人通りの消えた静かな夜、後に駐輪車として整備される小さな空き地に独りで立っていると、目の前のマンホールに目掛けて上空から青みを帯びて光り輝く雷が落ちる──そんな光景に遭遇したと言う幼き記憶は、今となっては本当に現実で起きたとの確信が持てません。落雷の地点があまりに間近だったので、実体験であれば心身共に何かしらの衝撃を受けると思われるのですが、都合の良いことに如月さん所蔵のVTRは目撃の瞬間に途切れています。夢で見たと考えるのが自然でしょうか。 自転車が通るのがやっとの狭い路地を歩いていると、真横から空気を切り裂く風の音が響くや否や、自分の膝の高さ辺りを翼を大きく広げたカラスらしき黒い鳥が高速に真っ直ぐ滑空していき、そのまま10メートル程離れた直角カーブに吸い込まれていった──なんて光景に遭遇したと言う先日の記憶すら、今となっては本当に現実で起きたとの確信が以下略。街に住む鳥たちは人間には不用意に近寄らないと知識にありますし、あんなに低空を美しく飛ぶ姿を見たのも初めてとなれば、それはそれは痺れるような格好良さで如月さんは少し感動を覚えたそうな。決して夢ではないものの、何かの見間違いだったりはしそうです。 どちらも不意のほんの一瞬に始まっては終わりを迎え、頭の中のノートには極めて乱れた筆跡で記入せざるを得なかった、書記泣かせの曖昧な記憶です。 |
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