■セガサターンソフトレビュー(RPG)
 
●アイコン
琴線に触れたお気に入り作品。
飽きずに長期間プレイしたもの。単に長いだけは除外。
音楽・音声・効果音が優秀だったり雰囲気に合ってたり。
キャラクターの造形や描き方が魅力的。
グラフィック・ムービー・演出・特殊効果が美しい。
期待を裏切られた作品。
 
 ■ソフト一覧
 
 
■リグロードサーガ
・ジャンル:シミュレーションRPG ・メーカー:セガ/マイクロキャビン
・発売日:1995年7月21日
・クリア状況:全エンディング/全技/試練の迷宮クリア
 
  ポリゴンでグラフィカルに表現した地形の高低差と、戦闘シーンできびきびとアニメーションする3Dレンダリングのキャラクターが次世代的。アクションRPGの他2作と共に「はまるロープレ」「ロープレ王国」のキャッチコピーで、セガサターン初の夏季商戦にデビューしました。
 
 ゲームシステムが旧機種の『シャイニング・フォース』シリーズに等しく、従来からのセガユーザーは二番煎じに思え、オーソドックスなRPGを望む新規ユーザーにも支持を得られにくかったこと。セガサターンの発売前に画面写真が公開され、大作然とした宣伝で煽ったのに、隅々まで遊び尽くしても寿命が25時間しかないこと。重たい操作感と印象の弱いキャラクターへの非難も加わり、当時から伸び悩み気味の評価に私も同調して、初回は急いて最後まで終わらせました。でも、数年後に安らかな気持ちで再プレイすれば幾つかの誤解を発見し、今では好きな部分の方が多いくらいです。
 処理がもたついたり、使えないコマンドを選べたり、カーソルの自動移動が不完全だったり、確かに生硬な操作感は拭えませんが、サークル状のウィンドウに3×3の技を登録出来る技メニューを筆頭に、自分好みに整え易い環境と入力への完璧な追随性を見過ごしてはいけないでしょう。約130種類の技に固有の演出を用意したアニメーションにおいては、絵と音が豪華な割に読み込みは一瞬だわ、ボタンでのカット及び見ない設定も可能だわで、カートリッジの『シャイニング・フォース』をテンポの良さで上回る番狂わせが。あと、どれもカメラ位置が低い不備はあれど複数の視点を有し、中盤にはお金の使い道が無くなるもののお店の応対は親切で、アイテムのソートをしない代わりに整理が自在と、ユーザーアビリティを包括的に見れば決して蔑ろではないんですね。
 
 没個性と捉えられがちなキャラクターだって、西洋の王子・小竜に変身する人間・獅子の顔をした獣人・着物姿の女幻術師・いかつい破戒僧と、和洋折衷の異色な世界を活用した独創的な出演陣ではありませんか。お人形さん風に柔らかくデフォルメされていながら、画面転換時の端麗なアイキャッチに映る表情は堪らない程にシリアスで、対照的なチャームポイントを両立したデザインも優秀。そして、皆が折々発する台詞から内面に触れていくと、奇をてらないで奥ゆかしく描こうと努めた故の地味さだと理解しました。女系社会で育てられたのが見て取れるアーサー、彼を補完するかのように清楚な形して向こう意気の強いエリーゼ、とびきり無邪気で愛らしいアケビその他、緩やかに感情移入を誘う丁寧な性格描写に気付ければ、作品への好感度上昇に必ずや貢献するでしょう。
 ただ、セーブ回りを中心に仕様の齟齬が重なり、それらの読み比べに常識外の労力が必要なのは恨めしく、ディスク内で死蔵されたデータが泣いています。この秀逸な文才は、物語の導き手である妖精の一人称で揃った相談・人物紹介・アイテムのテキストでも発揮されており、こちらの読破なら難しくないのが不幸中の幸い。「私もあえて助言はしません」「今ここを回る必要性があるのでしょうか?」「彼女のことは私にはわかりかねます」「竜殺しっていうの?でもただのお酒でしょ?」等々、補佐役なのに突き放してくる冷たい態度が上品な口調と相俟って、私は妙に可笑しかったです。
 
 開発者の擁護に続いて反省を促せば、シナリオへの批判は絶対に免れません。早い段階で全土を歩ける狭小なマップで、敵に捕らわれては始末されずに脱出成功の循環を基本路線に、序盤で提示された仲間集めを満たすと既に終盤なんて、あまりに空虚。物語を壮大に広げ過ぎないセンスは買ってあげたいのに、有効に使われなかった伏線の数々が妨げます。おまけに、最終決戦への一方通行に相当前からこっそりと入る為、意に反して戻れなくなったプレイヤーも多そう。また、道中で付きっ切り世話を焼いてくれる前述の妖精をエンディングに登場させなかったのは、本作最大の過ちでしょう。
 戦闘シーンでは、開幕の数戦は7人が強制出陣するのに、なぜか以後を6人までにしたのが酷。なにせ、編成は私情を挟まなければ強制参加2人+アッシュ+エヴァン+ウィスコが絶対的で、残り1枠を7人で争わせるのですから。攻撃魔法の性能が非常に悪かったり、用途が重複するスキルを1人に割り当てたり、属性や状態変化が複雑過ぎだったり、多種多様な技には調整不足が窺えます。均等配分の経験値によるレベルアップは容易に最大まで達するのに、個人の使用回数によるスキルの成長を鈍足にした為、無抵抗の敵や障害物を相手に退屈な時間を過ごさねば物語の進行に技の習得が全然追い付きませんし、折角の売りが仇と紙一重になってしまいました。
 
 シミュレーションRPGを楽しみたい場合には向きませんが、贔屓の登場人物を見守る観点から落ち着いてプレイすれば、小ぢんまりとした作風を味わえるでしょう。
 
 
 
魔法騎士マジックナイトレイアース
・ジャンル:アクションRPG ・メーカー:セガ
・発売日:1995年8月25日
・クリア状況:エンディング/全アミュレット
 
  東京から異世界に召喚された3人の少女が囚われの姫を救出すべく敵と戦う、CLAMPによる同名少女コミック及びTVアニメが元の版権もので、「ロープレ王国」の一作。セガの看板RPG『ファンタシースター』シリーズのスタッフが関わったことに惹かれ、原作への興味無しで購入しました。
 
 常に3人で行動する主人公たちより、プレイヤーキャラを切り替えながら攻略してゆくゲームデザインを、適切に創出しています。3人の性能をきちんと差別化しつつ、頭脳と指先を程々に刺激する難易度に、百点満点の操作性と面倒を排した移動システムによる軽快なテンポが絡み合い、手軽に達成感が得られました。それでいて物語は全編を丁寧に描き切っており、コミックとアニメを未体験でも楽しみは削がれません。女性を強く意識したと言う開発方針の賜物か、非常に人当たりが良いですね。
 
 既存の当ジャンルで弱点だったプレイ時間の短さは、おまけ的なテキストを大量に用意して補いました。3人が個別に綴ってゆく「絵日記」は、表面では描かれない心境や素朴で愛らしいイラストが収録され、ページの増加が待ち遠しいくらいだし、ダンジョンによっては一部屋毎に更新される「助言」は時に漫才の様相を呈し、別に困っていなくてもついつい助けを求めてしまいます。更に、大半の物体に対応×三者三様の反応×フラグで変化ありの「調べる」が究極で、こんな物にまでと驚いたり、皆の性格を対比出来て微笑んだり、住民の生活様式を感じられたりと、これを超えた同コマンドは未だ存在しないかも。この凄まじい文章量で、キャラクターのぶれや冗長な印象を紛れさせないのが、また素晴らしいです。
 1995年の発売なのに、AV面はセガサターンで屈指。内蔵音源とは思えない高音質で奏でられる楽曲群を擁したオーディオは、イベントシーンならば無条件でフルボイスを大前提に、通常画面でも敵味方問わずにキャラクターが数多の掛け声を放ってくれて、聴覚に淋しさを覚えさせません。揺らめく紅・透き通った蒼・麗しき碧を煌びやかに発色したビジュアルは、風景写真を凌駕する美しさをドットに浮き上がらせ、特に街中は単なるマップチップの敷き詰めから脱却した造形を成し、風にそよぐ木々や眼下を流れる白雲等の目新しい演出付で、異世界の観光気分すら味わえます。他に、起動の度に違ったCGが出迎えてくれるとか、会話シーンにおけるキャラクターのバストアップが常識外れな程に凝っていて百面相状態だとか、木目細かな仕事振りに感激でした。
 
 自分にとって嬉しかったのが、コンプリートへの配慮。嫌らしい分岐や、取り返しの無理なやり込みや、勝手に開始するイベントが無いに等しく、何一つ見逃さないようにローラー作戦でプレイしたい場合の精神的及び時間的負担が小さいのです。前述の膨大なテキストも、各地に隠されたアイテムを集めればご褒美を貰える要素を組み入れ、テキスト読みとアイテム探しの一体化で読破への義務感を中和させていますね。
 全体の雰囲気がコミカルなのに、物語は徹底してシリアスな反動から、心が妙に疲れたのは確か。絵日記のフラグ管理が少し先走りで、読むタイミングが悪いと未来日記になってしまうのと、パッケージに付属のファンブックにもネタバレの危険が。どこでもセーブの加護で実害は小さいものの、リードエラーによるフリーズに終始の留意を。そして、音声のスキップ及びオフが不可能なことに限っては、どんなに本作を愛していても庇えません。
 
 本作はユーザーレビューで絶賛を受けた反面、販売本数を「ロープレ王国」で比較すれば『リグロードサーガ』15万本と『シャイニング・ウィズダム』12万本に対し、7万本に終わりました。これが続編の出なかった一因だとしたら、口惜しいです。
 
 
 
■リンクル・リバー・ストーリー
・ジャンル:アクションRPG ・メーカー:セガ/ネクステック
・発売日:1996年3月15日
・クリア状況:エンディング/全武器
 ⇒攻略ページ
 
  自然に触れる優しいアクションRPGと銘打ち、人間の顔と体にフサフサの耳や尻尾が生えた獣人をメインキャストに据える、メガドライブ『新創世記ラグナセンティ』の姉妹作。ポリゴンや半透明処理は味付け程度の、スプライトとトップビューを用いた類型的な作りです。
 
 テーマを反映し損なったゲームデザインが、真っ先に悔やまれます。お店が存在しない世界で武器を入手するには、各地に咲く花から種を採取して四季に分かれた土壌で生育しなければならない、その名も「武器栽培システム」が最たる例。これは本当に名前倒れで、種と季節の相性を合わせなければならない・肥料をやらないと枯れてしまう・ステージ内で日光に当てたり水をやれたりする・セガサターンの内蔵時計に連動等、想像を膨らましていた自分が莫迦みたい。新しい試みと思わせて、既存の単語を置き換えただけなんですね。
 オーソドックスなアクションRPGとして見ても、セガ発売・他社制作の出自は名作揃いのジャンルな反動で、余計に落胆させられます。テキストが必要量に足りなくて台詞が物語と乖離し、敵がヒットバックしないので生傷が絶えず、ボスキャラの造形は凝っているのに力押しで勝ててしまい、パラメーターの設定値が出鱈目だから攻撃方法を多彩に用意しながら有名無実で、フラグの管理が雑なばかりかリセット必須のバグまで残存と、1日で終わる程に短い癖してペケの連続です。様々な特殊効果を生み出すオプションを携帯させながら、それを活用した『ラグナセンティ』のようなパズル性が皆無な為、展開も単調。音楽に限っては発売当時から密かに評判が良いものの、代表的な2曲が有名な洋楽に酷似していると気付いてしまい、素直に誉められません。
 
 そんなこんなで文句が尽きないにも拘らず、私が何度も通して遊び切った理由は、動植物が言語を持って共存する優しい雰囲気に包まれた世界で、ヒロインを動かすだけで幸せ気分だから。ジャンプ中に尻尾をバタバタさせたり、方向キーをくるっと回せば尻尾がバリアになったり、おでこ全開で走ったかと思えば豪快にこけちゃって痛がったり、トウモロコシ畑で獣耳だけを出してひょこひょこと揺らしたり、キャラクターパターンが豊富で可愛いったらありゃしません。彼女は外見の他、常に連れ添う旅の相棒とのやり取りより伝わってくる、姉御肌で心身共に強い内面への好感も確実。あと、師匠との追いかけっこや花のカップルへ花粉を届けてあげる等の物珍しいイベントと、永遠の命が主題のシナリオに込められた押し付けがましくないメッセージ性もお勧めポイントです。
 
 ムービーとナレーションはオープニングだけ、一枚絵はプロローグだけ、音声は「アウチ!」だけ、エンディングはスタッフロールだけ、CD-DAを含めてもディスク使用量は14分だけ。マルチシナリオ無し、サブイベント無し、ミニゲーム無し、やり込み無し、おまけ無し。前世代機のカートリッジでも大半を再現可能であろう充実度ですが、強くて可愛いケモノ少女の言動を能動的に楽しめるのは捨て難い魅力でしょう。
 
 
 
■リグロードサーガ2
・ジャンル:シミュレーションRPG ・メーカー:セガ/マイクロキャビン
・発売日:1996年11月8日
・クリア状況:全エンディング/全技/試練の迷宮&試練の迷宮Gクリア
 ⇒攻略ページ
 
  前作の名脇役エヴァンの子孫を主人公に、あれから100年以上経った世界の戦乱を描く、事実上のシリーズ最終作。ゲームソフトとしての構造に差異は無いものの、AV面が著しく強化されました。
 
 シナリオのボリュームとマップのスケールを数倍にアップし、戦闘シーンでは三次元的に戦える仕組みの導入で戦略性を高め、大作志向が見て取れます。その狙いに恥じないのが技のアニメーションで、滑らかになった動作に出し惜しみしない映像効果と声優の掛け声が加わり、迫力が劇的に向上しました。仲間の総数と戦闘シーンの参加枠を調整して編成の悩みを解決させ、視点の改善と画面情報の充実が計られる等、順当な進化も多岐に。未行動のキャラクターにカーソルがオートで合っていくのは特にありがたく、今度はボタンの連打だけでスキルを鍛えられますし、進行に習得が追い付かない欠点も改まり、全長が短い上に密度の薄かった前作とは正反対です。
 
 ただし、操作・視点・オプションから有用な機能を大量削除した等、正当な理由無く前作の長所が根こそぎ潰されています。ウィンドウの1つを階層状のリストに交換し、使用の度に技を自動登録していく仕様に変わった技メニューは、任意登録した技が勝手に消えるわコントロールパッドの入力回数増加を招くわで、改悪の象徴。移動コマンドの実行に一手間増えただけでもうんざりなのに、だだっ広いだけの戦場を次々に渡り歩かねばならない現実は、コンパクトに戦いを進められたご先祖様を羨ましくさせるでしょう。
 お約束を守ろうとしない開発方針より生じた、新たな短所も。セーブ回りの制限を依怙地に踏襲しつつ、キャラクターや技の獲得機会からマルチエンディングの分岐判定まで、取り返し不可能なフラグが随所に用意され、やり込み型のプレイヤーは常に息苦しい思いを強いられます。また、レベルアップでパラメーターが低下したり、進入の可否と地面の傾斜を知らせる案内が実際の挙動と食い違ったり、フィールドで着地出来る何かありげな隔離空間の大半が意味を持たなかったり、細かいバグと軽率なミスが数え切れません。前作ではきちんと省略したシーンを莫迦正直に付け足し、幕間の待ち時間が異様に長くなったエピローグを締めに、徹底して自らを貶める実情を考えれば『3』へのバトンタッチが成されなくて当然ですね。
 
 そして、最も許せないのがキャラクターの描き方。密やかに煌く丁寧な性格描写はどこへやら、口調の違いによる軽薄な人格形成に代替されてしまったのです。自己主張の激しい彼らの饒舌な会話には、語尾に「ござる」「でし」「のなの、なの」「だ〜ゼー」のような気色悪い文字列が乱れ飛び、イベントの度にプレイヤーを置き去りにして憚りません。極め付けがスタッフロールの直前に待ち受けるラブシーンで、正視出来ない程のお寒い展開が私の頭をくらくらさせました。かの妖精の一人称もアイテムの解説でしか読めず、テキストの甚だしい劣化は作品への好感度下降を必ずや招くでしょう。
 頭身を上げてお人形さんではなくなったデザインにも、腫れぼったい垂れ目と鋭く尖った顎の使用率が変に高く、準主役から端役まで不細工揃いと言う悲劇が。アイキャッチの対比で、デフォルメ調の前作にリアル調の今作が格好良さで惨敗しているのは、もはや喜劇です。キャラクターの魅力が大切なジャンルで内外面に愛すべき要素を授けられないなんて、手掛けた人物の資質が疑われるのでは。
 
 何はともあれ、主人公がTVゲームのメインキャラクターとして貴重な「ボクっ娘」なのと、前作で評した「最大の過ち」がフォローされたのは、私にとって救いでした。
 
 
 
■ファルコムクラシックス
・ジャンル:アクションRPG ・メーカー:日本ビクター/日本ファルコム
・発売日:1997年11月6日
・クリア状況:全エンディング(オリジナル&サターンモード)
 
  日本ファルコムの古典的なアクションRPG三作を、原作を尊重しつつリメイクした「オリジナルモード」と、インターフェースや演出を更に強化した「サターンモード」で収録。私の事前のプレイ経験はセガ・マークIII『イース』のみです。
 
 1984年発売の『ドラゴンスレイヤー』はトップビューで、モンスターが徘徊するダンジョンで自宅を基点に、パラメーターの強化に必要なアイテムを集めてゆき、ボスを倒せればステージクリア。後半には少々のパズル性を備えるものの、装備品や自動生成マップの無いローグライクゲームと言った、シンプルな雰囲気です。しかし、常に付き纏うハマリへの救済措置が無いことと、1ステージ毎に数百個のアイテム収集を求めながら「スロットは1つ+自宅に持ち帰ったら有効」の面倒さに、げんなりでした。前者は取り分け、プレイヤーの攻撃力を一瞬で最低値に戻すモンスターが本当に凶悪で、あな恐ろしや。
 ただ、やがて斜め移動・自宅の持ち運び・壁の破壊が可能になり、今までの辛苦が覆ってゆく段階に入れば、急にカタルシスが。丁寧に遊んでも1面当たり約2時間の全5面で、オムニバスソフトの収録作として適切なボリュームもプラスに働きました。最終面に限っては正攻法だとクリア不能なことを省き、似通ったゲーム性の別作品が浮かばないことを加味して、個人的評価は三作中最高ですね。
 
 1985年発売の『ザナドゥ』はサイドビュー&トップビューで、十の階層が連なる果てしなき地下迷宮を探索しますが…街人と話せない→モンスターと戦闘にならない→仕方無しに大穴へ落下→先は無限ループ→街に戻れない→知らぬ間に地下迷宮へ→初戦で勝ち得た宝箱が開かない→諦めて戦闘画面から退出→脱出不能の地形にいる──以上が初プレイの結果で、早々に独力の攻略を断念。そしたら、ありとあらゆる要素が有限かつジレンマが生じる作りな為、レベル上げちゃ駄目・アイテム使っちゃ駄目・買い物しちゃ駄目・モンスター倒しちゃ駄目・進入しちゃ駄目と、非常に高い自由度の中でやってはいけないことだらけだとか。行動の正否が判明するのは十数時間後だと思われ、最適解を追求しなくてもマイペースで進められるのがRPGだと解釈していた私は、一手毎の精神的重圧と試行錯誤の困難さに戸惑いしか返せません。
 しかし、中盤を過ぎて全貌が掴めてくれば、お金・アイテム・モンスターの供給は潤沢だし、数多のアイテムは絶大な効力だし、モンスターの大半は置物だしで、意外なバランスの温さに気付けます。また、セガサターン専門誌のタイムアタック大会においては、両モード共にたったの10分前後でエンディングに到達しており、そんな究極の解法を研究する上級者しか真髄に触れられない孤高の作品だと、後に理解しました。尚、サターンモードは大胆な調整で取っ付きにくさを正しており、原作のファンには不評かもしれませんが、私のように開発者へ感謝の念を抱いた人も多いでしょう。
 
 1987年発売の『イース』はトップビューで、簡素なゲームシステムによりRPGとしての奥深さでは『ドラゴンスレイヤー』『ザナドゥ』に全然及ばない代わりに、舞台転換を伴う物語性が特段の進化。全長の短さは、普通なら10時間使って楽しませる要素を3時間に濃縮した裏返しであり、他二作を引き立て役にして光り輝く優しき内面を見せ付けられて、これはもう『ファルコムクラシックス』の清涼剤です。セガ・マークIII版に見劣る店内の人物絵、CD-DAを持て余した音楽、不具合のあるオリジナルモードの買い物は残念で、サターンモードの絶妙な台詞の追加には顔が綻びました。
 
 別紙を含めても不親切な説明書と、内容の薄い特典CDに少し興を削がれたとは言え、一商品としては豪勢で遊び応え十分です。
 
 
 
■プリンセスクラウン
・ジャンル:アクションRPG ・メーカー:アトラス/セガ
・発売日:1997年12月11日
・クリア状況:スタッフロール/全サブイベント/隠しステージクリア
 
  二社の共同プロジェクトによる作品。各パーツの頂点を変形させるモーフィングシステムでキャラクターを、元はポリゴンの2Dデータでバックグラウンドを描いています。メルヘンチックな人物とハイ・ファンタジーの世界を擁したグラフィックが人気で、特に主人公のグラドリエルは近年にフィギュアが発売されたとか。
 
 立派な武具に身を包んで勇ましい13歳の女王と、その背中に寄り添って宙を舞うフェアリー──相対的にサイズが小さいはずの彼女らが、巷の対戦格闘アクションよりも大きく表示された画面を一瞥すれば、本作の稀有さは歴然でしょう。背景を含めて静止画として切り取っても職人芸クラスなのに、超膨大なアニメパターンを両立させる奇跡が実現し、生命の息吹を発散するかのごとく生き生きと動きまくるのは、一般市民や雑魚敵でさえ例外ではありません。他作では絶対に見られない仕草の数々に胸を打たれつつ、中でも悲しみや照れみたく密やかな気持ちが確かに伝わってくる表情が、ドット絵芸術の極致だと思いました。あと、全編に渡って高いお色気度に意表を突かれたのは、私だけではありますまい。
 ただし、中盤へ達するより前に現実を知れるくらいに、使い回しが非常に目立つと言う副作用が。新しい土地に足を踏み入れても、同じ人物・同じモンスター・同じ背景・同じ音楽に出迎えられ続け、最初の感動は薄れてゆくばかりです。弁護の余地があるにせよ、重要なイベントである25年前の場面まで流用の素材で演じられては、庇うに庇えません。
 
 TVゲームの主人公としては希少な、とても奥ゆかしい性格のグラドリエルと一心同体になれることが、本作の真の価値。生まれ持った高貴な地位に心を捻じ曲げられず、どんな相手にも丁寧語で喋り、どんな時にも嫋やかな振る舞いで、プレイヤーの精神をも安寧に導きます。戦闘シーンでは転じて、大剣を片手に寸胴鍋のスープをごくごくと飲み干し、空の瓶や魚の骨をモンスターに投げ付ける豪胆さを覗かせ、短時間で彼女の虜になれました。そんな若き女王のお忍びの一人旅には、変装や偽名を使わずして正体が気付かれなかったり、アイテムの料理が永遠に出来立てホカホカのままだったり、満腹になっても飲食が繰り返し出来たりと、開発者が説明を放棄した矛盾が残るので、女王のコスプレが流行中とか、魔法の保存容器を使用とか、成長期故に食欲旺盛だとか、適当な脳内補完をしてあげたいものです。
 
 メインシナリオは振り返ってみれば起伏が激しい反面、移動シーンにゲーム性を組み込んでいない為、長々と伸びただけのマップをひたすらスクロールさせなければならず、不親切なテレポート系のサポート・回避不可能なエンカウント・頻繁な読み込みの駄目押しで、所要の35時間には間延び感が常に。全長の水増しか、説得力に乏しい理由で難関エリアの再攻略を求めるわ、緊迫した状況下にサブイベントを詰め込むわと、エンディングへのフローチャートを一方通行で辿ってゆくのならともかく、初回で独力のコンプリートを成したい自分には、グラドリエルに対して可愛さ余って憎さ百倍でした。あと、タイムトラベルの解決策は禁じ手だし、その絶大な効力を自在に使えちゃったら、当物語が開幕すらしないのでは。
 むしろ、脇役3人分のサブシナリオの方が、各数時間で終わる代わりに高密度で好感触。取り分け、イベントを排して規定のアイテム収集に専念させてくれる、魔女っ娘のプロセルピナがお気に入りです。メインシナリオでは物語を追いたいのに遅々として進まないスクロールに苛立った分、何にも急かされないでフラグを立てていける点に、解放感を得られましたから。
 
 対戦格闘アクションに非リアルタイムのコマンド選択を組み込んだ戦闘シーンは、自キャラの全動作が鈍くて連続技が成立しないのに一撃の威力が弱過ぎ、プレイタイムの半分を占めるのが泣き所。必殺技はハイリスク&ローリターンで、新技や武器を得る仕組みは無く、レベルアップによる上昇値が雀の涙と、この悩みとは最後までのお付き合いです。そして、敵は連続技が成立する上に無敵モーションだらけで不公平感が強い中、ジャンプ・ダッシュ・サイドステップは攻撃に連携出来ず、三すくみが存在しないので先読みは無意味だし、操作の上達が戦術に影響しないとくれば、行き着く答は潤沢なアイテムを乱用した力押しに。腕白なケンタウロス・清純なセイレーン・妖艶なグリフォン等、モンスターの独創的なデザインも映える素晴らしき映像に、こんなシステムでは釣り合いません。
 
 アイテム管理の仕様が悪く、整理が大変。物販品が安価に買え、戦利品がばら撒かれるのに、宝箱の限定品は無い。入手への苦労に反比例して役立たないばかりか、余計なのもある特殊能力。戦闘でのパワーアップが解禁されたら既に最終盤で、実用的ですらない。本作は豪華な装丁が邪魔して読みにくい絵本のようで、何とか読み終えた後は二度とページを開かず、棚に飾っておきたいですね。
 
 
 
AZELアゼル ─パンツァードラグーンRPG─
・ジャンル:3DRPG ・メーカー:セガ
・発売日:1998年1月29日
・クリア状況:エンディングCG2枚/踏破率99%
       敵撃破率100%&全EXCELLENT/破壊率100%
 
  ジャンルを鞍替えした『パンツァードラグーン』シリーズの第三作。シューティングのゲーム性を排除しつつ、月並みなRPGでもない、独創的な作品になっています。
 
 初代よりビジュアル指向が強いだけに、映像の求心力は特筆ものです。デフォルメを取り払ったリアルタイムポリゴンは、自由に飛び回れる開放的な三次元空間と、雑魚敵すら強烈な個性を放つ造形が圧巻で、現実感と幻想感を並存した異世界の中に、余所からの借り物ではない架空の生物と兵器が躍動しており、ジャンル変更の影響で止む無く前作より劣ってしまう画質を気にさせません。時計盤の中央に敵が、3時・6時・9時・12時のいずれかに自分がいて、有利な位置の取り合いが主となる戦闘では、高速で飛行しつつ位置関係を次々に変えて激しく戦う様を、何の誤魔化しもせずに見せ付けてくれます。ボス戦の迫力は恐ろしい程で、禍々しい巨大なドラゴンに、怪物が寄生した不気味な空中戦艦にと、プレイヤーの想像を絶する超デカキャラがわんさか登場するばかりか、多彩で派手な攻撃を乱発してくるわ、会話シーンを随時挿入してストーリーを止めないわで、毎戦がクライマックスと称しましょう。
 そんな興奮必至の戦闘も、奥深さは今一歩。集中攻撃用のショットと拡散攻撃用のレーザー、攻守に有益な魔法やアイテム、攻撃・防御・魔法・移動の4系統に調整可能な自機の特性と、豊富な選択肢で戦略性を高めましたが、効力が絶大なアイテム及びインフレ気味な成長によって、最善手が単純化しますから。素晴らしい映像に気分が高揚しても、数値のやり取りが伴ってくれないのです。あと、間の長い被弾中の手持ち無沙汰防止に、押し寄せる敵弾を自力で迎撃出来れば良かったかもしれません。
 
 もう一つの特徴である、画面上の距離を超越してカーソルによる対話や入退場が可能なロックオン・コミュニケーション・システムは、画面・カーソル・ロックオンの整合性が取れておらず、無反応と誤作動が頻発する厄介な代物。目前の人物と話すのに苦労したり、仕掛けの利用に一手間増えたり、距離で変化する反応の切り替えが適当だったりで、スムーズな進行を妨げがちです。長々と伸びた迷路の終点に到着し、手前に置かれた宝箱を開けようとしたら、遙か遠方にある一方通行の出口がロックオンされ、勝手に振り出しへ戻ったのは私だけではありますまい。
 これを除けばインターフェースは快適で、戦闘における最適なボタンの使い方や、メニュー画面で即開けるワールドマップには感心し、イベントのスキップと音声の早送り機能も便利。ただ、「もっと速く飛びたい」「速度を維持したい」「同時にロックオンしたい」と言う欲求を満たす為の操作を、ゲーム内と説明書で提示していないのは、エンディングの後に攻略本を読むまで気付けず、非常に心証が悪かったです。不可解な仕様で踏破率100%を阻むオートマッピング、無意味に大量配置してプレイヤーを惑わすロックオンの対象物、後から取り返せない機会が山盛りのやり込み要素、使い心地不合格のセーブ&ロード、テレビの輝度を上げないと映りにくい画面の暗さと、配慮不足もそこかしこに。
 
 総計80分のムービーと、当ジャンルでは奇特なフルボイスに容量を食われ、CD4枚組みの割に短編なのは一概に責められません。しかし、広大な範囲を延々と往来する作業性の高い時間、スキップと早送りに対応しない演出を繰り返す時間、ムービーを見るだけ・音声を聞くだけ・文字を読むだけの時間が、プレイ内容の大半を占めるのは如何なものでしょう。つまり、問題は全長の短さではなく密度の薄さで、自画自賛していたムービーも画質は同時期の水準以下だし、通常のポリゴンモデルに演じさせれば十分なシーンが目立ち、ムービーを主体とした大作RPGの体裁を成す為に上げ底を使った印象を受けました。
 
 家族同然の仲間を殺された主人公と、宿敵となるヒロインの変遷を軸に、前二作で明らかにされなかった世界の全貌を解き明かすメインシナリオは、主役たちの行動原理に共感を抱けませんでした。主人公は受動的に旅立っておきながら復讐心に駆られたごとく振る舞い、ヒロインは唯一無二のパートナーを主人公に殺められても全く言及せず、この敵対していたはずの2人が唐突に信頼関係を築いて、理解し難し。そして、物語の根幹を司る「ボタンを押してくれ」に至っては、代名詞を用いなかったせいで端から意外性を喪失したばかりか、まさかの「押しても押さなくても一緒」と言うオチが。策士が策に溺れてやいませんか。
 それに反して、脇役とサブシナリオの完成度は凄まじいです。なにせ、主人公と直接の交流をする人物に、モブキャラが1人もいません。数十人に名前・人格・肉体・声優を個別に与え、重たいのから可笑しいのまで様々なエピソードを分岐を伴いつつ内包しており、大変な労力を承知で全パターンを見聞きする価値がありました。また、脚本が人の死に対して冷淡と言うか、死すべき運命にいる者をお情けで助けるような甘さを良しとせず、絶望的な悲劇が起こっても粛々と時を流す姿勢には、RPGではお涙頂戴の大イベントに仕立てて当然との先入観が覆され、胸に衝撃が。絵と音で豪勢に着飾ったムービーで訴えるより、そっと置かれた小さな棺の方が、悲しみは引き立ちますね。
 
 個人的には稀有な作風への評価よりも、発売時期にそぐわない未熟さへの不満が大きい反面、斬新なアイディアを盛り込み、技術面の妥協が見られず、開発者の高い志が伝わったのは確か。あの手この手でプレイヤーの記憶を刺激し、前作のセーブデータと連動させた裏技も嬉しく、シリーズを愛する人へのファンサービスとしては成功でしょう。
 
 
 
■白き魔女 〜もうひとつの英雄伝説〜
・ジャンル:RPG ・メーカー:ハドソン
・発売日:1998年2月26日
・クリア状況:エンディング
 
  日本ファルコムのパソコンゲーム『英雄伝説III 白き魔女』の移植で、キャラクターデザインをアニメチックなものに一新し、発売前から厳しい反響が寄せられていました。
 
 ゲームソフトとして時代不相応に地味なのを恥とせず、本質を丁寧に作り上げたい意図が汲み取れる本作。原作未体験の私が魅せられたのは、ありとあらゆる動作を徹底的に表現したキャラクターパターンです。戦闘シーンやイベントはおろか、装備変更のコマンドですらちょこまかと振る舞い、録画して隅から隅までチェックしたくなるくらいで、ドット絵愛好者は必見でしょう。えっと、誉めてあげたい点は以上になります。
 
 人と話す・物を調べる・扉を抜ける際、不具合に近しい極めて精密な座標合わせを幾度と要求。壊れていない建物・貧しくない身なり・被っていないベール等々、台本に即した画像の用意がおざなり。特に家屋内で目立つ、余計な移動及び暗転を強いるだけのマップ。魔法を覚えさせる施設を様々に設置し、選択用のウィンドウも開く癖に、実際は決して覚えられない所がほとんど。説明書とゲーム内の解説が足りず、能力値と武具の効果を理解するには攻略本必須。テキストが過剰だわ、流れの速度が遅いわ、字面の似た固有名詞が大量だわで、読むのが大変。これらは技術や予算による制約ではない、少しの心配りで直せた問題でしょう。
 RPGの華である戦闘シーンはイベントでしか発生しないのに、無思考で勝てちゃいます。一戦毎にレベルやパーティーが固定ならば、オーソドックスなコマンド&ターン制に手順前後厳禁な戦略性を組み込み、一触即発のドキドキを楽しませないと。また、キャラクターが会話を交わして雰囲気を盛り上げる反面、序章から最終章まで内容が全然変化しないばかりか、条件を満たせば脊髄反射のごとく何百度でも表示する仕様が凶悪で、テンポの著しい阻害に繋がってしまいました。攻撃や魔法の演出もスキップ不能が恨めしい程に冗長で、戦闘シーンは拷問と同義語ですね。
 
 そして、自称「詩うロールプレイングゲーム」の本作には命綱と言うべき、シナリオに裏切られたのがとどめ。だって、主人公一行が周囲の忠告を他所に首を突っ込む→勝算や必然性は無い→当たり前で絶体絶命に→いわゆる「機械仕掛けの神」が解決──イベントが終始、こんなのばかりではありませんか。仲間になってくれる動機が希薄、焦燥感を煽った途端の寄り道、既出の情報を初耳扱いする類の矛盾も否めず、ご都合主義で片付けては生温いくらい。原作を忠実再現したにしろ、大幅にアレンジしたにしろ、物語と向き合うのが莫迦らしくなったのが事実で、このシナリオが大勢の感動を呼び起こしたなんて信じられません。
 第二章において、「根深い被害者意識に取り憑かれたスラムの住民たちが、ヒロインの叱責と吟遊詩人の演奏だけで誇りを取り戻し、厚い感謝を寄せてくる」「明白な詐欺に遭い、一番の宝物を含めて不当に身包み剥がされるが、何も抵抗しない」「危機に対して国軍が動員された中、命懸けの役を主人公に押し付けて楽しげなヒロインと、彼女の提案に乗る国王」「数多の兵士を完全に弾き返す怪物の特殊能力が、戦闘シーンに入ったら無かったことに」と、支離滅裂な展開の連鎖に嫌な予感はしていました。クライマックスとエンディングは、登場人物を使い捨てにしない責任ある描写かと思いきや、少年少女による生まれ故郷からの旅が題材にも拘らず、彼らの帰りを待ち侘びる両親の存在を失念されては、30時間を投じてディスク内の全テキストを読んだであろう私の労力は報われません。
 
 早い読み込み、どこでもなセーブ、見当たらないバグで、作品ではなく商品としてなら合格ではあります。
 
 
 
■SEGA AGES/ファンタシースターコレクション
・ジャンル:RPG ・メーカー:セガ
・発売日:1998年4月2日
・クリア状況:全エンディング
 
  オンラインゲームで現在に名を継ぐ、セガサターンより以前の自社ハードを支えた看板RPG『ファンタシースター』シリーズの主要4作が、僅かな変更を伴って忠実移植。CMムービーや設定資料も見られます。
 
 リメイクに走らず、不便な所は直し、動画と静止画のおまけ付きで、ユーザーの要望に即した内容が嬉しい限り。種々の改善点はプレイ環境を少なからず向上させ、ハードの違いが絵の滲みや音のノイズまで消してくれました。あと、旧機種を押入から引っ張り出す手間と、バッテリーバックアップの寿命から解放してくれる実用性も見逃せません。
 
 『ファンタシースター』は1987年のセガ・マークIII生まれ。滑らかなスクロールの3Dダンジョン・派手なアニメの戦闘シーン・麗しき音色のFM音源により、AV面で同時代のゲームソフトを引き離しました。設定と美術に女性的な感性が反映されており、科学と超自然が織り成す魅惑のSFファンタジーを舞台に、15歳の娘・仔猫風動物・筋肉質の男性・性別不詳な美形のパーティで冒険する様は、美しい独創性に溢れます。アイテムを獲得して行動範囲を広げてゆくタイプなのでシナリオは弱い反面、高い自由度の下でRPGの純粋な魅力を楽しめて、「ミャウビンノフタアケラレナイノ」「コンナトコロニオミセガアッテゴメンナサイ」「オソロシイユメダッタ」等の個々のイベントは強烈な印象を刻み、特にクライマックスからエンディングまでの長き行程は名シーンの連続ですね。
 バランスの調整がおざなりで、終盤は戦闘から逃げまくらないといけませんが、どこでもセーブ×5個と逃亡成功率100%の裏技で崩壊は免れています。移植に駄目を出せば、縦長になってしまったドット絵が容認出来ず、ビジュアルシーンの不細工さには悲しみが。あと、以前のメガドライブへの移植で聞けなかったFM音源が再現されて一安心と思いきや、今回はPSG音源が聞けなくてずっこけたのは、私だけではありますまい。
 
 『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』は1989年のメガドライブ生まれ。本格SFとなった舞台を始めに、前作の順当進化ではないことに賛否は隠せませんが、私は4作中で最も好きです。本作の代名詞は大迫力かつ大量のアニメに興奮必至な戦闘シーンで、その秀逸なデザインも相俟って武器の買い替えや初遭遇の雑魚敵ですら、イベント級の価値となりました。また、武器と魔法の適切な性能分けに裏打ちされた戦術性と、1プッシュで戦闘終了が望めるオート&テキストレスな進行と、プロフィールと同調したパラメーターでシナリオに頼らずして感情移入可能な8人のキャラクターが特筆もの。これらは後発の作品──特に『シャイニング』シリーズで蔑ろにされており、セガハードにグラフィックとシステムの両面で本作を超える戦闘シーンは存在しないでしょう。
 バランスは決して悪くないものの、戦闘シーンの所要時間の長さが如何ともし難くて、レベルや武具による成長をもっと強くすべきかも。シナリオの骨子は素晴らしいのに、脇を固めなきゃいけないイベントが数える程で、物語重視のプレイヤーには反感を買い易いでしょう。移植への不満は無く、本作の短所を一気に解消した、歩行速度の高速化には感激。また、極めて深刻だがプレイヤーに歓迎もされた重大なバグを、敢えて消さなかったのは英断ですね。
 
 『時の継承者 ファンタシースターIII』は1990年のメガドライブ生まれ。SF色が払拭された剣と魔法の中世を舞台に、マルチシナリオ&エンディングで3世代7人の物語が用意されています。しかし、開発チームが激変した事実を知らずして、制作発表時から何やら怪しい雲行きを感じ取り、発売後には専門誌の読者レビューで酷評がほとんどの惨劇をもたらしました。移動が面倒とか、魔法が役立たずとか、ボスが弱過ぎとか、シナリオが説明不足とか、セーブが不親切とかはさて置き。その原因を一つに絞れば、戦闘シーンのグラフィックの著しい劣化。まさに天地の落差があり、続編において前作からのパワーダウンは禁忌にも拘らず、よりにもよって最大の魅力を壊すなんて話になりません。
 ただ、厳しいバランス・見辛い二重スクロール・広大なダンジョン・長引く戦闘・少ないボス・心苦しいクローン制等、前作の短所を消そうとした意思は認められます。また、分岐の選択方法やシリーズとの関連が事前に公開されず、それらへの驚きはリアルタイムでプレイした者の特権です。マルチシナリオならではの成功した試みも随所にあり、例えば同一人物が物語上の必然で分岐によって性格も容姿も異なることには感心しました。あと、更に熟成された戦闘システムと、多彩なキャラクター及び端正に描かれた顔画像と、厚い音質でアイデアも満載なBGMは、シリーズ1の完成度でしょう。移植においては、歩行速度の高速化が前作同様に有益と思わせて、エンカウント率の修正を忘れてしまった模様。
 
 『ファンタシースター 千年紀の終りに』は1993年のメガドライブ生まれ。本作のみ大容量故に読み込みを発生しますが、私は原作を未体験なので気にならず、『I』『II』の主要スタッフが開発と言う情報と、当時の絶賛振りを踏まえて期待大でプレイしたら…キャラクターは歴代の焼き直しな上、古めかしい絵柄と軽薄な台詞が耐えられませんし、シナリオも続々と開示されてゆく裏設定の後付け的な安っぽさに興醒めでした。決定打は戦闘システムの退化で、銃の固定ダメージ・片手用武器の分散攻撃・1プッシュのオート進行のような、シリーズが培ってきた長所を喪失しています。インターフェースやグラフィックの進化はあれど、これでは4作中最低の評価を下さざるを得ません。
 
 個人的には買って良かったセガサターンソフトのベスト5に入ります。しかし、2008年に発売されたプレイステーション2版の内容及び、そのダウンロード版の価格を見るに、今やお役御免でしょうね。
 
 
 
■英雄志願 -Gal Act Heroism-
・ジャンル:RPG ・メーカー:マイクロキャビン
・発売日:1998年4月16日
・クリア状況:全エンディング(3人×14個+隠し4個)
 
  冒険者養成学校の卒業試験で半年間、約20種類の依頼をこなしてゆく女の子3人+フェアリー1匹の騒動を、フリーシナリオ・フリーレベルアップ・マルチエンディングで楽しめます。パソコンからの移植で、幾つかの依頼を追加したそうな。
 
 素直に近場の街で安い装備を買って簡単な依頼からでも、強気に遠方の街で高い装備を買って困難な依頼からでも、試験をそっちのけで気ままに過ごして構わない相当な自由度が魅力。イベントはRPGのお約束的な内容が多いものの、主人公たちと同じ立場のパーティ4組との邂逅が時折起きて、煽られた気分を味わえるのは独特でしょう。歩行は8方向な上に速く、読み込みは早い上に少なく、コマンドは好きな順に置き換えられ、日付は一気に進められ、音声はスキップ及びオフが可能と、最高級のプレイアビリティにも支えられて手軽に繰り返し遊べそうな第一印象ですね。
 主要登場人物の15人+5匹は全員が女の子で、頻繁に挿入されるぺちゃくちゃとしたお喋りが、声優ファンに喜ばれそう。ただ、精一杯に面白くしようと努めた反動なのかボケとツッコミがくどく、質より量を目指したのか説明的な台詞やオウム返しが非常に多く、何だか噛み合っていない受け答えも散見され、げんなり感が否めないのも確か。また、主役級以外の外見と性格付けは、野暮ったいわ在り来たりだわ灰汁が強いわと、キャラクターを重視する自分には減点でした。卒業試験で他のパーティと競争している設定の活用も不十分で、こっそりと発表される月3回のチーム&個人表彰はベストエンドの時ですら一つしか貰えず、まともに機能していないのでは。
 
 実は第一印象と裏腹に重大な過失を含んでおり、失敗作の烙印を押さなければいけません。まず、マルチエンディングにおいてベストエンド=英雄・バッドエンド=留年・隠しエンド以外の判定が、当人の「レベル」と「最も高いパラメーター」だけで行われ、フリーシナリオにほとんど触れずして大方のエンディングを見られるのが痛打。容姿→衛兵・敏捷→看護婦・幸運→学者のように、パラメーターとエンディングの滅茶苦茶な関連性と、卒業後の彼女たちは何になっても大成功を収めた旨が語られる為、十数時間を投じて英雄になれなかった場合と数十分で終わらせて留年は免れた場合で、明確な差が出ないのもペケです。あと、システムデータを作るのなら、アルバムモードは備えましょうよ。
 以上の実情により、真面目なプレイの動機付けはベストエンドに限られてしまいますが、ここに真の問題が。期間内の全依頼制覇は無茶なバランスの中、ベストエンドの隠された最低条件が「パソコン版の依頼を全てクリア」で、セガサターン版しか知らない者には不可能に近いこと。故に追加分の依頼は後回しにすべきだが、この内の一つは如何にも重要そうな展開かつ、完遂すれば二ヶ月も浪費させられ、折角のサービスが極悪な罠に化けたこと。酒場・温泉・エステ・高利貸し・ブロマイド屋・アルバイト・闘技場は、利用の効果が皆無同然でエンディングとも連動せず、プレイヤーに不利益しかもたらさないこと。攻略本は発売中止になり、専門誌に有益な情報が載らず、発売当時にベストエンドを迎えられた人は少なそうです。
 
 根っこは悪くない分、マルチエンディングを因とした整合性の改善が求められます。
 
 
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