■セガサターンソフトレビュー(シューティング1)
 
●アイコン
琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■パンツァードラグーン
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:セガ
・発売日:1995年3月10日
・クリア状況:エンディング(EASY〜HARD)
 
  猛々しく大空を飛翔するドラゴンの背に跨り、全方位から押し寄せる敵を撃ち落としてゆく3Dシューティング。
 
 セガサターン黎明期の作品であり、短期間に劇的な進化を遂げた技術力の恩恵を受けられず、そのグラフィックは瞬く間に古めかしいものと化してしまいました。しかし、ダイナミックなカメラワークや造形物の独特なデザインで不変的な価値を築いており、10年の歳月を経ても驚かされる点は少なくない──初見は発売前、初プレイは2004年だった者の感想です。
 見栄えで勝負か、通常弾とロックオンレーザーの使い分けと、的確な視点移動の要求によるゲーム性は、奥深いと言いにくいです。道中での回復やパワーアップが用意されず、厳しい難易度を克服するのは攻略意欲よりもクレジットで、レーザーを絶えず放って対処しきれなくなったらボタン連打の、美しくないプレイ姿勢に陥りがち。ほとんどの敵は倒さなくてもすぐに画面外へ消えていき、辛く感じる割に適当な操作でも先に進めるのは問題でしょう。同時ロックオンに意味を見出せないのも不満で、合計威力が増えるとか、体力が回復するとか、得点が無いなら無いなりにボーナスを付け加えてくれれば理想でした。
 
 方向キーの初期設定がリバース、セーブ非対応、条件が複雑怪奇な裏技、面毎にリセットされる視点等、発売時期を差し引いても至らない部分は多い反面、作り手の情熱を感じるのは間違いありません。
 
 
 
■極上パロディウスだ! DELUXE PACK
・ジャンル:横スクロールシューティング ・メーカー:コナミ
・発売日:1995年5月19日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL)/スペシャルステージクリア
 
  アーケードの新作『極上パロディウス 〜過去の栄光を求めて〜』と、旧作『パロディウスだ! 〜神話からお笑いへ〜』のカップリング移植。ゲームセンターで前者は数十回プレイして4面止まり、後者は数回プレイして3面止まりでした。
 
 名作『グラディウス』を下敷きに、おちゃらけた演出を真面目に取り込み、どちらもゲームセンターで人気を博しました。本パッケージは次世代機の名に恥じない完全移植みたいで、家庭で触れてもシューティングとしての完成度は十分だと言い切れます。しかし、なぜか、進んで遊びたいとは思えない一面も個人的に。
 心当たりを挙げれば、自機の差を性能の高低差でしか表せておらず、様々な自機を使い分けたくならないこと及び、武装に応じたランク上昇の度合いが甚だしい上に、半強制で開始されてしまうルーレットとゲージに潜む武装初期化の嫌がらせで、パワーアップのシステムと仲良くなれないこと。好みよりも性能優先で自機を選び、可能な限り弱い武装で粘り、ルーレットを記憶で回避し、最難のランクを基準に攻略方法を組み立てれば、一般的な評判通りに楽しめるのでしょうか。これらは自分にとって重い条件で、フリーコンテニューに頼ってエンディングへ達した後に、再挑戦に必要な上達意欲が湧きませんでした。
 
 ボタンコンフィグの不可を除けば環境面が整っており、そもそも『パロだ!』と『極パロ』の完全移植を1作分の値段で手元に置ける訳で、セガサターンの初期作品として抜群にお買い得なのは確実です。
 
 
 
■レイヤーセクション
・ジャンル:縦スクロールシューティング ・メーカー:タイトー
・発売日:1995年9月14日
・クリア状況:エンディング(NORMAL+ノーコンテニュー)
 
  拡大縮小と多重スクロールで平面に3D空間を表現した、アーケードからの移植作。原題は『レイフォース』なのに嘘か真か、サードパーティーに同名の会社があり、開発中の旧題が採用されたそうな。
 
 例のエンディングの噂を聞き付けてゲームセンターで数ヶ月挑戦するも、結局は悔しい思いをさせられた可愛さ余って憎さ百倍の作品です。そこで心配になる移植の具合は、一部の演出以外はオープニングからゲームオーバーまで完璧。しかも、読み込みによる待ち時間と暗転が皆無なんて、どんな素敵な技術力なのでしょう。元ではロックオン可能だった敵機を追えないのと、ボスの一部が消えて互いに攻撃を仕掛けられないのは、物理的に画面の長さが足りないからと諦められますし、縦画面モードとキー入力方向変換を用意されては減点材料になりません。
 難易度は前半易しくも後半跳ね上がり、最終盤は瞬く間に残機が減ってゆく、まさにアーケード仕様のまま。クレジットは少なく、イージーモードは無く、家庭用としては不親切でしょう。私はゲーメストの攻略記事と連射付きパッドの加護で突破出来ましたが、パターンの構築だけでは克服が難しい場面もあり、クレジット増加の裏技以外に追加の救済策は欲しいところ。あと、ロックオンレーザーがスコアアタックと直結しているのがゲーム性の妙なのだから面毎の得点を記録させて然るべきで、忠実過ぎな移植も考えものです。
 
 内容は限界まで洗練されており、敵の出現位置一つ取っても明確な意志が感じられます。ロックオンレーザー単発で撃破可能な得点獲得用の敵機と耐久度のある倍率上昇用の敵機の配置は特に絶妙で、何らかの反応を要求する開発者とそれに応えようとするプレイヤーが、画面内で物言わぬコミュニケーションを築き上げる感覚。文字情報やビジュアルデモに頼らず、作戦の進行と共に悲壮感を増幅させる演出も素晴らしく、適当に敵を出して適当に自弾を撃たせて完結するような凡百の作品群とは比較になりません。
 欲を言えば、アーケード版のサウンドトラックに付属したガイノイドである主人公の日記と仮想戦略資料のブックレットを、何かしらの形で開示出来なかったでしょうか。非公式設定だとしても読んでいるといないとで、ストーリー性の実感度が桁違いなので。ブックレットを読みながらサウンドトラックを聞くと瞳が潤んでしまうのは、私だけではありますまい。あと、2人同時プレイのエンディングが使い回しなのは残念で、意外な不具合がある音声出力が批判の的でしょう。
 
 TVゲームをお手軽お気軽に楽しみたい自分には、シューティングとして見事な完成度のせいで肩が凝り、家庭だと遊ぶのを躊躇してしまう側面もありました。ゲームセンターでプレイしてこその作品ですね。
 
 
 
■出たなツインビーヤッホー!DELUXE PACK
・ジャンル:縦スクロールシューティング ・メーカー:コナミ
・発売日:1995年9月29日
・クリア状況:全エンディング
 
  アーケードの新作『ツインビーヤッホー!〜ふしぎの国で大あばれ!!〜』と、旧作『出たな!!ツインビー』のカップリング移植。ゲームセンターで前者は十数回プレイして4面止まり、後者は未プレイです。
 
 クレジットをあまり注がなかった理由を再確認──これが久々の『ヤッホー』の感想でした。縦スクロールのシューティングとしては多彩過ぎる上に特性が複雑で、むしろ煩わしいパワーアップが短所の筆頭。対空用のショットと対地用のボムを放ちながら、スピードアップやバリア等の助力をベルから得られれば十分なのに、アイテムと溜め撃ちにおいて開発者が定めたルールを自ら破ってばかりで、プレイヤーは過度の負担を強いられます。
 例を挙げれば、武器アイテムは地上攻撃用の腕に装備するのに5種類中4種類が空中攻撃だとか、使用条件の無い溜め撃ちで「ためパンチ」のみ腕が必須だとか、ベルでは併用不可の分身とバリアが「ためぶんしん」では可能だとか。そんな統一感に乏しいルールすら無視する特殊パワーアップのミカエルとグインビー&2人同時プレイのスペシャルアタック2種類まで追加され、もうしっちゃかめっちゃか。オープニングからエンディングまでの30分弱に、よくもこんなに様々な要素を詰め込んだものです。
 
 他の難点に、スクロールがあります。縦に狭い画面内で横に大きく任意スクロールを行えたり、横や斜めに相次ぐ強制スクロールでベルを日常茶飯事に取り逃がしたり、武器アイテムの切り替わりが遅くて目的の種類に変化する前にスクロールアウトしたり。武器アイテムに関しては「ためぶんしん」「ためばくだん」以外を選択した場合、両腕の装備がスプレッドボム以外だと地上攻撃が完全に封じられてしまうのに、個数がやたらに多いなんて嫌がらせにも要注意で、敵撃破後のフルーツを取りたくても不可抗力の武器交換が怖くて地上物に重なれません。
 ベルの色を調節するインターバルの少なさと、悪質な即死トラップや極端なランクシステムも明らかな短所。カラフルな背景に溶け込んで地上物・空中物・自弾・敵弾の判別に目が疲れるのも併せて、シューティング界に名作を輩出してきた会社が当ジャンルにおけるお約束を尽く守らない姿勢は不可解ですね。
 
 プレイに関係しない不親切も多々。オート連射を設定したボタンはコンテニューのカウントダウンにも適用され、油断していると一瞬でゲームオーバーになります。エンディングのスキップが可能なのは良いものの、全ボタンが反応するのは冗談でしょうか。コンテニューの有無や3つのゲームモード、難易度設定によるエンディングの変化も無い模様。白ベルはどの武器が何段階にパワーアップなのか、同じ武器アイテムを取るのは無意味なのか、分身とバリアは併用可能なのか、説明書に全然記載されていないので自力で確認したいのに前述の煩雑なゲームシステムに阻まれ、もどかしさが募りました。
 苦言は尽きませんが、禁断の「その場復活&フリーコンテニュー」によって強引なバランス調整が働き、破綻の手前で踏み留まってはいます。全体像や攻略法を見極める為に相当なやりこみを要求しながら、スタートボタンさえ押せばエンディング保証なのは一見理不尽とは言え、中身が中身なので大歓迎。プレイを重ねてわかりにくさを緩和してからは、軽快なテンポを幾分は楽しめました。
 
 結局は、キャラクターや声優を打ち出したアニメチックな外装の割に、内装を凝れていないのが最大の失敗でしょう。面間デモは途中までだし、シナリオは独り善がりで置いてきぼりを食らった気分。ここが作り込まれていれば、種々の不満は見逃せたかもしれません。
 
 
 他方の『出たな』は『ヤッホー』の贅肉が付いていない点が完成度に貢献しており、音声やデモの演出面までが旧作でありながら勝っています。とは言え、初速の遅さと無敵中にアイテムを取れない不利から復活が極めて難しいとか、敵の出現パターンが序盤でも悪質だとか、バリアや腕の当たり判定が大きいとか、攻略意欲を萎えさせがちな傾向はあります。ボスの耐久力が妙に低く、弱点に張り付けばラスボスも含めて数秒で撃沈となるのも、ちょっと変でしょう。
 あと、2周目の地獄としか形容が思い浮かばない極悪さには度肝を抜かれて、今まで遊んだTVゲームの中で難度第一位の可能性大。物は試しとオプションで最難に設定した2周目に挑戦したところ、その場復活+バリア+3WAYの過保護なコンテニューをクリアまでに費やすこと、30回以上。そこまで苦労してもエンディングは1周目と同じで激怒せねばと思いきや、妙な達成感があったのでうっかり許してしまいました。
 
 両作品に共通の誉めどころは読み込みを一切感じないのと、難易度と残機を過剰に設定出来るオプションで、作品の短所を商品の長所で補えています。叱りどころはステージセレクトの裏技の条件が厳しくて練習用には使えないことで、難易度を最低にしても『出たな』の2周目をコンテニュー3回以内にクリアなんて芸当、神業としか思えません。
 
 
 
■ガンバード
・ジャンル:縦スクロールシューティング ・メーカー:アトラス/彩京
・発売日:1995年12月15日
・クリア状況:全エンディング(1人用・2人用・タイムオーバー)
 
  生半可な腕の奴にはクリアさせる気の無いシューティングが氾濫する中、程々に抑えられた難易度でプレイヤーに易しく優しかった、アーケードからの移植作。
 
 アーケードのシューティングで1コイン1周クリアを初達成した、個人的記念作品です。それもこれも、ボスキャラを瞬殺可能で無敵ボム完備の大魔法使いマリオン様がいたからこそ。いや、もう、これは断じて敬称でお呼びすべきなのである。彼女の素晴らしさを教えてくれた、ゲーメストにも感謝を。
 元がそんなですから、家庭用との相性も抜群。コントロールパネルに痙攣撃ちで立ち向かっていた者としては、オート連射と溜め撃ちの併用が可能な操作形態に感動でした。また、設定変更で相当簡単に出来るのに「2人同時プレイ&その場復活&フリーコンテニュー」まであるのと、低難易度でコンテニューを多用しても個別エンディングとマリオン様熱唱付スタッフロールを見られるのは、少し驚き。割り切り過ぎに思えるのは確かながら、弾避けや撃ち込みや得点稼ぎの魅力に欠けるきらいがあり、デモ画面とエンディングを楽しませる為の正しい判断でしょう。
 
 内容は極めてキャラクター重視で、オープニングアニメを追加したり、デモ画面で喋ったり、キャラクターが自己紹介したり、ギャラリーを付けたり、家庭用移植に際して長所を顕著化させています。特にギャラリーは約500点を収録し、表示切り替えが瞬時で、各賞の表彰式まであり、凄いの一言。惜しいのは、とてつもない数があるデモ画面とエンディングの保存が出来ないこと。あと、コンテニューを使用したスコアが記録されてしまうのもペケ。
 ここまで外見ばかり誉めていますが、ゲーム性もおざなりではありません。個性的に分類された自機の性能と、パワーアップ最高段階の弾数制限により、難易度を低いままに適度な戦略性を生み出しています。縦画面を横画面に落とし込んだ為、通常プレイ時に任意で上下にスクロールするのは違和感ありですが、緻密な操作が必須な局面は見当たらないので大丈夫。前者が物足りない人には凶悪な2周目を、後者が納得出来ない人には縦画面モードをどうぞ。
 
 初心者にも上級者にも対応し、短く遊ぶのも長く遊ぶのも自由な懐の深い仕上がりです。敢えて文句を寄せれば、ドリームキャストに移植された続編がいまいちだったのは玉にキズ。
 
 
 
GUNGRIFFONガングリフォン THE EURASIAN CONFLICT
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:ゲームアーツ
・発売日:1996年3月15日
・クリア状況:エンディング(EASY & NORMAL)
 
  世界情勢の均衡が崩壊した近未来を舞台に、二足歩行の戦闘兵器に搭乗した「日本外人部隊」の一員として作戦を遂行させてゆく、一人称視点のシューティングゲーム。
 
 軍事色を全面に打ち出した設定通り、シナリオからゲーム性まで硬派を貫きます。最初に立ちはだかるのがパッドの全ボタンへ独立した機能を割り振った操作方法で、更に方向キーとの併用や同時押しまで求められては、説明書を読んだ瞬間に面食らうこと確実です。しかし、遊んでみれば自分にとって必要な操作と状況に応じて必要な操作の両方を咄嗟に反映可能で、この考え抜かれたデザインに感心でした。ミッションは全8面と少なめながら敵軍の殲滅から味方の護衛まで一通りを揃えており、中盤以降は手が付けられない程の苦境に毎回直面する反面、再挑戦の度に打開策が見えてくるので難易度にも不満は感じにくいでしょう。
 
 主な欠点は3つ。攻撃を命中させるのが難しく、ヒット確認の術が無く、雑魚敵すら固いことで、別個に見れば許容範囲です。しかし、この3つが不幸にも複合してしまい、プレイに支障をもたらします。つまり、目前の敵を攻撃→命中を確信→撃破ならず→当たっていないのかも→ヒット確認が表示されないので不明→判断出来ないまま撃ち続ける→撃破、こんな流れに終始するのです。
 もし、この内の一つでも改善されたなら──攻撃が命中させ易ければ「当たっていないのかも」と不安になりませんし、ヒット確認の術があれば「ヒット確認が表示されないので不明」な訳もなく、雑魚敵くらい軟らかければ「判断出来ないまま撃ち続ける」必要も無いはず。同系列の欠点として、視界よりも自機の幅が広く、戦場に多数の障害物が配置され、移動方向の自動補正が無いせいで、画面に映っていない障害物に少し接触しただけで移動を阻まれてしまいます。どちらも常に付き纏う問題なのに、何歩譲っても好意的な解釈は無理です。
 
 操作性や難易度みたいに突き放しているようで間口の広い部分があっても、ゲーム本編にぞんざいな部分を放置してはなりません。シナリオに凝る割にエンディングも淋しく、悪い意味でのゲームアーツらしさまで発揮されていて残念でした。
 
 
 
■パンツァードラグーン ツヴァイ
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:セガ
・発売日:1996年3月22日
・クリア状況:エンディング/全パンドラボックス
 
  『パンツァードラグーン』から1年後に発売された続編。筆者のプレイ時期は前作と同じく2004年です。
 
 第一のセールスポイントは前作を遥かに凌駕したグラフィックで、場面によっては神々しさまで感じさせる程の高品質。自分の想像を絶した情景に胸を打たれる感覚を、TVゲームで体験出来るなんて驚きです。そんな大変身を遂げた外面に対し、内面は全長の増加ではなく全幅の充実に重みを置いており、愛竜の成長・ルート分岐・特殊なオプション等の様々な試みが追加されました。中でも得点とセーブ機能は待望と言え、多弾ロックオンの駆け引きや隠しボーナスの追求により、ハイスコアと撃墜率100%を狙って繰り返し遊ぶ楽しみを作り上げてくれるでしょう。
 ただし、ボムに相当のバーサークと無制限のコンテニューが、更なるゲーム性の低下を招いてしまった感も否めません。視点を引けなくなって照準が合わせにくかったり、敵が登場せず演出も無い間延びするだけの時間が頻繁に挿入されたり、パンツァー語の発音があまりに日本語していて雰囲気ぶち壊しだったりと、新しい短所が追加されたのも何故か。最も許し難いのは、独り善がりが過ぎるシナリオ。その内容はともかく、プレイヤーを置いてけぼりすること前提の描き方は、まるで設定病を患った自称作家志望者の小説を読まされるような苦痛でした。
 
 開発者が大切にしようとしたあちらを立てる内に、プレイヤーにとって大切なこちらを立てるのを忘れてしまった、いびつな完成形ですね。
 
 
 
■ダライアスII
・ジャンル:横スクロールシューティング ・メーカー:タイトー
・発売日:1996年6月7日
・クリア状況:全エンディング(EASY)/真のエンディング(VERY EASY)
 
  複数のモニターやルート選択によるマルチエンディングを備えた大作志向の1989年製アーケード作品を、忠実移植への最大の障害を克服して再現。メガドライブ版のみ経験からの感想です。
 
 最低2画面を横置きした当シリーズの家庭用には、作り手と遊び手の間に妥協すべき暗黙の了解が付き纏ってきたものの、ハード性能の向上が見事な解決策を生み出しました。通常は全長を縮小表示させ、リアルタイムで拡大縮小をスムーズに行えるその名も「ズームシステム」は、高い技術力を感じさせて一見の価値あり。左右に任意スクロールが発生するわ視野外から敵に襲われるわで、実用に耐えられない拡大表示は自ずと利用されなくなり、非常に見辛い縮小表示への不満に拍車を掛けますが、特殊筐体の忠実移植を成す為に必要な犠牲として許容したいものです。
 しかし、原作・移植作の両面からみだりに悪印象を振り撒かれては、良い感情を持ち続けられません。赤の背景に敵機と敵弾が溶け込んだり、黒の背景に画面上下の帯が同化したり、無頓着な配色は憎たらしい程。初期設定ですら凶悪と形容したい難易度と、メッセージが英文ばかりのエンディングには、それらが是正されていたメガドライブ版での口直しを誘われました。1画面内で目に易しく、オリジナルのエンディングが加わり、ボス戦が連続するスペシャルモードも付き、効果音が消える仕様が演出としてハマっていてと、セガサターン版に無い長所が次々に思い浮かぶのは私だけではありますまい。とは言え、素直には誉めにくい調整方法だとしても難易度は裏技の併用で相当落とせますし、メガドライブ版では見られない真のエンディングが入っており、コレクターズアイテムとしての商品価値は十分でしょう。
 
 ところで、コントローラーが端子から抜けると自動でポーズが掛かるのは面白いアイデアですが、1Pと2Pで別勘定のクレジットを1つのコントローラーで有効活用したい者にとっては、余計なお世話でもありました。
 
 
 
■ナイトストライカーS
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:ビング
・発売日:1996年6月14日
・クリア状況:全エンディング(NORMAL&コンテニュー or VERY HARD&ノーコンテニュー)
 
  『スペースハリアー』と『アウトラン』をタイトーが再構築したような、1989年のアーケード作品をオリジナルステージ付で移植。
 
 ゲームセンター・メガCD・プレイステーションでのプレイ機会が無く、セガサターン版『スペースハリアー』が本作の評価基準になりました。まず、近未来の舞台設定が活きない地味な背景、小さくて薄っぺらいボス、攻守に不利を及ぼす乏しい遠近感、破壊の可不可が不明瞭な障害物と、グラフィックが非常に劣ります。素直に遊べばゲーム性が似たり寄ったりな分、ここの差が面白さの差に大きな影響を与えてしまいました。移植度が低いとの前知識を含めても、これで『スペースハリアー』より4歳も若いなんて信じ難いですね。
 ミスが過度に痛くない回復ありの体力制、豊富なステージをさくっと遊べる分岐式、最終ステージで自機が変形する珍しいフィーチャーが、差し当たって思い浮かぶ長所。操作はデジタルでも快調だし、ステージ毎の読み込みは一瞬なのであまり気になりません。あと、原作未経験者がベリーハード+ノーコンテニューを初日で成せてしまった程に簡単なのは、完成度が高いらしいスコアシステムこそがプレイヤーが挑むべき本丸だからでしょうか。
 
 原作が大型筐体で忠実な移植も出来なかった為、熱いファンを獲得した中身から多くの魅力が損なわれている様子。しかし、バグ塗れやらロード地獄やら極悪バランスやらの要らぬ反感はもたげさせず、ハイスコアに興味が持てなくても評価は平凡には届きました。
 
 
 
■ストライカーズ1945
・ジャンル:縦スクロールシューティング ・メーカー:アトラス/彩京
・発売日:1996年6月28日
・クリア状況:全脱衣(1人用・NORMAL or VERY HARD)
 
  『戦国エース』『ガンバード』に続く彩京シューティング第三弾の移植。舞台を第二次世界大戦直後に据え、実在の軍用機を用いた自機を始めに従来の軟派色が取り除かれ、ゲームシステムにも目新しい試みはありません。
 
 キャラクター人気を当て込む演出重視の作風から一転、ゲーム性だけで勝負の思い切った企画が受け入れられ、アーケードでは息が長い商品になりました。ただ、彩京の原点である『ソニックウィングス』に先祖帰りした雰囲気は在り来りで、前作『ガンバード』で輝いていた賑やかしの欠如が淋しく、当時の自分はクレジットを数回しか投じていません。少し触ったくらいでは画面の奥に潜む魅力に気付けず、時代遅れのオーソドックスさしか映らなかったのです。
 
 長所を端的に表せば、撃ち込みと弾避けと言うシューティングを構成する二大要素が高水準で絡み合い、バランスが極めて良いとなるでしょう。ボムが強力な代わりにバリアは無かったり、その場復活の代わりにコンテニューでは戻されたりと、ポイントは飴と鞭の適切な与え方。それも「すぐに死ぬが残機は大増殖」「終わりまで長いが敵の攻撃は温い」のように、無理矢理な調整で帳尻を合わせた訳ではなく、過程を一つ一つ経て理想に近付けたのが素敵です。攻略記事の動きをトレースしても、学習効果でパターンを自作しても、反射神経に託してアドリブに殉じても楽しめて、理不尽や矛盾を排除した難しさは純粋な面白さに変換されることが伝わりました。
 高速連射のショットから大量の敵弾までが背景に紛れないドット絵と、破壊衝動を満たす重厚な効果音に彩りを添えられた本作の華は、退屈知らずのステージ構成及び6種類の自機の個性付け。関所が狭い間隔で立ち並ぶかのように妨害を受けては打ち破りの連続となる前者は、約15分と非常に短い全長ながら爽快感と充実感を両立し、平均性能の高さから短所が不利に直結しない後者は、誰も選ばない選択肢は作らない当然の心掛けが守られています。どちらも以前から実践されていましたが、その差異は大きいです。
 
 惜しむらくは、家庭用としては幾ばくかの難があること。幅広い難易度設定とディスクメディアを忘れさせる極上の読み込みはそのままに、任意スクロール無しの横画面用モードの追加で『ガンバード』から進化した反面、常軌を逸した猛攻が待ち構える2周目でコンテニューを禁止にしたのが解せません。以前は低難易度だと1周目終了で敢えて2周目終了扱いとし、高難易度でも「2人同時プレイ&その場復活&フリーコンテニュー」すら継続されていたにも拘らずです。稽古を重ねれば何とかなるかもと希望を抱かせる短さ故、2ー1を滅多に超えられない私でも悔やんでしまいます。
 他に改悪されたのが、スコア等の画面情報。オンとオフの切り替えだけでは不便なので左右の空きスペースの活用を望んでいたら、ステージ開始の度にオンに戻るなんて嫌がらせが。スコアランキングの凝り方もおかしく、モード×難易度で前代未聞の21種類に分けた是非はさて置き、2Pやコンテニューを悪用した不正スコアを除外しない時点で没意義でしょう。自機選択とコンテニューがすぐにタイムアウトになるのも、アーケードの仕様を誤って引き擦っています。移植に纏わらない改善希望では、震電の4段階目の溜め撃ちが使いにくいのと、大ボスの登場と変形の際に当たり判定出現が個々でまちまちなのを挙げたいですね。
 
 本作において一番の注目点と言えば、オリジナルモード用のムービーとアーケードモード用のデモで4つを数えるオープニングではなく、ネームエントリーでEndによる決定や卑猥な文字列を入力した時のへんてこメッセージでもなく、ゲーメスト曰く「衝撃の脱衣シューティング」の取り扱いでしょう。これはエンディング以外に出番の無い各自機のパイロットが秘める、文字通りの仕掛け。コンテニューありでは隠された素顔がノーコンテニューだと明かされ、更にステージ毎に評価されるクリアタイム・金塊回収数・敵機撃墜率で最上位を示す金の勲章を全項目獲得した時に限り、実は妙齢の女性だった彼女たちのあられもない姿が表示されるのです。
 結論を言えば全年齢のレーティングを欺くことなく、着衣画像に差し替えられました。この件は発売前後の紹介記事でほとんど触れられなかった為、嘆き悲しんだ人もいるでしょう。セガサターンは曖昧な理由で18歳以上推奨に区分される作品が珍しくなく、販売元のアトラスも自社ブランドでX指定を出しており、わざわざ健全を気取らなくても良かったのでは。ただ、ゲーメストで公開された現物と見比べれば、ポーズから描き起こしたり密かに露出度が増したり、心証を損ねないような配慮は認められます。
 
 この脱衣に正攻法で挑むには、環境が揃っていません。金の勲章の授与基準が明確でなく、評価はエンディングでしか確認出来ないからです。ボムを投じないとクリアタイムが間に合わなかったり、ドイツ面で隠れキャラのブルースティールを出すと撃墜率の達成が困難だったりで、2周目突入やハイスコア狙いとの掛け持ちも厳禁。5面において6個の金塊が現れる2箇所で、自機の装備が貧弱だとパワーアップアイテムに変更されるのが要らぬお世話な上に、偶数単位で中途半端にしか出ない不具合があり、これが頻発する任意スクロールが発生しない横画面用モードでの挑戦は諦めましょう。そもそも、説明書にエンディングのエの字も無いのがどうかしています。
 尚、難易度ノーマル以上の制限は、裏技で克服出来ます。実は1周終了時に得点の下二桁が00でさえあればコンテニューのフラグが立たない為、1Pと2Pを行き来しつつリスタートで得点をリセットすれば良いのです。ただし、2人揃ってエンディングに到着した場合、スリーサイズ等のプロフィールが表示されないのと、両者の下二桁が00でなければ無効なのに注意を。
 
 最後に、冒頭で軟派色云々と虚偽記載したことをお詫びします。
 
 
 
■ソニックウィングス・スペシャル
・ジャンル:縦スクロールシューティング ・メーカー:メディアクエスト
・発売日:1996年7月5日
・クリア状況:全エンディング(1人用・2人用・タイムオーバー)
 ⇒攻略ページ
 
  ビデオシステムのアーケードゲーム『ソニックウィングス』シリーズの3作を再構成した、ダイジェスト移植。自機の兵装はパワーアップ制のメインショット+サブウェポンとボンバーに当たるスペシャルウェポンだけで、ハイスコアラーを熱くさせる特別な稼ぎも仕込まれない、オーソドックスな作りです。
 
 複数の機体から選べ、前半面はランダムで、エンディングが豊富。誕生の経緯から「彩京シューティング」の原型に位置しますが、地味なグラフィックと大人しいBGMから、セガサターンにおける同ジャンルでは相当に古いタイプです。スクロールの変化や特殊な演出は僅かで、キャラクターの台詞に声は付かず、視覚と聴覚の両面で16ビット級の印象が拭えません。しかし、使用可能な機体が26機、エンディングが70種類以上となれば話は違います。シューティングの本来の魅力を代償に、様々に差別化された機体を取っ替え引っ替えしつつ、多彩なエンディングを鑑賞する楽しみを優先したのでしょうから。
 機体のほとんどに実在の兵器を採用しながらも開発者の奇抜な発想が冴えて、この量で性能が被っていないのは凄いところ。時間を止める、巨大なマトリョーシカが画面中を踊る、東亜プラン『大旋風』よろしくヘルパーが現れる、乱舞技でボスを一撃で倒す等、スペシャルウェポンの特性は注目に価します。説明書のプロローグとオープニングのムービーはシリアスなのに、それを完全無視した大半のエンディングには良い意味で脱力しました。『ラビオレプス』の機体に『すくすく犬福』のエンディング他、ビデオシステムの知識がある人にはサービスも少々。久々に「でもミサイルは大切に〜」と言われて、懐かしいったらありません。
 
 温い難度と短い所要時間で、作り手の狙いと一致した完成形に好印象。シューターの才能に乏しい私でも、全9面を約20分で通れます。嬉しいのが面間のセーブ機能で、機会が一回切り及びロード以外のモードに入った時点で消去されるとは言え、エンディングが任意のステージ分岐で決定するシステム上、とても有益。フリーコンテニュー・1人プレイと2人プレイの自由な移行・後半面でも2人プレイではその場復活の合わせ技で、キャラクターと機体を選び終えればクリア内定だったりするのも、エンディングの数を考えれば妥当かと。これらのバランスがいびつでプレイヤーの負担が大きくなり、余計な反感を買うケースが多いですし。
 花丸をあげたいのが、ゲームスタートまではいつでも前画面まで一段階ずつ戻れるのと、機体選択画面とネームエントリーに厳しいタイム制限を設けなかったこと。アーケードからの移植作に放置されがちな要改善点で、よく気が利いています。画面の狭さを承知で選ばざるを得ない人が大多数の横置きで敵弾を間引くのも、本編に疲れた時に気分を一新させてくれるタイムアタックモードの設置も、嬉しい配慮。あと、横置きのモニターに縦画面を縮小表示するインターレースは、実用性はともかく心意気を認めましょう。
 
 ボムを連発出来ず、一部の機体では敵に接近しても撃ち込み効率が上がらず、溜め撃ちは連射ボタンを放さねば認識せずと、実戦に不親切が残るのは否めません。2〜4面にランダムで登場する5つのステージの配点が片寄っており、ハイスコアへの意欲を削ぐのも困りもの。更に、画面内の情報表示の切り替えに難ありなのと、攻略ページに纏めたように細かいバグが残るのを、小さな減点ポイントに挙げます。また、原作を遊んだ回数が少ない自分には当てはまらないものの、忠実なカップリング移植でないのを悔やむ発売当時の声は理解出来ました。
 
 余談として、シリーズの代名詞と言える天下無敵の超音速アイドル、真尾まおが唄う付属のシングルCDについて。これを聞いてからプレイすると作中の彼女の言動に理解が深まり、感情移入度がぐっと上がりました。この『音速娘』を私はいたく気に入り、セガサターン系ヴォーカル曲の第一位に推しています。単なる販促のおまけかと思いきや、侮れません。
 
 
 
■SEGA AGES/スペースハリアー
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:セガ
・発売日:1996年7月19日
・クリア状況:エンディング(初期設定+ノーコンテニュー)
 
  スプライト系3Dシューティングの代名詞と言える体感ゲームを、マークIIIとスーパー32Xに続いて自社ハードへ完全移植。
 
 アーケードからパソコンまで、『スペースハリアー』は数え切れない程の媒体で遊べたのに、私は派生作品を含めて初体験がドリームキャスト『シェンムー』内で、本格的なプレイは後に本作を購入してから。その為、絶賛されたらしき移植度を判定する権利は持ちませんが、生年を考慮せずとも極限の完成形だと思いました。知らなければ、1996年のセガサターン用オリジナル新作だと偽られても、納得しちゃいそうです。
 
 類稀な魅力はグラフィック。鮮明な色彩の美しさも然ることながら、著名洋画を下敷きにした他の体感ゲームとは異なる奇抜なSFファンタジーの舞台設定が、目にも止まらぬ速さで迫っては過ぎてゆく様に、驚嘆を誘われました。戦闘機・キノコ・モアイ・ドラゴン・マンモスが違和感無しで共演するなんて、かの『ファンタシースター』も真っ青かも。また、横軸に任意でスクロールしたり、縦軸に応じてカメラの角度が傾斜したり、唐突に急加速したり、単に一方通行で流れない映像にも凄みを感じます。このような果てしなき空間の表現が、決して辿り着けない遙か彼方の地平線をも確固たる存在とし、主人公との一心同体を手助けしてくれるでしょう。
 ライフやパワーアップを非採用なのに、バランスは秀逸。3Dものに付き物な出会い頭の衝突は心配無用だし、セガマルチコントローラーとの悪い相性も、デジタル入力で不利を被らないので気になりません。爆風等のエフェクトで目隠しされる状況は多いものの、これは安全な視界の確保を促すことでゲーム性の強化に貢献しており、敵機と敵弾の出現を固有の効果音で知らせる配慮もあって、開発者の狙い通りと受け取れます。原作への指摘を捻り出せば、淡白なボス戦くらいですね。
 
 物足りないのは、痒い所に手が届かないオプション。別売りパッドの連射機能では弾切れが激しいのでソフト連射を、デジタル入力だとニュートラルに戻れないので移動用ボタンを求めますし、ステージセレクトとリプレイは備えて当然では。更に、『SEGA AGES/アウトラン』と同様の過ちにも留意すべきでしょう。
 
 
 
■SEGA AGES/アフターバーナーII
・ジャンル:3Dシューティング ・メーカー:セガ
・発売日:1996年9月27日
・クリア状況:エンディング(初期設定+ノーコンテニュー)
 
  80年代後半に『アウトラン』『スペースハリアー』と並んでセガの黄金期を築いた、人気体感ゲームの忠実移植。強力な誘導性能のミサイルを頼りに、奥に一直線の強制スクロールを高速で突き進みます。
 
 アーケード版を含めてプレイ経験が0に近く、完璧と名高い移植度に感動を覚えられない目線からの初印象は、凄く悪いものでした。デジタル入力には荷が重い精確な操作を要求しながら、アナログミッションスティックへの最適化に注力したのか、裏ジャケットが推奨するセガマルチコントローラーの酷い使用感が初っ端の躓き。照準を自在に動かせる面積が全画面の半分程しかなく、ミサイルは時としてジャミングが起きたかのように発射されず、視界不良と効果音欠落による回避行動の阻害が常に隣り合わせと、あらゆる手段で理不尽な死を誘発しているのも堪えられません。あと、先発で同ジャンルの『スペースハリアー』がSFファンタジーの幻想的な空間を描いていた分、在り来りな現代戦では魅力を感じにくい側面はあったでしょう。
 本作において有名な隠しフィーチャーは、オリジナルの発売時期の風潮を考慮しても悪しきものだと思いました。その効果が極めて有益な為、裏技の失敗はプレイの放棄に直結と言う実情を招いた上に、特定のオープニングデモが始まるまでスタートを待たせたり、複雑な対応のコマンドを一定時間維持せねば最大限の恩恵を受けられなかったりで、当時のハイスコアラーは本当に大変だったのでは。また、これにより21面で加算される超桁違いのボーナス点は、最終再開ポイントが19面の無限コンテニューとハイスコアのオートセーブを付属したセガサターン版において、上級者には気付きにくい困った状況をもたらします。ボーナス点とコンテニューの繰り返しでスコアランキングが埋まった日には、1面からの過程がどんなに完璧でも21面に到達しなければ結果を残せませんから。
 
 以上の刺々しい意見を和らげたのが、家庭用独自の「1000ヒットチャレンジ」と「トレース機能」で、前者は隠しフィーチャーの標準装備で煩わしさからの解放を、後者は見本プレイの収録で上達の手助けをしてくれます。この2つのフォローで咄嗟の反射神経が問われる局面を潰していくと、種々の不満の克服を自助努力で試みる余裕も生まれ、豪快に見えて繊細なゲーム性を真っ当に楽しむ段階まで辿り着き、最終的には1000ヒット超を達成出来ました。敵機の出現位置を覚えて先に叩く攻撃主体のプレイをするべきなのに、3Dシューティングへの先入観から円を描いて逃げ回っては即撃墜されていた自分のような初心者が、数多く救われたことでしょう。
 
 過去の名作を次代へ汚さず伝えた素晴らしきパッケージだけに、ボーナス点が「1000ヒットチャレンジ」の標準装備に含まれないのと、本作に限りませんが折角の付加価値を敢えて裏技扱いにしてしまう開発会社の方針は悔やまれます。
 
 
 
■戦国ブレード SENGOKU ACE EPISODE II
・ジャンル:横スクロールシューティング ・メーカー:アトラス/彩京
・発売日:1996年11月22日
・クリア状況:全エンディング
       (1人用・2人用・タイムオーバー・NORMAL or VERY HARD)
 
  セガサターンには移植されなかった彩京のデビュー作『戦国エース』の続編で、キャラクターデザインが中村博文から司淳に、スクロールが縦から横に変わりました。おまけディスクとの2枚組。
 
 2Dのシューティングにおいて、地形・重力・変速&変則スクロールを利用した攻防と演出が横スクロールの独自性にも拘らず、縦スクロールの角度を傾けただけの安直な作りです。しかし、移植の手間が省けたりモニターの違いに困らされなかったり、家庭用の発売が前提ならデベロッパーとユーザーの双方にメリットも。実際にセガサターンで『ガンバード』『ストライカーズ1945』に続いて起動させれば、本作のみ画面情報を消さずにプレイ可能で、小さな幸せを覚えました。
 完成形は良くも悪くも焼き直しな反面、スキップと音声オフの追加やランキングの保存条件改善でプレイ環境を一段と磨いており、偉大なるマンネリとして受け取れます。自機に『ガンバード』のマリオン様が仲間入りし、同作で好評だった多彩なおまけコンテンツを引き続き収録と、付加価値も申し分ありません。2周目のコンテニューが不可能なのは『ストライカーズ1945』から変わらないものの、低難易度だと1周目終了で2周目終了扱いになる配慮は復活したので、目を瞑りましょう。
 
 シューティングの資質を『ストライカーズ1945』と比べれば、自機の火力不足に起因する問題で惨敗。著しい数で攻め寄せる割にメインショットの有効範囲が狭く、全体的な耐久力が高い割に溜め撃ちとオプション攻撃が貧弱で、敵との力関係が押されがちです。撃ち込みの代わりに弾避けが楽しめるのかと言えば否で、ノーミスによるランク上昇が著しくて難易度ノーマルでも5面には発狂的な難しさに達し、雑魚は出現から瞬時に多方向弾を放つわ、大ボスの位置が中央寄りで間合いを取りにくいわ、画面上下に進入禁止区域があるわで、誘導を少しでも失敗した時点で絶体絶命のシビアなバランスにはお手上げ。性能が優遇されたアインとマリオンは別としても、他の5人では遊ぶ面白さよりも耐える苦しさを強く感じました。
 エンディングの仕上がりを『ガンバード』と比べれば、誉められるのは1人用時の選択方法が「エンディング内の二択」から「任意のステージ分岐」に変更されたことくらい。スタートからラストまで全15分の短さに、シリアスな物語と奇抜なキャラクターを描こうとした反動から、消化不良なのです。スキップに対応させる必要は無いのに、音声オフには対応しておらず、システム回りとの整合性も取れていません。また、マリオンのエンディングが1つだけなのと、アインとマリオンの2人同時プレイが不可能なのは絶対に変。裏パッケージに記載の「34通りのマルチエンディング」とは、6×2+1=13の1人用と7×6÷2−1=20の2人用に、タイムオーバーを含めてでしょうか。
 
 ゲーム性なら『ストライカーズ1945』が、キャラクター性なら『ガンバード』が優位で、同じ移植なら『戦国エース』の方が望まれ、佳作以上の出来なのに中途半端な商品になってしまいました。
 
 
 
■実況おしゃべりパロディウス 〜forever with me〜
・ジャンル:横スクロールシューティング ・メーカー:コナミ
・発売日:1996年12月13日
・クリア状況:全エンディング(1人用・レベル4or8)/全妖精
 
  『ときめきメモリアル』『XEXEX』『リーサルエンフォーサーズ』等の徹底したセルフパロディに、大御所声優の八奈見乗児と小原乃梨子による実況を乗せた、コミカル系シューティングシリーズの異色作。スーパーファミコンからの強化移植になります。
 
 カプセルのルーレット及びゲージのOH!と、パワーアップによる過度のランク上昇と、撃ち込みが無効で必ず長期戦化するボスが『パロディウス』系において受け入れ難かったのですが、最後以外は変更可だわ無縁だわでありがたや。小原乃梨子の実況は2人同時プレイ専用かと思いきや、2P側1人用でも対応してくれることも併せて、良い意味での裏切りが続きました。自社財産とアイデアを惜しまず注ぎ込んだ1時間近い尺の本編は途中セーブに対応し、スコアないしタイムを競う2つの別モードはおまけと称する割に練られており、客観的な評点は平均を優に超えます。エンディングの違いが表面上にとどまるのは、18種類に上る自機の数に免じて許せましょう。
 
 しかし、決定をBボタンに割り振った単純ミスを代表として、セガサターンだけでもシリーズ三作目なのに基本が疎か。グラフィックが旧世代機仕様のままなのはともかく、敵・障害物・背景を描き分けないドット絵には閉口しました。これは本当に見分けが困難で、一流のシューターでも「破壊可能なペンギン」「無敵のペンギン」「背景扱いのペンギン」の違いに悩まされるでしょう。140匹の収集を目指す隠しキャラの妖精にしても、その少なからずを地形に埋め込んだり、70匹+70匹の2段階で出現する後者の9匹だけを別モードに割り振ったりで、まるで人の神経を逆撫でしたがっているかのよう。全身バリアを持たずベルの色合わせも苦しい自機の価値を落とし、本編を隈無く探した熱心なプレイヤーを欺くなんて、担当者は反省して下さい。
 メモリーバックアップに相当な力が入っており、他に類を見ない程の詳細な項目が保存されますが、実態は誉められません。容易なエクステンド及び妖精の得点効率が抜群に良い為に無限増殖ポイントが各所に存在し、途中セーブと記録採用の制限を一切設けなかった為、不正が罷り通ってしまうのです。しかも、ロード時にセーブ時の装備を据え置く誤った配慮から、死亡を素直に受け入れて再スタートするメリットはスコアの継続だけ。これらには正直者が莫迦を見ないように、残機消費・装備初期化・記録不採用のペナルティが必要でした。
 
 題名に堂々と冠した実況の貧弱さや、説明書で一行しか触れていないエクストラモードの意義や、オプションの設定と裏技のコマンドが過ぎたるは猶及ばざるが如しなのは気になりますが、下地はきちんと『パロディウス』しているのは間違い無く、当シリーズへの免疫さえあれば長く付き合えるでしょう。
 
 
 
 
▲前のページ 次のページ▼
 
■ソフト一覧 ⇒トップページ