前作に興味無しで、本作もゲームセンターで未プレイな境遇で初起動を迎えても、表面を楽しみたいだけなら戸惑わせない人当たりの柔らかさが花丸です。オーソドックスなカプコン格闘をベースに、必殺技等のコマンドを徹底的に整理したのが理由でしょう。それでいて版権を借りただけの焼き直しに収まらず、経験を蓄積してゆけば独自の深みに触れられて、豪快な外観とは裏腹に緻密な設計が窺えました。
 拡張ラムの効力は抜群で、アメリカでは有名らしいキャラクターたちが大きな全身をこれ見よがしと動かし、画面中を所狭しと暴れ回って存在感を強烈に誇示してきます。皆が違った魅力を容姿と性能で放ちつつ、操作は同じように可能な親切さもポイント。そんな出色の表現力が、彼らをパッドを通じて操れること自体に面白みを感じさせ、これが端でアメコミに惹かれても不思議ではありません。尚、ユーザーレビューで非難集中の処理落ちは、超初心者なせいか気付けないですね。
 
 CPU戦の難易度は、多段の連続技を叩き込む快楽を重視した作風に合わせて控え目かつ、決して棒立ちでもなくて油断すれば痛い目に遭う、適切なバランス。ただ、★×8と★×4に大きな差異が生じず、易し過ぎかも。完全移植+諸々が当然の時期に1P・VSしか備えないモードや、相変わらずなハイスコアへの不配慮も含め、全てのエンディングを見た時点で継続意欲が途端に削がれてしまいました。
 
 主観では高評価を下せますが、やり込みの少なさが処理落ちと難易度への不満を打ち消したことが、最大の要因でしょう。
 
 
 
■シルエットミラージュ
・ジャンル:2Dアクションシューティング ・メーカー:トレジャー/ESP
・発売日:1997年9月11日
・クリア状況:全エンディング&全ルート
       (VERY HARD+ノーコンテニュー+パラサイト6才不使用)
 
  メガドライブ『ガンスターヒーローズ』『エイリアンソルジャー』の遺伝子を受け継ぎつつ、自機の向きに対応する二つの属性を新要素に盛り込んだ、ゲーマー御用達なデベロッパーの初自社ブランド作品。
 
 赤と青で固有に色分けされた敵に対し、赤い右半身と青い左半身を併せ持つ自機で、任意の横スクロール画面を戦ってゆきます。異なる色なら体力ゲージが、同じ色なら攻撃力ゲージが被弾で減り、同色の弾はバリアで跳ね返せるのが双方に共通のルールで、更に7種類の武器・四方への投げ・多彩な移動手段と、アイテムの購入に必要なお金稼ぎ用の動作付。そして、トレジャーらしいボス戦重視の姿勢により、奇抜な発想が炸裂した可笑しくも恐ろしき仕掛けに1ステージで何度も対処しなければなりません。自動照準が標準装備かつ、属性を考慮せずに乱射してもデメリットが基本的に無いとは言え、初心者お断りの気配がぎゅんぎゅんします。
 しかし、予測に反して2プレイ目でエンディングに達してしまい、何だかな。文字通りに右も左もわからないまま、レーザーと三段ジャンプしか使っていないのに、トレジャーらしからぬ奥の浅さにがっかりです。やがて、スコア・タイム・評価の類が一切備わらないわ、難易度変更は裏技扱いで変化も微細だわ、大半の演出シーンがスキップに非対応だわと、16ビット機以下のリプレイ性に失望。私がテストプレイヤーならば、単純作業に従事せねば貯まらないお金、伏せ・伏せダッシュ・スライディング・回り込み・属性チェンジ・ボムの低い利用価値、誤操作を誘発しがちなキーアサインにも駄目を出しました。あと、初っ端からお金の無限増殖及び最強武器の購入が可能なのは、正攻法で攻略したいプレイヤーの心理を不粋に汚しています。
 
 以上の悪印象に負けないでやり込めば、意外に重要な武器の使い分けや、瞬殺狙いと安全勝ち狙いで戦術が変わるボス戦に気付け、アイテムの購入を最低限にしてお金稼ぎへの不満も解消。また、ハロウィンを基調にしたキャラクターの意匠は魅力が高く、細部までゲームデザインと合致した見目形な主人公のシャイナは、特筆すべき憎いセンスです。キュートでシュールな登場人物が、コミカルでシニカルな会話を交えて織り成す物語も、過酷な使命を明るいノリで踏み越えてゆくシャイナに心を重ねられ、花丸でした。
 
 それでも前述のリプレイ性は払拭出来ず、異質なゲームデザインを活かす下地作りに失敗したと言わざるを得ません。難易度変更の効果が著しい『ガンスターヒーローズ』と、全動作を駆使したタイムアタックが熱い『エイリアンソルジャー』を、素直に見習って欲しいですね。
 
 
 
■全日本プロレス FEATURING VIRTUA
・ジャンル:3D対戦格闘 ・メーカー:セガ
・発売日:1997年10月23日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL or HARD)/殿堂入り(フィーチャリング)
 
  全日本プロレスからジャイアント馬場・三沢光晴・小橋健太ら10人+1人が、『バーチャファイター』からウルフとジェフリーが参戦する、セガにしか実現不可能なプロレスゲーム。三冠ベルトを目指す「1Pモード」の他、架空レスラーを育成する「フィーチャリングモード」も備えます。アーケードへの逆移植に、ドリームキャストではシリーズ化もされました。
 
 選手の背格好と動作を見事に再現した上で、リングアナから実況まで小さな積み重ねも怠らず、全日本プロレスの空間を高次元で構築した努力を最初に認めたいです。2本目のオープニングムービーを見るに、あのジャイアント馬場までモーションキャプチャーに参加しており、テレビ中継で時折触れる程度の自分には制作側のプロレス愛を疑えません。ラッシャー木村のマイクパフォーマンスあり、シリーズ終了毎に東京スポーツの紙面あり、客席からの京平コールや声援ありで、凝りに凝った演出も好感触。そんな映像面と小道具でプレイヤーを高揚させてくれる反動から、選手の音声の貧弱さが際立ってしまうのはご愛敬でしょう。
 観客を盛り上げればメリットが得られる人気ポイント、敵の技を受けて自分の大技に繋げる闘気ゲージ、特定部位を痛め付けると体力に無関係で勝利のレフリーストップとギブアップ等、この題材ならではの豊富なルールは良い味付けになっています。中でもフォールは、相応の技でフィニッシュしないと抑え込めませんし、カウント3に近付けて返す程に増える体力回復量と、闘気ゲージが100%なら半分消費で確実に返せる仕組みも有効と言えましょう。リングが狭くてロープブレイクが頻発し、フォールに手こずりがちなのは頂けませんけど。
 
 ゲームシステムは『バーチャファイター』に少し似ており、特定の順番でボタンを押せば技が次々に出るお手軽仕様に、打撃→投げ→掴みの3すくみと1ボタンないし連打による返し技で成り立ちますが、煮詰まってはいません。打撃は闘気ゲージを無闇に上げ、投げの大半は使いものにならず、掴みが圧倒的に優位なのです。更に突き詰めれば場外での鉄柱攻撃が全要素に優れており、試合を破壊されるのが致命傷。反撃の入力タイミングが常に一定な為、見慣れた技は食らう確率が非常に小さくなる代わりに、そうでなければ返すのが困難な極端さは対人戦を敬遠させる元凶で、同じ技の連発は威力が低下するか反撃が容易になるような工夫が欲しいですね。
 「1P」では高難度時のCPUが鬼の抵抗力を発揮し、体力0の相手に32文ロケット砲からのフォールを返されて唖然としましたが、これを凌駕するのが「フィーチャリング」です。恐ろしく手強いCPUに、恐ろしくか弱いキャラクターで挑まなければならず、おまけに反撃タイミングを知らせるリバーサルマークが一切表示されません。普通の育成モードとは負けても少しずつ強くなっていくものなのに、ここでは特定のシリーズで勝たないと全く成長しなくて、この苦しみの打破には卑怯な手段が必須でしょう。決まった年月が過ぎないと絶対にエンディングを迎えられない為、打破出来たら出来たで単調な試合を何百戦とこなさねばならないのも不粋。取り合えず、高年齢から始めて負傷欠場を絡めれば、幾分は紛らわせます。
 
 最後に、悪い意味で書き逃せないのが読み込み時間。実況をオフにしても短縮されず、余計な画面を省略する設定も無く、本作との継続的な関係には忍耐力が試されます。
 
 
 
SONIC RソニックR
・ジャンル:3Dアクション ・メーカー:セガ/トラベラーズ・テールズ
・発売日:1997年12月4日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL or HARD)
 
  『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を題材にした、レース色の強いポリゴン使用のアクションで、ゲームデザイン以外は海外の制作。
 
 ゲームギア『ソニックドリフト』ではサーキットをマシンに乗って走行していましたが、こちらは箱庭内を参加者の大半が自走するので、レースよりも障害物競争の感覚です。近道探しとフラグ立てに寄り道を推奨し、駆け引きや妨害行為は重要視されない、題材の作風に合致させた味付けが個性を際立たせます。ドット絵の魅力を損なわずに三次元化されたキャラクターたちの造形も相俟って、コーナリングと同期してパッドを傾けたり、最高速からの急停止で力いっぱいにボタンを押したりと、ソニックファミリーとの縁があれば大きな一体感を得られるでしょう。
 グラフィックの質がセガサターンで最高峰なのは、誰も異論を挟めないのでは。鋭い真昼の太陽から柔らかな宇宙の星々に至るまで、鮮やかに景色を彩る光線が中でも印象的です。美術性と視認性を両立させた趣味の良い色彩かつ、ループや立体交差や高層建造物が惜しげも無く配置された複雑な構造でありながら、まるで目立たないポリコン欠けと処理落ちには驚嘆。BGMも英詞による女性ヴォーカル曲が終始流れ、作品全体を贅沢の二文字が包んでいます。
 
 そんな楽しげな雰囲気を裏切るのが、じゃじゃ馬な操縦性能。直進出来ない・曲がれない・止まれないの三重苦で、コースを進行方向に従って歩くのも手を焼きます。それを開発側も自覚してかCPU戦の難易度が緩く、上を下への大騒ぎ状態な初プレイでも5コース中3コースで1位になってしまいました。この難点は全能力が突出したスーパーソニックの出現で解消してくれて、方向ボタンとLRボタンを駆使すれば急勾配のバンクを超音速でグイグイと曲がってくれる彼の雄姿に、思わずうっとり。隠しキャラの使用条件がエンディングへの行程と関連しない為、未体験のまま評価を決定付けた人が多そうですけど。
 最終コースを選んで1位でゴールすればエンディングに直行で、キャラクターとコース毎の成績がチェックされず、隠しキャラを揃えるのも容易と、メインの「グランプリモード」は底が浅くて残念。全コースを通じて獲得ポイントを争う形式ならば、やり甲斐も増したのに。マルチエンディングと言っても、たった1枚のCGの人物部分が置き換わるだけだし。ゲーム内でエピローグを描かないから、説明書のプロローグが宙に浮いています。
 
 やがて、プレイの場は「タイムアタックモード」に移りますが、この仕様がよろしくありません。3周で絶対に終了させられ、タイムの更新幅が知れず、ランキングの記録がトップタイムだけと、チェックポイント制と鬼ごっこを用意した反動なのか手を抜き過ぎ。重ねて、本作は蔑ろな部分が目に付くのです。当たり判定が小さく、狭い直線通路の中央に静止した物体にすら触るのは困難。コースレイアウトの現在位置表示で、自分を判別しにくい。途中順位が意味不明な局面で入れ替わり、逆走警告の基準も曖昧。選択画面で未入力でいると、僅か15秒でタイトルに戻る。リトライで長い読み込みが発生するなんて、問答無用だとしか。
 
 外見が非常に綺麗な分、付き合い続けたい気持ちを阻害する内面が余計に惜しまれます。
 
 
 
■バーニングレンジャー
・ジャンル:3Dアクション ・メーカー:セガ
・発売日:1998年2月26日
・クリア状況:全リザルトS/全メール
 ⇒攻略ページ
 
  『NiGHTS(ナイツ) into dreams...』に続く、ソニックチームのオリジナル作品。ポリゴンで描かれた近未来の災害現場を舞台に、特殊消防レスキュー隊の一員となり、逃げ遅れた人々を救助していきます。ボタン一つで音声によるナビゲーションが入ったり、助け出した人から感謝のメールが届けられて隠し要素の充実に繋がったり、新機軸が豊富です。
 
 操作性向上にアナログ入力、穴落ち抑止にオートジャンプ、迷子防止に音声ナビゲーション、全4ミッションの少なさにジェネレート機能、リプレイの動機付けにメール収集、マップレイアウトと隠し要素にパスワード。以上の様々なシステムの全てが不満材料なのは、発売日の3ヶ月後がドリームキャストの発表だった時勢があるのかもしれません。突貫工事で体裁を整えるのが精一杯だったのか、明白に調整不足なのです。
 
 慣れで克服出来ない劣悪な操作環境は、弁護のしようがありません。直線的な進路及び落下と紙一重の細い足場が多い為、不安定なアナログ入力は敵にしかならず、障害物上や落差の境目を歩くだけで暴発するオートジャンプは、意図しない穴落ちを誘ってばかりなのにオフにさせてくれず激怒もの。視点移動は自分勝手な意志を持ち、普段は緩慢なのに時に大暴れします。オブジェの凝り様と妥協無き描き込みの反作用で画面がごちゃごちゃしており、特にボス戦の見辛さには誰もが参るでしょう。
 売りのナビゲーションとジェネレート機能も、完成度低し。前者はストーリーの盛り上げ役としては働くものの、道に迷って任意で聞いても突き返されることが大半で頼りになりません。例え「貴方の後ろのドアよ」「右斜め前に進んで」と明確に指示されても方角の基準が不明瞭で、画面に矢印を出すか視点を強制修正して欲しいです。マップレイアウトの変化を謳う後者は隔壁の開閉により行動範囲を制限するだけで、新鮮なルートは稀。ナビゲーションがジェネレート機能に錯乱され、日常茶飯事に「そのまま真っ直ぐ→行き止まり」「近くに生命反応!→無人」と矛盾した命令が飛ぶのも頂けません。裏技でしか聞けない大量の音声と、絶対に通れない幾つかのドアを、開発者からの無言のメッセージと受け取りました。
 
 最悪の不満として君臨するのが、やり込み要素のコンプリートに想像を絶する手間を求めながら、当然の配慮が欠如していること。操作不能のイベントシーンが一切飛ばせないのは有り得ない失態で、試しの計測ではミッション2の開始からリザルト表示までの35分中11分が該当しました。コンプリートまでに1ミッション当たり100回はクリアしたと思われますし、何の制限も科さずに移動するだけの長いチャプターで間延びしがちなステージ構成も、これに複合した難点です。更には要救助者とメールの出現率がランダムで通される為、完全に時間の無駄と化すプレイが自ずと増えていき、著しく分の悪い賭けを膨大な時間で捩じ伏せねばならないのには恐れ入りました。パスワードに要救助者の名前を対応させておけば負担は減るものの、気付いた頃には手遅れの人が大多数では。
 攻略本や裏技のフォローが無いのも、痛い追い打ちでした。メールは一人ずつの枚数をゲーム内に提示して然るべきなのに、現実は紙媒体の記事で総数を公開したのみ。ソフトバンク刊のオフィシャルガイドには一部記載されており、自分は幸運にも最後の1通がそれに該当しましたけど、未記載分なら全ミッションを闇雲に渡り歩くしかなかった訳で。
 
 細部の仕事振りもお役所的。新着以外のメールを複数の人物に跨って読みたくても、開封後は人物選択まで戻らねばならず、読み込みで待たされます。特定のジェネレートと各種裏技を呼び出すのに必須のパスワードは、使用の度に自力で入力せねばなりません。同階層の別ページに直接移動出来るのも、アンロックがバックアップに保存されるのも当然な時代に、ハードメーカーの有名開発チームがやっちゃいけない失敗です。
 物語が明後日の方向に展開し、得体の知れないモンスターが出現する終盤を代表に、設定に統一感と説得力が欠けるのも不十分な作り込みの弊害でしょう。災害現場に落ちているクリスタルがプレイヤーのシールドとなり、要救助者を安全な場所へ瞬時にテレポートが可能なんて、近未来の技術よりファンタジーの魔法に近く、現場の各所に設置された消防用装置からシールドのエネルギーを補給しつつ、見付けた人々を脱出装置まで誘導とすれば無難でした。ミッション内では、目前の炎や救助者を適度に見逃した方が危険レベルが上昇しにくいのと、救助の成功率に関わらずボスさえ倒せば大団円になるのが、納得しにくいですね。
 
 本作の絵柄と台詞回しは支持派が主流ながら、幅広い層に受け入れられた『NiGHTS』のイメージから掛け離れており、意見は割れ気味。これを「格好良い」や「熱い」と捉えると否定的評価が弱まったのであれば、どうしても生理的に合わないのは自分にとって非運でした。
 
 
 
■ヴァンパイアセイヴァー
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:カプコン
・発売日:1998年4月16日
・クリア状況:全エンディング(★×2 or ★×8)
 
  同名業務用作品+マイナーチェンジ版の一部+オリジナル要素で構成される、公称セガサターンスペシャルバージョン。拡張ラムカートリッジ4MB専用の効力により、グラフィックパターンの間引きと読み込み時の暗転から解放され、前作から確かな進化を遂げました。
 
 移り変わりの激しいゲームセンターで長期間稼働した『ハンター』の続編だけに、登場から相当な盛り上がりを見せた『セイヴァー』ですが、その人気は早々と急降下。外見・設定・性能の三拍子揃って魅力的な4人の新キャラクターは使用率が高く、同ジャンルのお約束を覆すゲームシステムの導入も手伝って、プレイ感覚は新鮮だったにも拘らずです。僅か3ヶ月で投入されたマイナーチェンジ版も、内容以前に『セイヴァー2』『ハンター2』の前例無き分割リリースが不可解で、失地回復どころかプレイヤーとオペレーターを困惑させるだけでした。
 
 初速を保てなかった原因の一つが、前作の長所を受け継がず上級者向けに特化したこと。攻め手贔屓のバランスを代表に、スピードアップと厳格になった入力判定が操作ミスを誘発し、カードキャンセルと移動起き上がりの弱体化から新防御手段の修得が必須とは、オートガードで初心者の呼び込みに努めてきたカプコンらしからぬ人当たりです。特にラウンド制の実質廃止は、先取された側への救済策が無い為に実力差とボーンヘッドを過大に反映しており、一度は対等な状態から仕切り直せる標準ルールの優秀さを知れました。エンディングまでの所要時間短縮と、乱入側の勝利でCPU戦が1人目から始まる仕組みが改められた、インカムへの偏重も遠因でしょう。
 次に挙げたいのが、数々の調整が軽率なこと。シェルキック・サンドスプラッシュ・ビックスノー等の特徴的な技を削除したのは、キャラクターの姿と戦術を愛するファンに酷なだけでなく、対象必殺技を入れ換えてまでコマンドを統一したガードキャンセルと共に、各々の個性を殺す逆効果を生んでいます。必殺技コマンドの大掛かりな変更が却って暴発促進と労力増加をもたらしたり、使い勝手が悪い技や下位キャラを支える貴重な特殊能力まで一緒くたに弱めたり、コンボボーナスを改悪して得点稼ぎの意欲を削いだりと、総じて開発者の判断に妥当性を感じられないのです。
 
 そして、アーケードからセガサターンへ場を移して尚、前作を懐かしませる中身には落胆でした。ESビーストキャノンを全段ヒットさせるガロン、ジャンプ強キックをガードさせて吸い込んでくるサスカッチ、空中チェーンコンボ4発から着地にEX技を仕込むバレッタ…そんな凄まじい攻めを8段階中下から2番目の初期設定で行う、CPUのアルゴリズムが最初の失望。コンボ・中段・投げ・ガード不能技のオンパレードと超反応型の性質を合わせ持つのに、隠れキャラの使用条件はコンテニュー禁止で1本も取られずに7人勝ち抜く+αの厳しさで、もうえらいこっちゃ。カプコンの対戦格闘ゲームは移植の度に難易度への苦言を寄せられており、『ハンター』の★×8よりも『セイヴァー』の★×2を難しくした意図がわかりません。
 続いての衝撃がプレイ環境の大幅劣化。LRボタンのコンフィグ不可はボタン同時押しを多用する本作では死活問題で、メガドライブ『スーパーストリートファイターII』より採用の同時押し数削減すら無し。選択とデモの省略は継承せず、新要素の会話シーンはスキップを許さずで、実は全てのショートカットをオンにした『ハンター』と非プレイ時間が同等とは、拡張ラムの恩恵を自ら損ったのだから笑えません。セガサターン本体の欠陥からカートリッジスロットを埋める仕様が減点対象なので、数倍のデータを同じ待ち時間で読み込んで偉いとの解釈は無理でした。発動せずに通常技が出がちなダークフォース用ボタン、キュービィのダッシュの慣性に潜むバグ、キャラクター別になっても相変わらずコンテニューや設定変更の有無を認識しないハイスコアと、見付け易い不備も残ります。
 
 このように前作から制作センスが後退しても、使って楽しいジェダ・リリス・バレッタ・キュービィと、当てて可笑しいEX技への恋しさ故に、起動の手間と操作の制限を承知で遊ばざるを得ないのが罪作り。拡張ラムとジョイスティックを挿し放しに出来る本体があれば、評価が上がりそうです。
 
 
 
■ポケットファイター
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:カプコン
・発売日:1998年7月9日
・クリア状況:全エンディング(★×2or★×8)/クリア(ランニング)
 
  『スーパーパズルファイターIIX』を源流に回帰させたような、SDキャラの起用が目を奪うアーケード作品を、拡張ラムカートリッジ4MBにも対応して移植。
 
 パンチ・キック・ガード不能技の3ボタン制、簡単に徹したコマンド、殴り合いに不相応な2頭身のキャラクター。そんな初心者向けの作風にも拘らず、ジェムやらメガクラッシュやらアイテム玉やらと、同社同ジャンルで最も煩雑そうなゲームシステムに、家庭用で初プレイの私はたじたじでした。それらの大半に必要性を感じられないのと、同時押しの乱用がプレイヤーにとって疫病神で、★×2の初期設定でも超反応とラッシュで容赦してくれないCPUのアルゴリズムが、悪印象への決定打です。
 通常技は立ちパンチからの追加入力で8ルートに派生するコンボを、必殺技はジェムの回収によるレベルアップを根底に敷きましたが、どちらも難あり。前者は→Pの特殊技や→→Pのダッシュ技からの発動及び、ボタン連打での派生を受け付けない為、リーチの短い立ちパンチを当てて的確にボタンを押さなければならず、役立つルートは一部のみ。後者はジェムが大量に散乱して奪い合いの駆け引きを失いがちだし、レベルアップで使い勝手が悪くなるものが少なくないのは何故か。あと、背景の浮遊物体からのダメージでKOされるなんて、普通に考えてご法度では。
 
 対戦格闘アクションとしての完成度はガタガタな反面、キャラクターの魅力がピカピカなのは救い。その動きが非常に滑らかなのはもちろん、攻撃と共に多様なコスプレを演じる手法が新しくて楽しくて可笑しくて、痛快な気分に浸れました。ラブレターを渡してくる女学生の春麗、車椅子を突進させる看護婦のモリガン、シャンパンを噴出するバニーガールのさくら等々、キャラクター毎に何でもありの発想を幾つも詰め込んでおり、カプコンのグラフィックの開発力は凄まじいですね。
 
 完璧なキーコンフィグとトレーニングモードで、プレイ環境は上質。あと、拡張ラムへの対応は読み込みを含めて大差無しに思えましたが、不使用のデメリットを感じさせない工夫が上手だと捉えるべきでしょう。
 
 
 
■ストリートファイターZERO2'
・ジャンル:2D対戦格闘 ・メーカー:カプコン
・発売日:1998年11月19日
・クリア状況:全エンディング(★×8)/サバイバル(全コース)
 
  アーケード『ストリートファイターZERO2 ALPHA』の移植で、サターンコレクション唯一の専売タイトル。二人一組でCPUと戦う「ドラマチックバトル」が省略された代わりに、豪華なおまけとして『X-MEN VS. STREET FIGHTER』のキャミィが参戦します。
 
 元から家庭用移植を前提に手加減したような作りで、先発同社の『ヴァンパイアハンター』程の衝撃は生じないものの、高い移植度・短い読み込み・良い操作性を周辺機種の助力無しに成したことは称えられます。キャラクターとモードの豊富さを加味すれば、セガハードの最優秀2D対戦格闘に推薦したいクオリティ。名を捨てて実を取った方向性がAV面に重きを置かない自分に好ましく、通算起動時間はセガサターンソフトの首位かもしれません。
 
 原作は歴史に残るような革新性が認められない分、前作『ZERO2』からの正当改良で高度な次元に達しました。プレイヤーの実力とキャラクターの性能が勝敗に反映される度合いが適切で、初心者・上級者・弱キャラ・強キャラが共存出来る理想的な環境と言うのが、乱入対戦台で遊んでいた当時の印象。知識や技術を過度に要求したり、バランスが滅茶苦茶だったり、誰も使わないキャラクターを増殖させたり、大小の裏技が嫌味なくらいに隠れていたり、以後のカプコンがお家芸にしてしまった要素を含有しません。この『ALPHA』までならゲームセンターの第一線で付き合えた、なんて人は多いのではないでしょうか。
 好きな技の組み合わせで大ダメージとの触れ込みで前作より導入のオリジナルコンボは、上級者以外は大足払いから必殺技連打で完結しがちと、名前負けに当初は捉えました。しかし、真に重要なのはボタンの同時押しだけで無敵化しつつコンボに移れる点で、リバーサルやスーパーコンボの入力が苦手な者への福音なんですね。飛び道具を擦り抜けたり、飛び込みで対空技を誘ったり、敵の通常技を無効にしたり、これ一つで鉄壁の待ちから怒涛の固めまで対応可能ながら、受け手はしゃがみガードで安心安全としたのは単純過ぎかと思いきや、発動されただけでてんてこまいな『ZERO3』を見れば言わずもがな。前作で調整不足だった攻撃力も抑えられ、二作目で早くも完成されています。主役の座を追われたスーパーコンボも家庭用では、レベル3→レベル3やオリジナルコンボ→スーパーコンボを実現する「スパコンモード」で復権しており、サバイバルモードのカンストすら可能な爽快感抜群の詐欺プレイにどうぞ。
 
 ジャンプ小攻撃の使い勝手が押しなべて悪く、オリジナルコンボとダウン回避をCPUが封印するのは、アーケードのカプコンらしからぬ欠点。一般的なテレビでは端が大きく途切れてしまう画面サイズと、仕様が駄目過ぎて添え物にもならないスコアランキングは、コンシューマーのカプコンらしい欠点。オリジナルコンボをガードしないCPUは、使用促進にアーケードでは正解でしたが、家庭用の最高難度でも変わらないのはペケ。キャミィに意味不明な登場条件を設けたばかりかVSモードのプレイヤー操作限定だわ、同キャラ戦以外はキャラクター由来の音声と効果音がくぐもるわと、サービス精神が高じた故の贅沢な不満も。あと、春麗の中足払いがキャンセル可能等々、アーケードゲーマーは『ALPHA』と似て非なる部分が気になるかもしれません。
 
 内容が大差無い上に独自のおまけがある『ZERO2』が2年前に、内容が同一な上に他2作のカップリング移植まで付いた『ストリートファイターコレクション』が1年前に発売され、両方が供給過多な市場で生まれた本作。案の定、初週売上は1000本未満に終わり、発売直後に新品を買ったのは自分以外に何人いるのやら。ただ、実は『コレクション』収録版とはディスク使用量や著作権表記は共通なのに、セーブデータに互換性がありません。あけぼのフィニッシュと同時にポーズからQUITを選んだ際の一大バグは据え置きだけど、密かに何か手直しされている…?
 
 
 
 
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